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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZineオンラインセミナー

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キーパーソンインタビュー

なぜ共通テストで「情報」が必須となったのか? 学校現場における情報教育の現状と目指すべき姿

『思考力アップ 大学入学共通テスト「情報I」[なるほどラボ]』出版記念インタビュー

 2025年度の大学入学共通テストより、いよいよ「情報Ⅰ」が出題科目となる。しかし高校で学ぶ教科「情報」については、「時間数が少ない」「専任教員がいないため、他教科と兼任して教えている」といった声が現場から上がっている。さらに、小中高校における情報教育の連携が取れていないなど、問題が山積みだ。文系・理系に関わらず「情報」の知識が必要とされている現在、高校の現場ではこれらの問題をどのように乗り越え、指導していけばよいのか。長年にわたって高校で「情報」を担当し、『思考力アップ 大学入学共通テスト「情報I」[なるほどラボ]』(翔泳社)を執筆した、NPO法人みんなのコードで教員向け研修の講師を務める永野直氏と、山梨大学准教授の稲垣俊介氏に話を伺った。

高校における教科「情報」の現状

──永野先生には、2022年11月に開催されたEdTechZineのオンラインセミナーにて、「高校の情報教育が目指す姿とは? 教育委員会・学校はいかに対応すべきか」というテーマで講演をしていただきました。当時は高校で「情報Ⅰ」が必履修科目になり、大学入学共通テストにも採用されるということで大きな話題になりましたが、あれから1年半が経った現在、学校現場の状況はどのように変わったと感じていますか。

永野氏(以下敬称略):セミナーが開催された2022年時点での独自調査では、「プログラミングの経験がない」という「情報」の先生が4割ほどいらっしゃいましたが、現在は「情報Ⅰ」の授業が始まったこともあり、プログラミング経験のない先生は格段に減りました。[※1]

 ただ、いよいよ2025年度から共通テストで「情報Ⅰ」が始まるので、昨年度あたりから高校の現場では「どのように入試に対応していけばよいのか」といった不安が強くなっているように感じます。

特別非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 講師・研究開発 永野直(ながの・なおし)氏 宮城教育大学非常勤講師、元千葉県公立高等学校 情報科教員。「情報」の授業を20年近く担当し、現行の学習指導要領の専門学科「情報」の作成にも協力した。
特別非営利活動法人みんなのコード 未来の学び探究部 講師・研究開発 永野直(ながの・なおし)氏 宮城教育大学非常勤講師、元千葉県公立高等学校 情報科教員。「情報」の授業を20年近く担当し、現行の学習指導要領の専門学科「情報」の作成にも協力した。

──では、以前課題として挙がっていた「情報」の教員不足は解消されつつあるのでしょうか。

永野:「情報Ⅰ」の教員不足は解消してきているように見えますが、実は潜在的に不足している学校は多く存在します。1人で担当できる時間数は「情報I」のみが限界で、「情報II」を開講できない場合などです。また、みんなのコードが行ったプログラミング教育 実態調査報告書2022 「高校教員の意識調査 単純集計結果」では、全国で約8割の先生がほかの教科と「情報」を兼任していると回答しました。[※2]そうなると教材研究も2教科分行う必要があり、当然教員の負担も大きくなります。

稲垣氏(以下敬称略): 私自身、高校では情報科教員として勤務していましたが、理科も兼任していた時期がありました。「情報」の専門性を高めたいと思っても、他教科をあわせて研究しなくてはならず、大きなジレンマを抱えていました。

 また、1校に1人しか「情報」の教員がいない学校も多く、先生は不安を感じているのではないでしょうか。そうした中、自分の授業を改善したいという気持ちで、学校外の勉強会やセミナーに参加する先生もいます。一方で、どうすればよいのかわからず1人で抱え込み、例えばアプリケーションについてただ説明するだけの独りよがりな授業をしてしまう先生がいるのも事実です。そうした「情報」の授業しか知らない生徒が生まれてしまうという悲惨な状況になりかねません。

 「情報Ⅰ」が共通テストに採用され、学校で「情報」の授業の質を底上げしなければならない状況になったことを、ある種の劇薬だとする意見もあります。しかし私は、それでも情報教育にきちんと向き合うよいきっかけになったと思います。自治体も積極的に教員採用を行うようになり、例えば情報教育に注力している福島県では、ここ数年で情報科教員の新規採用数が増加しています。

山梨大学准教授 稲垣俊介氏 東京都立高校の情報科主任教諭、文部科学省 高等学校情報科 教員研修用教材の作成 WG委員などを務め、2024年春より、山梨大学教育学部附属教育実践総合センター、やまなし情報教育推進室に着任。
山梨大学准教授 稲垣俊介氏 東京都立高校の情報科主任教諭、文部科学省 高等学校情報科 教員研修用教材の作成 WG委員などを務め、2024年春より、山梨大学教育学部附属教育実践総合センター、やまなし情報教育推進室に着任。

[※1]プログラミング教育 実態調査報告書2022「高校教員の意識調査 単純集計結果」P.24(みんなのコード)

[※2]プログラミング教育 実態調査報告書2022「高校教員の意識調査 単純集計結果」P.11(みんなのコード)

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

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鈴木 智哉(スズキ トモヤ)

 出版社専属カメラマンおよび広告撮影スタジオを経て2011年に独立。雑誌・広告・Webにおいて、人物・料理撮影を中心に活動しています。

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森山 咲(編集部)(モリヤマ サキ)

EdTechZine編集長。好きな言葉は「愚公移山」。

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