学校全体で迎え入れる文化をつくる
──制度として定着させるには、どのような役割分担が必要でしょうか?
民間企業の場合、インターン受け入れの全体設計は人事が担います。現場を巻き込みながら、どうすればこの期間を最大限に活かせるかを本気で考えるんです。教育現場でも同様で、各学校任せにせず、教育委員会が一定の「実習プログラムの型」を作成し提供するとよいと思います。その型をもとに、校長や主任が各校の事情に合わせてカスタマイズする。現状では実習担当の先生が1人で抱え込むケースが多いのですが、それでは限界があります。全員で「よい人材を迎え入れよう」という空気をつくり、プロデュースする人を明確に置く。それができれば、教育実習は先生不足を補うための最大の採用活動に変わります。
──とはいえ、制度や設計があっても、現場が協力的でなければ実現は難しいですよね。
はい。最も大事なのは「受け入れる文化」を学校全体で共有することです。実習生は、短期間とはいえ学校にとっては新しい仲間です。そこに「居場所」を感じられるかどうかで、その後のキャリア観は大きく変わります。教員同士のちょっとした声かけや雑談、放課後に「今日はどうだった?」と振り返る時間を持つだけでも、安心感は全然違うはずです。
教育委員会や自治体レベルで「このような雰囲気で迎えよう」といった指針を持つことも有効です。民間企業では、インターン受け入れ前に社内全体に目的や背景を説明し、よい人材に出会い採用につなげようという意識を醸成します。学校でも、年度当初の職員会議で教育実習の意義や具体的な受け入れ方針を共有できれば、担当教員の負担軽減にもつながりますし、同僚の協力も得やすくなるでしょう。
──教育実習が変われば、教員採用も大きく変わりそうです。
まさにそこです。教員不足が深刻化する今、教育実習は将来の採用候補者と出会う絶好のチャンスです。単なる免許取得の通過儀礼ではなく、「この学校で働きたい」と思ってもらえる場にする。教育実習を「未来の仲間づくり」の時間と位置づけることは、これからの教員確保に欠かせない視点です。

おわりに
教育実習は、免許取得のための通過点ではなく、学校にとって未来の仲間と出会う貴重な機会です。制度や仕組みを整えて負担を軽くしつつ、温かく迎える文化を育むことで、実習生は学校に愛着を持ち、現場も新たな刺激や学びを得られます。
今や学校も、人材を「選び・選ばれる」時代にあります。民間が実践してきた工夫には、教育現場にも応用できるところがあるでしょう。「忙しいから大変」で終わらせず、「あの実習があったから、この仲間に出会えた」と思える経験に変えていく──その積み重ねこそが、これからの学校をより強く、魅力的にしていくはずです。