3カ月で社会課題の発見から解決するアプリ開発まで
このピッチイベントは、ITにおけるジェンダーギャップ解消を目指す一般社団法人Waffleが毎年主催するもので、米国の非営利団体Technovationが主催する、女子学生向けIT起業家コンテストTechnovation Girlsの派生イベントだ。Technovation Girlsは2010年にスタートした女子学生向けのIT起業家コンテストで、これまで世界100カ国以上、5万人以上の女性が参加。Waffleは、このTechnovation Girlsの日本公式アンバサダーを務めている。
Technovation Girlsの特徴は、社会課題を解決するアプリを開発するという学習型のコンペである点。1月に課題探しからスタートし、解決策を考えビジネスアイデアに落とし込み、アプリを開発するプロセスで進めてきた。その間、協賛企業やボランティアのメンターが伴走し、4月19日には米国本部にアプリとピッチビデオを提出。日本では、スペシャルスポンサーとしてレノボ・ジャパン、スポンサーとしては、Platinum Sponsorにテックアカデミージュニア(キラメックス)、アシュリオンジャパン・ホールディングス、日本マイクロソフトの3社、Gold Sponsorに、グーグルとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの2社、Silver Sponsorとして日本オラクル、EDOCODE、マタドールジャパンの3社が支援した。
イベント当日はまず、午前中に23チームからファイナリストが10チームに絞られ、夕方より10チームが持ち時間約4分で発表した。審査基準は「アイデア」「ピッチ」「技術」と、審査員の心をつかむ「特別点」の4つで、合計の得点の高いチームから優秀賞、準優秀賞が決まる。これに加え、協賛企業が選ぶレノボ賞、テックアカデミー賞、アシュリオン賞、マイクロソフト賞も授与された。
優秀賞は日本に住む外国人が抱える問題に挑んだ「Alien Pass」
優秀賞に輝いたのはISAKチーム。メンバーは日本出身のManaさん、中国出身のCathyさん、イタリアと中国出身のIsabelさんの3人で「Alien Pass」というアプリを開発した。
「日本の人口減少、経済問題などにより、海外から働きに来る人の需要が増えています。一方で、外国人に対するネガティブなイメージや必要な情報不足、ビザの申請や獲得のプロセスは難しく、移住後も言語や雇用面、法律について課題もあります」とManaさんは問題を提起。実際に移民が多い自治体とのミーティングや、外国人へのアンケート、ビザのコーディネーターへインタビューも実施した。
そこで浮き彫りになった課題を解決すべく、Alien PassではGPSマップにより、近くのリソースを探す機能や、ビザ取得に向けたチェックリストなどの移民ガイド、日本語レッスン、クイズ形式で学ぶ自治体のルールなどのメニューを備える。対応言語は日本語と中国語、英語。アプリの「Alien」とは、日本にやってくる外国人が「Alien」として登録されることから命名された。
さらに今後は、クラウドファンディングを行うほか、有料サービスの提供、グッズの制作なども視野に入れるとした。
最後にManaさんは「自分たちのアイデアが、もっと多くの人に外国人移住者について知ってもらい、お互いが共生できる社会になるきっかけとなることを願っています」と述べた。Cathyさんは「ローカルコミュニティと移民の間に分断があることがわかりました」と課題を強調、Isabelさんは「コンピューターサイエンスを学校で学んでいますが(プログラムを通して)Android Studio、JavaScriptなどプログラミングを学び、テクノロジーが社会に与える影響を実感しました」と述べた。
優秀賞の授与にあたっては「チームでは、コミュニケーションでもめることもありました。夜遅くまでリサーチやプログラミングの勉強を行ったのでうれしく思います」とコメントした。
ヴィーガンやハラールが日本でも安心して食事を――フードラベリング「GLABEL」
準優秀賞はRepaintersチーム。Ayanaさん、Ninaさん、Shinjuさんの3人がピッチを行い、開発したアプリ「GLABEL」を紹介した。
GLABELは「Global Food Labeling」の略で、調べる・食べるを可能にするアプリをうたう。
背景には、日本に住んだり訪問したりする外国人の中で、宗教や信条、健康上の理由で動物性食品を摂取しない人が増えているという課題意識がある。「ムスリムやヒンズー教徒の人たちが日本に来た際に、食べられる食事・食べられない食事の判断が難しく、信念を貫くことが難しいのです」とAyanaさん。また、動物性食品を摂取しないことで、最大73%の温室効果ガスの排出を個人で削減できるという。
そこで、GLABELでは、食べられない食品を詳細に設定することで、その食事を食べていいかどうかをわかりやすく○か×で示す。自分の食生活に対応するレストランをマップにまとめるなどの機能もあり、記事の発信も行う。有料サービスとして、過去の商品履歴の閲覧なども用意する。UIにはこだわり、青やオレンジ、ピンク、黄色を中心とした印象的な色使いとユニバーサルデザインを採用し、「信頼できる」「エナジェティック」といったブランドパーソナリティを表現したそうだ。
今後はマップの共有や、バーコード認識による食品判断などの機能をアプリに追加する予定だ。マーケティングとしては、SNSを活用して地球温暖化が生活の質を下げるというネガティブなイメージを改善していくとのこと。ほかにも、イベントの開催やや学校での授業を通じてメンバーが直接アプリを宣伝することや、チラシの配布も行う。将来はメディア広告やコマーシャルにも挑戦したいという。
Ninaさんは「収益の5%をヴィーガニズムに関連した団体に寄付し、コミュニティの拡大や環境問題の解決に寄与したいです」と目を輝かせた。