Unityの基本から始めて、最後は自分の作品づくりに挑戦!
──では、SHOTOKU TECH ACADEMYの1年間のカリキュラムを教えてください。
鶴岡:例年、体育祭や中間テストなどが落ち着いた6月ごろに、SHOTOKU TECH ACADEMYの開講式を行います。活動が本格的に始まるのは、期末試験が終わった7月ごろからで、夏休みには集中講座も用意しています。
藤岡:開講式では、校長先生のあいさつのほか、各コースの説明をITチューターがプレゼンします。Unity Developerコースではコースの概要や、これまで参加した生徒さんがつくった作品などを紹介しました。
──具体的には、どのようなことを教えていらっしゃるのでしょうか。
藤岡:Unity Developerコースでは、まずUnityの基本的な知識と実践からスタートします。例えば「このボタンを押したら、キャラクターが前に進む」といったプログラミングなど、初歩的なものを数種類用意しています。簡単な内容から始め、3学期は自分のつくりたい作品に挑戦します。
1から自分で考えて企画書からつくるとなると、調べながら進めることも多いため、時間がかかり完成に至らない場合もあります。どこまで自分の力で調べられるか、順序立てて進めていけるのか。Unityでのプログラミングを通して、そういったスキルも身につけることを期待しています。1年の最後には、自分が取り組んだ作品について発表する時間を設けているので、プレゼンテーション能力も意識しつつ教えています。
──これまで生徒さんがつくった作品で、特に印象に残っているものはありますか?
藤岡:昨年度ですと、Unityの「アセット」[※]と呼ばれる素材を使って迷路を制作した生徒がいました。迷路のコースや敵などを、自分なりにとても上手に工夫してつくっていました。
そのほか「物理シミュレーションがやりたい」という生徒は「弾を飛ばす」というシンプルなシステムから、どのようにゲームとして面白くしていくかを考えていきました。企画書からとても面白いものをつくっていた生徒はビジュアルにこだわりがあり、「自分の持っている世界観を表現するには、どのような絵柄で、どのようなことをしたら面白いのか」を考えていました。
[※]アセットとは、3Dモデルから、アニメーション、プロジェクトサンプル、エディタ拡張まで開発に使用できるアイテムのことで、「Unity Asset Store」で無料または有料で入手できます。
──藤岡さんご自身は、どのような作品をつくられましたか?
藤岡:時間がなく最終的な完成に至らなかったものもありますが、3Dのアクションゲームのほか、2Dのシューティングゲーム、3Dの学校マップといった実用的なものなど含めて、数点の作品を制作しました。
Unityを通じて、新たな視点やスケジューリングのスキルを養う
──藤岡さんご自身が受講し、そしてチューターとして生徒さんを見ている中で、Unity Developerコースに参加することによりどのような力が身につくと感じますか?
藤岡:私自身も、チューターとして担当した生徒も、「立体的に物を捉えられるようになった」と思います。私たち人間は日常生活でも物を立体的に見ながら生活していますが、ゲームをつくる際の遠近法や、どのように見えるかといったことを、改めて意識する観点が養われました。
また、ゲームやアプリをつくる際は、作業の流れを図式化した「ワークフロー」が重要です。本格的なガントチャートまではいかないにしろ、手順をきちんと立てるといったスケジューリングも学ぶことができたと思います。
──ITチューターはどのような役割をされているのでしょうか。
鶴岡:開講式でのコース説明や実際の生徒の指導、教材づくりなどを担当してもらっています。Unityは裾野が広く何でもできる分、教える側としてはかなり勉強しなければ厳しいと感じています。全国でもそこまでUnityをやり込んでいる先生は少ないでしょう。私自身、外部の教員向けプログラミング講座でUnityを学び、簡単なゲームをつくることができる程度にはなりましたが、細かい部分まで生徒に教えられるレベルには至っていません。
学校としては、Unityを学べる端末やライセンスなどをそろえて「場を用意する」ことができることの上限だと感じています。Unityの面白さを伝えるには、やはり専門的な知識を持った講師が必要です。本校の藤岡のように、SHOTOKU TECH ACADEMYで育った生徒が専門の道に進み、ITチューターとして帰ってきてくれるというのは、とてもありがたいことだと思っています。