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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(アクティブラーニング)

AI時代に子どもたちが身につけるべき「12の学びの基本項目」とは? 元慶應義塾長の安西祐一郎氏が語る

New Education Expo 2025「AIの時代に何をどう学ぶか」レポート

 AIの急速な進化は、社会のあらゆる側面に深い変革をもたらしており、教育分野も例外ではない。慶應義塾元塾長の安西祐一郎氏は、長きにわたってAIと認知科学の研究に携わってきた。内田洋行が企画支援を行い、2025年6月に開催された「New Education Expo 2025」の基調講演では、専門家の視点から「AIの時代に何をどう学ぶか」をテーマに解説した。講演で安西氏は、従来の「覚える知識」から「活用する知識」への転換、スキルの重要性の増大、そして非認知スキルの評価という新たな課題を指摘した。本稿では、安西氏の講演内容に基づき、AIが教育にもたらす変化と、それに対応するための新たな学びの哲学について深く掘り下げていく。

AI時代に教育はどう変わる? 安西氏が示す3つの大きな変化点

 安西氏自身の専門はAIと認知科学であり、約50年にわたり研究に携わってきた。研究主題は、アメリカの教育哲学者ジョン・デューイが提唱した「Learning by Doing(経験を通じて学ぶ)」、すなわち、自ら経験しながら学んでいくプロセスである。この概念は、AI時代に必要とされる知識やスキルの習得と活用、そして「自律的な学びのエンジン」を育むという考え方と深くつながっている。

一般財団法人交詢社 理事長/元慶應義塾長 安西祐一郎氏
一般財団法人交詢社 理事長/元慶應義塾長 安西祐一郎氏

 安西氏は「心とは情報処理を行うシステム」と定義し、「生命体である人間は、コンピューターとは異なり、自律的に自分を変えていく特性を持つ」と語る。この生命体としての情報処理こそが、学びの基本的なポイントであると強調した。

 AIが社会に深く浸透し、個別最適な学びが進んでいく時代において、教育のあり方も変化している。学びにおける大きな変化は、主に3点ある。

 第一に、知識の変化である。「覚える知識」から「活用する知識」へと変わっていく。AIが知識の集約や分析を容易に行ってくれるため、人間には批判的思考力がより強く求められるという。

 第二に、「スキル」の習得である。これからは「何をどうやってやるのか」といった学びが重要となる。

 第三に、評価の変化である。AIによる個別最適化が進む中で、これまでのペーパーテスト中心の評価から、個人の心の中のプロセス、特に感情やコミュニケーションスキルといった「非認知スキル」の評価が大きな課題となっていくという。

AI時代の教育課題と、問われる「学びの哲学」

 AI時代の学びを考えるうえで、安西氏は2つの軸を提示した。ひとつは「個別と全体」の横軸で、個人やクラス単位の学びと、学校全体、地域、国家、さらには人間全体の変革という視点。もうひとつは「短期と長期」の縦軸として、短期的なAI利用のあり方と、長期的な教育の視点を示している。

AIの時代と学びの関係
AIの時代と学びの関係

 短期的な課題としては「生成AIの具体的な使い方」、長期的には「学びの内容や方法」「AI利用に伴う問題への対処」などが挙げられる。安西氏は「今後、重要視される批判的思考のベースになる情動や、コミュニケーションスキルなどを含めた非認知スキルの評価をどうするかは非常に難しい問題である」と語る。

 さらに「AIの進化によって、近代の教育制度が終焉に向かっている」と安西氏は指摘した。産業革命によって標準化された人材を大量に育成するために生まれた近代の学校制度は、AIによる個別の学びの可能性が広がることで、その枠組みが曖昧になりつつある。デジタル革命が進行し、AIが社会に深く入り込むこれからの時代、「学びの哲学」を改めて考えていくことが重要だという。

次のページ
世界で広がる教育現場での生成AI活用

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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