タブレットを使ってプレゼンテーションを実践
きたかしわ幼稚園では、どのようにタブレットを利用し、幼児教育にICTを活用しているのだろうか。同園の公開授業を取材させてもらった。
タブレットあそびの時間は、園児たちのプレゼンテーションから始まった。前回の授業では各自が好きな写真を撮影しており、選ばれた2名がプロジェクターに投影しながら説明する。この日は滑り台の写真と花壇の写真をそれぞれ撮影した園児が前に呼ばれた。
プレゼンテーションは「どこで何の写真を撮ったのか?」といった基本的な情報を説明するものだったが、その後先生の「質問のある人」という問いかけに、たくさんの園児が勢いよく手を上げる。「なんでその写真を撮ったのですか?」「他にも花はあるのに、なんでその花壇にしたのですか?」といったことを聞いていた。
撮影者も「気に入っている場所だから」(滑り台の写真を撮った園児)、「みんながうれしくなると思ったから」(花壇の写真を撮った園児)と、しっかりと自分の考えを述べていた。
こういった発表体験のために、必ずしもタブレットなどのデジタルデバイスは必須ではないが、写真とプロジェクターを使うことで、発表方法や内容に広がり持たせることができる。写真の撮影で終わってしまうと、ただタブレットで遊んだだけになってしまうかもしれないが、発表とセットにすることで子どもたちに考えるきっかけを与えている。
デジタル端末ならではの「とりえ」あそび
続いて先生はタブレットからステンドグラスの写真をいくつか見せ、「次はみんなにこれと同じようなものを作ってもらおうと思っています」と、本日のメインとなるタブレットあそびを説明した。
利用するのは株式会社スマートエデュケーションが開発した「とりえ」というアプリだ。「とりえ」のアイコンをタップすると、アプリの画面が開く。画面には輪郭がステンドグラス風になったイラストが表示されている。スワイプでイラストが選べるようになっており、ここでは「きりん」のイラストを選択した。
これらの操作は、プロジェクターの大きい画面で確認できる。子どもたちはアイコン、画面の動き、先生の動作を見ながらアプリの起動方法や使い方を自然につかんでいた。子ども向けのアプリというのもあるが、操作の実演だけで細かい手順を説明する必要はなかった。ただし、放っておくと子どもたちはどんどんいろいろな操作をしてしまうので、説明の要所要所で「この画面になったら、いったんタブレットは裏返してください」と指導していた。
タブレットやPCを使った授業は、時間を区切ったりして作業と人の話を聞く時間を明確にしないと、だらだらとした自習モードになってしまう。幼児に対して「裏返す」という動作は作業の区切りを明確にするよい手法だ。
ちなみに「とりえ」は、イラストを選ぶと、その絵に必要な「色」を写真で撮影するモードになる。撮影した「色」を登録し、必要な色が集まったら「おめでとう」と表示され終了となる。最終的には園児が集めた「色」を使って、ステンドグラス風イラストを先生の端末で完成させる。つまりぬりえアプリの一種で、カラーパレットに相当するものにアプリで撮影した画像を利用する。
きりんのイラストが完成すると、みんなが撮ってきた色の写真が先生からいくつか紹介された。緑色の撮影に非常口のサインを撮影した園児や、公開授業の見学者のスリッパ(緑色)を撮影した園児、お弁当箱や廊下のポスター、制服の帽子など、子どもたちの感性で実にさまざまな「色」が集められたことがわかる。
子どもたちはこのあと、かえるのイラストでも「とりえ」を楽しんだ。
授業終了後、子どもたちにタブレットあそびの感想を聞くことができた。難しかったところは「写真をきれいに撮る」ことで、色を集め終わったあと「おめでとう」と画面に表示されたことが楽しかったそうだ。
ある園児は、家では親といっしょならYouTubeなどを見せてもらえることもあるそうだが、基本的に「PC、スマホは使わせてもらえない」という。その分、幼稚園ではタブレットを使って遊ぶことができるので、「滑り台や鉄棒も好きだけど、タブレットの時間も楽しみ」と感想を述べてくれた。