オンライン授業に向けて――教職員の心得
オンライン授業は対面の授業とは全く異なるものです。つまり「対面授業と同じことをする」となると、成り立たないことが多くなります。そう考えると、対面の授業とは異なる「心得」が必要になると考えています。ここでは、筆者が思う「オンライン授業の教職員心得」を紹介します。
ここでは同期型の(生徒と教員がリアルタイムでつながる)授業について説明をします。前述の通り、オンライン授業は対面授業とは異なります。また、いわゆる「オンデマンド型」と呼ばれる動画配信の授業とも大きく異なります。
最も大きな違いは「受け手の反応や状態を見ることができない」「物理的な共感を得ることができない」ことです。前者についてはビデオをオンにするなどで多少の対応ができますが、自宅で受講することを考えると強要できない部分もあり、いわゆる「内職」については一切管理できません。後者については特に理科や実技教科で生じますが、実物を見せたり、触ったりできないため、温度感や匂いなどは伝わりません。だからこそ、これまでとは異なるコンテンツを用意する必要があります。
実際にオンラインの講義を受けてみるとわかるのですが、リラックスして受けられるので気軽に参加できる一方、長い話が続くと飽きてしまいます。これは生徒も同じで、長時間の講義が続いてもなお解説を聞き、学習に取り組み続けることができる生徒は少数でしょう。
だからこそ解説はできるだけ短時間にし、双方向性を担保した取り組みが必要になります。ただし、注意すべきは、その際に「生徒からの発信」を見落とさないことです。生徒同士で議論が進んでいればいいのですが、問いかけに対して教員からの反応がなければ、生徒は次第に反応をしなくなり、目立つからと発信自体を避けるようになります。
そのため、チャットや音声での生徒の発信には注意を払い、その発信をきっかけに授業が進むデザインができるといいでしょう。この点に関しては、「生徒の反応(主にチャット)を見る用の端末」と「教員の資料を表示させる端末」の2端末を用意することがお勧めです。
また、見落としがちなのが「生徒がどのように受講しているか」という視点です。特に完全BYODであった場合、配信をスマートフォンで見る生徒も多くいます。その場合、教員が映している映像はかなり縮小されて表示されることになります。また、タブレットやスマートフォンの場合「『Zoom』の画面を見ながら別のアプリを起動する」ことは非常に困難です。つまり「見ながら作業をして」ということはほぼできません。そのため、ワークシートなどを用いた作業は、説明しなくてもわかる形にしたり、例を表示させたりするなどの配慮が必要です。
そして、オンライン授業における最大のポイントは「いかに生徒のモチベーションを保てるか」です。オンライン授業の成立は、何より生徒のモチベーションに依存します。これまでの対面授業では目の前にいることである程度の「統制」が可能でした。しかし、オンライン授業ではそれができません。
逆に言うと、オンライン授業でこれまでと同じように授業し、生徒が学びに向かわなくなるということは、従来の授業が生徒のモチベーションとは別の領域で生徒を学びに向かわせていたということです。だからこそ、生徒をワクワクさせる、自ら学びたくなる授業を展開する必要があります。
そのために意識するべきことは「課題」です。単に調べて出てくるものであれば、生徒はネットで検索して課題をただ「こなす」だけになります。だからこそ、オンリーワンになるような課題、クリエイティブな課題にすることが重要です。生徒によっては、そのような課題だからこそワクワクして取り組む生徒もいます。本校ではこれを「Creation」と呼ばれる活動の中で取り組み、さまざまな素敵な作品が誕生しました。これらの取り組みは、次回以降の連載記事をご覧ください。