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学習目的・対象者別

テストや成績のためじゃない、学ぶ楽しさを知り未来をつくる「クロスカリキュラム」の授業

新渡戸文化学園でのオンライン学習の取り組み 第6回

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 2020年度からオンライン授業の環境を整え、4月の当初から授業を行ってきた、新渡戸文化小中学校・高等学校。連載の第6回では、学校の特色でもある教科横断型の「クロスカリキュラム」について、高校での実践をお伝えします。またコロナ禍により、オンラインで実施した成果も紹介します。

変化の激しい時代に必要な力を身につける「クロスカリキュラム」の授業

 学ぶことを通じて生徒の笑顔が増える。学ぶことで生徒たちが「未来をつくれる」と自信をつけていく。そんな感覚を本物の体験や現地の人との交流を通じて引き出す教育プログラムが、新渡戸文化高等学校の「クロスカリキュラム」です。

 新渡戸文化中学校・高等学校では、リアルな社会課題の解決を目指すChallenge Based Learning(CBL、Project Based Learning・プロジェクト型探究学習の一種)をトップに、教科横断(Cross Curriculum)学習や基礎学習(Core Learning)を関連づけながら自律型学習者を育てるカリキュラムをデザインしています。週1回のクロスカリキュラムの時間にリアルな社会課題と触れ、教科横断的な学びを展開し、そしてクロスカリキュラム以外の各教科の授業において、コア学習を深めるのです。

 このクロスカリキュラムのデザインは本校の初代校長である新渡戸稲造氏が目指していた教育の姿でもあります。江戸、明治、大正、昭和と、劇的に変化する時代を生きた新渡戸稲造が教育に求めたことは、知識よりも見識(本質を見通す力)、学問よりも人格でした。社会が大きく変わり、価値観が定まらない激動の時代を生きる今こそ、新渡戸稲造が目指した教育を現代版で実践させる教育がクロスカリキュラムなのです。

 予測不可能な時代を幸せに生きるために必要な力を身につけるには、まずは生徒たちが社会課題を「自分ごと化」することが大切です。そこで本校ではクロスカリキュラムを活用し、社会課題の現場で一次情報に触れる機会を重視しています。五感と現地の人との出会いによって心が動き、そして体が動きだしていく教育を実施しています。教室で学んでいる普段の学びが現地でつながったとき、「学ぶことは楽しい」と気づくのです。そして、解決に向けて「学びを深めていきたい」という行動が引き出されます。

社会課題を実際に体験して「自分ごと化」する
社会課題を実際に体験して「自分ごと化」する

 実際に、このクロスカリキュラムを1学期から経験している生徒たちからは「もっと知りたい」「もっと体験したい」「もっとお話を聞きたい」といった声がたくさん出ています。本物の体験回数が多ければ多いほど、やってみたい気持ちがたくさん生まれてくるでしょう。本校のクロスカリキュラムは毎週1回、全コースで設置しています。本物に触れることで、生徒たちの挑戦したい気持ちを引き出します。

毎週、1日をかけて自分がやりたい学びを深める

 週に1日、6時間、複数の教科の先生がチームティーチングするのがクロスカリキュラムの特徴です。ここでは1コマ50分の枠に縛られることなく、1日中、自由な活動を実施できます。内容については、先生と生徒たちの対話から作り上げていきます。新聞やニュースから自分が気になる授業を徹底的に調べる授業、1日中実験をする授業、自分の興味あることと社会課題をつなぐ授業、学校や地域、もしくは社会のために行動をデザインする授業、ゲストを招いてお話を聞く授業、自分の好きな本を図書館で探して読書する授業、オンラインで海外や地方とつないで対話する授業、地方の高校生と対話する授業、担当教員が現場からライブ配信する授業など、教科の枠や、今までの授業の常識を越えた学びを実施しています。

クロスカリキュラムは週に1日実施
クロスカリキュラムは週に1日実施

 クロスカリキュラムでは、任意参加のフィールドワークを実施することがあります。通常の校外学習は、学期に1回、もしくは年に数回の特別なイベントであることが多いです。しかしクロスカリキュラムをフル活用すれば、毎週フィールドワークを実施することも可能です。

 この半年間では、博物館での実習、田植え実習、里山の管理活動、農園の収穫実習、多摩川の清掃活動実習、企業訪問を実施してきました。

 フィールドワークを重ねるたびに、生徒たちの普段の教科学習に対するモチベーションが高まっていくことを感じます。現場の学びと、普段の学びがつながることで、学ぶことの楽しさが湧き上がるのと同時に、学ぶ目的がテストや成績のためではなく、未来をより良くするために学ぶということを実感していくのでしょう。現場の楽しさは、生徒たちの会話の中でも広がっているようです。前述の通り、フィールドワークの参加は任意にしていますが、今では毎回100%の参加率になってきました。

田植え実習のフィールドワーク
田植え実習のフィールドワーク

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著者プロフィール

  • 山藤 旅聞(新渡戸文化中学・高等学校)(サントウ リョブン)

     新渡戸文化中学・高等学校教諭・統括校長補佐・高校教育デザイナー、都立高校講師、一般社団法人Think the Earth SDGs for Schoolアドバイザー。  2004年より都立高校で生物の教員となり、オール実験の授業や生徒の「問い」だけで進める授業、生徒が主体的・自立的に学びを進める...

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