フューチャークラスルームの教育的効果を検証し、公立学校にも成果を発信
同協定は、ICTを活用した未来志向の教育環境の構築と、地域に根差した持続可能な学びの創出を目的としている。具体的にはフューチャークラスルームを拠点に、教育環境の実証・検証・改善を継続的に取り組んでいく。
今回整備されたフューチャークラスルームは、ICTを活用した未来型の授業開発を推進する拠点であり、次世代の教員育成のための共同研究を進める場としても重要な役割を担う。また、内田洋行はこれまで培ってきたNEXT GIGAの端末整備、学習ダッシュボードの設計の構築など、多面的な教育ICT支援の実績を活かし、本協定を通じて教育現場の変革を強力に後押ししていく。
同協定の基盤となるフューチャークラスルームは、教室空間とICTを融合させた未来の学びの場で、ハイフレックス型授業や協働的、創造的な学習を可能にする。2025年4月に、福岡教育大学の附属学校である、附属福岡・小倉・久留米の3拠点に設置され、教員養成や研修の実践基盤としても活用される予定だ。
また、内田洋行はGIGAスクール構想第2期(NEXT GIGA)に基づき、附属福岡小・中学校、附属小倉小・中学校、附属久留米中学校に、合計2175台のChromebookとiPadの利用環境を設計・構築し、初期導入から運用支援までを一貫して担っている。このようなICT環境の整備により、各拠点でのフューチャークラスルームを活用した授業実践が進み、個別最適な学びと協働的な学びの実現が図られている。
締結式に出席した、福岡教育大学 学長の飯田慎司氏は、冒頭のあいさつで、同学が九州・沖縄地方における教員養成の拠点として責務を果たし、地域に根差した大学として附属学校園と一体となり、教育研究と社会貢献に取り組んでいることを紹介。そして、個別最適な学びと協働的な学びの実現を目指す「令和の日本型学校教育」を担う教員を養成しているとした。

また、Society 5.0の時代を迎えて1人1台端末環境が実現した今、内田洋行のような高度な専門性やテクノロジーを有する民間企業との連携は時宜を得たものであり、同学の発展を牽引する新たなエンジンとなると期待を述べた。
一方、内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏は、創業以来の歴史を振り返り、測量機や製図機、計算尺といった道具を提供してきた企業としての歩みに触れた。同社は計算尺を数学の道具として活用すべく、1946年に教育市場向けの部署を設立し、その後1962年には日本で初めてICチップを使ったコンピューターを製造・販売。コンピューターを教育に用いることへの可能性を見いだした。

そして、学びが黒板やノートからプロジェクターやタブレットを使ったものへと変化していることを踏まえ、「日本の学校は北から南までほぼ同じ教室で子どもたちが学んでおり、それは明治時代に生まれた原型から変わっていない」と指摘。学びの形が変わることで、ハードウェアやソフトウェアだけでなく、フューチャークラスルームのように、学びの空間も変容する必要があるとした。
さらに今回の連携については、「日本の教育の未来を担う子どもたちにとって大きな武器となるものにしたい」と述べ、この協定を通じて福岡、九州、さらには日本の教育に貢献していきたいと抱負を語った。
福岡教育大学 附属学校部長の坂本憲明氏は、今回の協定締結が、企業と組織的に連携し、教育研究の一体的推進を目指す初めての取り組みであることを説明。取り組みの背景として、ICTの活用が加速する中で、同学の附属学校が新しい教育スタイルの開発を目指していることを挙げた。

そのためには、附属学校3拠点すべてに次世代のICT環境設備であるフューチャークラスルームを導入し、新たな学習指導方法や教材の開発が欠かせないとの結論に至った。そして、フューチャークラスルームの開発元であり、附属福岡小学校における教育ダッシュボード「マイ・カリキュラム」の構築など、すでに多くの実績を持つ内田洋行の技術的支援が不可欠であると判断し、協定締結につながったという。
今回の協定を中核として、両者は「ラーニング・イノベーションの促進を目指した未来型ICT環境設備の活用に関する試行的実践プロジェクト」を推進し、活用実践を段階的に深め、教育の質を高めていく。具体的には、フューチャークラスルームの活用を通じた学習指導方法の開発・実践・検証を目的としており、フューチャークラスルームがもたらす教育的効果の検証などを試行的に実践していく予定だ。

そして、地域の教育委員会や大学と一体となって取り組みを進め、3拠点を接続したネットワーク型授業や地域の社会教育機関との連携を視野に入れながら、継続的な改善を図る。さらに、活用モデルを体系化し、教育委員会や産業界とも連携し、福岡県内の公立学校にも成果を発信していくという。