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学習目的・対象者別

学校でのオンライン授業に向けて必要なこと――理念の共有とサービス選定

新渡戸文化学園でのオンライン学習の取り組み 第1回

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 新渡戸文化小中学校・高等学校では、2020年度からオンライン授業の環境を整え、4月の当初から授業を行ってきました。前年度までは授業時に貸与するiPadが数十台ある程度の状況であったため、家庭での学習体制を整えるのは、かなり急ピッチとなる導入でした。しかし、全体での理念共有を優先的に行ったり、段階的に教員や生徒に研修を行ったりしたことで、オンラインの特性を生かしたさまざまな授業を展開することができました。本連載では小学校から高校まで、本校での実践をお伝えします。第1回では、その導入にかかわる流れや、全体のコンセプトについて紹介します。なお、実際の事例紹介については、続報をご参考ください。

導入のコンセプトや方針

 オンライン授業に限らず、新たな教育活動の実施には「ビジョン」が重要であることは言うまでもありません。オンライン授業はあくまで手段であり、目指すビジョンのために必要であるならば導入する、そうでないならば導入しない、ということを大前提にしておくことは、全体で共有しておくべきことです。要は、「何のための導入か」という点について、教員全員が理解しておく必要があるということです。

 本校は、「Happiness Creator」という言葉を教育の最上位目標に置き、自律型学習者の育成を目指しています。そのために本校で大切にしていることは、「すべての主語を生徒にする」ということです(図1)。

図1 最上位目標を意識した教育方針
図1 最上位目標を意識した教育方針

 その最上位目標を考えたとき、4月の休校期間において大切にしたことは児童生徒の「不安」を解消することでした。その上で各校種(小・中・高)での議論を行い、それぞれの状況に最適な方法でオンライン授業を導入することにしました(図2)。このような「最上位目標」の確認は非常に重要で、導入が進んだ後にも「今の取り組みは最上位目標に合致しているのか?」を都度自分たちで問うことで、軌道修正を図ることができるようになります。

図2 各校種での実施内容
図2 各校種での実施内容

小学校

 まず、小学校は全員共通のデバイスがそろえられない状況であり、オンライン授業を行うには各家庭でデバイスを用意していただく必要がありました。また、低学年から高学年まで発達段階にかなり差があり、一律に同じ形での導入が難しい部分があります。特に低学年に関しては保護者の支援なしには授業に参加することができない、という場合もあり、オンラインでは通常授業を行わない判断をしました。

 その代わり、学校とつながることでの安心感や、ワクワクする学びの機会を提供できるような「特別授業」を考えて導入しました。必須の授業ではありませんでしたが多くの児童が参加しており、子どもたちがこのような状況でも「学びたい」という気持ちを持っていることを強く感じました。教科書に書かれている学びとは全く違う、新しい学びに触れることで、子どもたちも、私たち教員も世界が大きく広がったように感じています。詳しくは連載第3回の記事で紹介予定です。

中学校

 当初より1人1台のiPadを配付(貸与ではなく購入)する予定であったため、全学年iPadを持っていることが前提での検討になりました。そのため、3つの校種で最も早く毎日のオンライン授業を導入することができました。

 しかし、最初から「教科授業」を行うことはしていません。最上位目標を考えたとき、中学校が大切にしたことは「生徒が安心・安全に、主体的に学びに向かうこと」であり、そのためにまず必要となるのは「オンラインでつながり、授業を受けることに対してポジティブになること」でした。最初から教科授業を進めたり、一方的な講義をしたりすると、生徒はオンライン授業に対してネガティブになってしまい、外に出られない、学校に行けない中で、友人や学校とつながるツールが効果的に活用できなくなると考えたためです。

 そのため、まずはオンラインでもつながれること、操作に慣れることを目指し、対話や簡単なワークをする時間を2週間程度確保しました。これにより、生徒たちはオンラインでつながることに全く抵抗なく、操作も非常にスムーズに取り組むことができています。具体的な導入の流れは第2回の記事を、授業の実践は第3回の記事をご覧ください。

高等学校

 小学校と同様、全員共通のデバイスをそろえられない状況でした。しかし、全家庭に調査した結果、ほとんどの家庭でオンライン授業を受けることができる端末があったため、中学校同様オンラインでの授業を開始しました。一部、家庭の通信環境や端末がない家庭もありましたが、学校の端末(セルラーiPad、ノートPCなど)を貸し出すことで対応することができました。

 オンライン授業を実施するにあたって大切にしたことは「生徒の声」です。どのような学びを、どのような取り組みをしたいかを生徒に聞いたところ、高校3年生は「受験に向けてすぐにでも教科学習を始めてほしい」という要望がありました。そこで、高校3年生ではいち早く教科学習を始め、高校1年生と2年生はゆっくりと対話をしてつながることを大切にしました。

 そうした中で生まれた生徒の「やりたい」は、自分たちが置かれている今の状況を正しく理解するための「新型コロナウイルスのこと」など、身近で起きていることでした。そういった「やりたいこと」から始め、ゆっくり対話をしながら進めたことで、さまざまな「やりたい気持ち」が生まれ、オンラインでしかできない「現地との学び」などが生まれています。また、次第に教科学習に対しても「やりたい」という気持ちが芽生えるようになり、教科学習も導入していくことになりました。取り組みの詳細は連載の第6回、第8回で紹介予定です。

 このように本校の場合は、全教員が「Happiness Creator」に基づくオンライン授業という共通理念を持つことができたため、大きな問題もなく生徒の「やりたい気持ち」を大切にしたオンライン授業が実現できました。この「共通理念を持つ」ために必要なことが、教員同士の「対話」と「全体研修」でした。この内容はオンライン授業から外れるので深くは述べませんが、理念の提示と対話を繰り返し、それぞれの想いを認め、この危機を乗り越えるという目標を設定できたことがうまくいった要因だと考えています。

学校での導入までの流れ

 理念共有の次に必要なことは使用サービスの決定教員の研修、および体制を整えることです(図3)。教員の研修については第2回の記事でお伝えします。本記事では、使用サービスについて紹介します。

図3 オンライン授業導入の流れ
図3 オンライン授業導入の流れ

 なお、本校でのデバイス状況は先述した通りで、小学校と高等学校は家庭のものを使う完全BYOD、中学生はiPadを一律で導入しています。デバイスにも種類があるので、デバイス選定については筆者が前任校での経験をもとに執筆した過去の記事をご覧ください。


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著者プロフィール

  • 奥津 憲人(新渡戸文化小中学校・高等学校)(オクツ ケント)

     東京都八王子市出身。私立の中高を卒業し、大学は麻布大学 獣医学部 動物応用科学科を卒業。学部生時代は野生動物学研究室でごみ処分場の自然回復について研究をしていた。前任校では理科主任、ICT委員会委員長およびSDGs委員会委員長を務めていた。現任校ではラーニングテクノロジーデザイナーとして教育ICT...

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