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イベントレポート(STEAM教育)

「ものづくりを通して“得意”を育てる」――埼玉大学 STEM教育研究センター「ロボットと未来研究会」発表会レポート


 「埼玉大学 STEM教育研究センター」による「ロボットと未来研究会」の、第31期の発表会が9月9日と23日の2回にわたって開催された。ロボットと未来研究会は、2001年から行われている子どものものづくりを推進する試みで、半年ごとの期間を1期とする。2017年4月~9月までを期間とした31期には、4歳から高校生までの78人が参加した。

「ロボットと未来研究会」第31期の発表会の様子
「ロボットと未来研究会」第31期の発表会の様子

子どもたちが主導する「ロボットと未来研究会」

 「ロボットと未来研究会」の参加者は全員「研究員」として、自分の作りたいものや表現したいものを模索し、プログラミングやレゴブロックなどのツールを使って、半年の工程の中で作品を完成させていく。埼玉大学の教育学部や工学部などの学生が「リーダー研究員」として、子どもたちの研究のサポートを行う。リーダーも自分の卒論等の研究として取り組みながら、一方的に指導するのではなく、あくまで主導は研究員たる子どもたちの自主性にまかせ、行き詰まった時にアドバイスを行うなど、子どもたちの研究がスムーズにできる手助けをする役割を担っている。

レゴブロックから宇宙エレベーターまでの多彩なコース

 研究会には、子どもたちの興味を引く多数のコースが用意されている。31期ではレゴブロックやプラダン(プラスチックダンボール)を使い、ロボットやゲーム、映像制作を通してSTEM領域の基礎を学ぶ「入門コース」や、サッカーロボットや宇宙エレベーターなどの目的をもって取り組む「応用コース」のほか、ジャンルにこだわらずひとつのテーマを追求していく「研究コース」、幼児向けの「KIDSエクスプローラーコース」などがあり、各自が好きなコースを選ぶことができる。今年は厚切りジェイソン氏によるNHKの「Why!?プログラミング」の影響もあってか、「ゲームクリエイターコース」の人気が高かったという。

ゲームクリエイターコースでは、「Scratch」や「ゲームメーカー」などのプログラミングツールを使ってゲーム制作を行う。
ゲームクリエイターコースでは、「Scratch」や「ゲームメーカー」などの
プログラミングツールを使ってゲーム制作を行う。

 約半数の子どもが2期以上継続して通っており、同じコースを極めていく研究員がいる一方で、1期ごとにコースを変えて一通り体験する研究員もいるなど、参加のスタイルはさまざまだ。1期につき全15回の講座に参加でき、費用は入門コースの場合1回3000円、研究コースは月額12000円となっている(それぞれ別途教材費が必要)。

 10月から開講する32期ではコース内容を少し変更し、埼玉大学と自由が丘の研究室に加え、シェアハウスを利用した押上研究室もスタートする。

 31期の発表会では研究の総仕上げとして、研究員全員が作品のプレゼンテーションを行い、今回は全71作品が発表された。プレゼンテーション会場以外にも、作品ごとの自作ポスターを展示したブースが設けられた。ブースでは、研究員が個別に解説したり、来場者が研究員に質問を行ったりする交流の場となっていた。

 発表された作品はいずれも工夫を凝らした力作ぞろいであったが、すべてを紹介しきれないため、ここではその中から数点を紹介していく。

優秀な作品を研究し自分のロボットに応用

サッカーロボットで全国大会を目指す小学生
サッカーロボットで全国大会を目指す小学生

 「研究コース」は、研究会の活動の中心となるコースで、研究員がそれぞれの研究テーマを持って活動に取り組んでいる。このコースに参加し、サッカーロボットを制作した小学4年生の研究員は今回3期目で、前回のロボカップジュニアの大会予選では高校生チームに一勝したほどの腕前をもつ。

 31期での目標は、自作のサッカーロボットのさらなる強化。昨年まで使っていたブロック言語によるプログラミングでは複雑な制御が追いつかなくなり、31期からはC言語に切り替えた。

 「タイピングすることよりも、C言語は英語ベースなのが大変」と言いつつ、手慣れた手つきでノートPCを操る。強化にあたって、昨年優勝したチームのロボットの仕様を徹底的に研究し、気になったパーツを調べ上げ、有益なものは自分のロボットに取り込んでいった。

サッカーロボットの機動部分。オムニホイールで、どの方向へも動くようになっている。
サッカーロボットの機動部分。オムニホイールで、どの方向へも動くようになっている。

 「地区大会を制覇して、全国大会に行きたい」という夢を抱き、秋に開催される「ロボカップジュニア サッカーリーグ」に向けて、仕上げに余念がない。

 一方、「映像クリエイターコース」を受講していた小学5年生は、6期続けての受講。ガンダムが大好きで、これまでにガンプラ(ガンダムのプラモデル)を使ったロボット制作なども行ってきた。今回はガンプラを使い、コマ撮りによる映像(ストップアクションムービー)の制作に挑戦した。半年間のコースの中で、最初の2カ月で絵コンテ、次の2カ月で背景の小道具を製作し、残りの2カ月をかけてガンプラ同士が戦う場面を少しずつ位置を変えながら静止画を撮影していき、パラパラアニメのようにつなぎ合わせて動画を作成した。

背景の建物は発泡スチロール製。空中を飛ぶシーンには透明の糸を使った。
背景の建物は発泡スチロール製。空中を飛ぶシーンには透明の糸を使った。

 発表では、STEM教育研究センターの事務局長である小山航太氏から、「彼のように、ひとつのものにこだわって研究を続けていくと、作品のクオリティーが上がっていく」と評を受けていた。

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筋肉をひもとゴムで代用した人型ロボットも

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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