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イベントレポート(プログラミング教育)

身近な目標から意欲や関心をかきたてる――プログラミング教育の映画を使った授業

未来の先生フォーラム2020「プログラミング教育映画を使った授業~ビジョナリー・ラーニング」レポート

 ICT活用や探究学習、SDGs、フリースクール、不登校、プログラミング、アクティブ・ラーニングなど、多種多様な教育をテーマにしたオンラインイベント「未来の先生フォーラム2020」が、2020年11月22日、23日の2日間にわたり開催された。本稿では小金井市立前原小学校の蓑手章吾教諭による、プログラミング教育映画を活用したビジョナリー・ラーニングの授業案のセッションを紹介する。

未踏ジュニアの小中高生と大阪の小学生が出会ったら……!?

 本セッションでは、プログラミング教育をテーマにしたドキュメンタリー映画「プログラミングのすゝめ」を使い、蓑手教諭が実際に小金井市立前原小学校の授業で活用した事例を解説し、後半には豊中市立立野畑小学校の越智景子教諭との対談が行われた。

映画「プログラミングのすゝめ」
映画「プログラミングのすゝめ」

 「プログラミングのすゝめ」は、大阪府吹田市・豊中市のコミュニティラジオ局「FM千里」のラジオ番組「こどもプログラミングニュース」が制作した映画で、2020年2月に完成した。同番組が2019年8月に大阪府で開催した未踏ジュニアスーパークリエータによる講演会とプログラミング体験会をもとに、初めてプログラミングに触れる小学生たちの様子や、スーパークリエータたちのインタビューなどが収められている。2019年の「未来の先生展」のセッションでは、公開前の「プログラミングのすゝめ」の試写会も行われ、映画に出演したスーパークリエータたちが登壇し、自らのプログラミングへの思いなどを語っていた。

 セッションの冒頭、「プログラミングのすゝめ」の制作者であるCodeAid代表の水上裕樹氏が登場し、「この映画は『プログラミングで世の中をおもしろくしよう』をテーマに、小学校でのプログラミング教育が始まる2020年のを記念してつくった」と、制作の経緯を語った。

FM千里でラジオ番組「こどもプログラミングニュース」を手掛ける水上裕樹氏。「子どもたちが『プログラミングとは何か』というビジョンが浮かぶように考えて制作した」と話す。
FM千里でラジオ番組「こどもプログラミングニュース」を手掛ける水上裕樹氏。「子どもたちが『プログラミングとは何か』というビジョンが浮かぶように考えて制作した」と話す。
映画「プログラミングのすゝめ」より。スーパークリエータがプログラミングの楽しさを伝える講演会と、子どもたちにプログラミング作品を実際に遊んでもらう体験会の模様がまとめられている。
映画「プログラミングのすゝめ」より。スーパークリエータがプログラミングの楽しさを伝える講演会と、子どもたちにプログラミング作品を実際に遊んでもらう体験会の模様がまとめられている。

プログラミング授業の導入に最適な指導案

 映画の上映後、蓑手教諭による「プログラミングのすゝめ」を使った授業事例が紹介された。

小金井市立前原小学校の蓑手章吾教諭。同校はChromebookを導入し、IchigoJam、ドローンをはじめとしたさまざまな教材を活用しながら、プログラミング教育に積極的に取り組んでいる。
小金井市立前原小学校の蓑手章吾教諭。同校はChromebookを導入し、IchigoJam、ドローンをはじめとしたさまざまな教材を活用しながら、プログラミング教育に積極的に取り組んでいる。

 蓑手教諭は、前原小学校の児童と映画を鑑賞したときの様子を振り返り、「鑑賞後、みんな拍手をしていた。すてきなキラキラしたスーパークリエータ3人だった」と感想を語った。さらに映画を活用した指導案を紹介し、「今回作成した指導案は、プログラミングを知らない子どもたちに向けた導入での使用を想定している。自由に改変して使ってほしい」と話した。

 この指導案でのねらいは、「プログラミングの魅力を知り、意欲を持つこと」「自分の生き方について考えてほしい」というもので、総合的な学習の時間のねらいに近い。

 なお、映画「プログラミングのすゝめ」は、学校の授業については無償で使用することができる。蓑手教諭による指導案も無償提供されているので、あわせてプログラミング教育の導入に活用してみるのもよいだろう。(問い合わせ先は本稿2ページ目末尾に掲載)

「プログラミングを学ぶ」意欲につなげていく

 実際の授業では、プログラミングについて知っていることを子どもたちに発表してもらうことから始まる。一般的に多く出る意見は「ロボットやコンピューターを動かすもの」「難しそう」「大人の仕事」などだ。しかし、プログラミングを経験している前原小学校の児童からは、実際の言語や教材の名前が挙がったという。

子どもたちからは「ハンカチと同じぐらいのレベルでパソコンを持っている」との意見も上がった。
子どもたちからは「ハンカチと同じぐらいのレベルでパソコンを持っている」との意見も上がった。

 蓑手教諭は、あわせて子どもたちに「プログラミングを好きか」と聞いてみたところ、「好きと答える児童がいた半面、あまり好きでないと話す児童もいて、特に女子は好きではない傾向があった」と話す。こうした感想は黒板に書き残しておくとよい。

 続いて、上映前に「スーパークリエータが出てくるよ」と伝えた上で映画鑑賞にのぞむ。映画が20分強あるため、導入には時間をかけず進めたという。

映画を見ながら、蓑手教諭の場合は黒板にメモ。スーパークリエータの作品や発言などをまとめた。
映画を見ながら、蓑手教諭の場合は黒板にメモ。スーパークリエータの作品や発言などをまとめた。

 鑑賞後、改めて子どもたちに「プログラミングについてのイメージはどう変わったか」と感想を聞いていく。蓑手教諭の授業では「思っていたよりできそう」「自分でもつくってみたい」といった声が上がった。

 授業の最後には、スーパークリエータへの質問や感想、応援などを手紙に書くことでまとめとし、時間があれば書いた手紙を発表してもらう。ここまでくると、「プログラミングの魅力に触れ、意欲を持っている」「社会について考えている」などの姿も見られ、ねらいを達成しているかどうかの評価もできる。

 蓑手教諭はこの授業の締め方について、「ここまでで大体45分になるので、『これからプログラミングを学んでいく』と意識させるところまでつながればよい」と話す。さらに「今後使う教材が決まっていれば、具体例として『みんなでこんな教材を使っていくよ』と意欲をつけて終わることで、次の活動がより有意義なものになる」とアドバイスした。

映画を見た子どもたちの感想。素直な感動や、スーパークリエータへの興味が伝わってくる。 映画を見た子どもたちの感想。素直な感動や、スーパークリエータへの興味が伝わってくる。
映画を見た子どもたちの感想。素直な感動や、スーパークリエータへの興味が伝わってくる。

 感想を読んだ蓑手教諭は、「前原小学校ではプログラミングをそれなりに経験しているが、映画を見たことで『こんなに子どもたちに影響があるんだ』と驚いた。私が普段話していることと重なる部分もあったが、私が言うより伝わったのかもしれない」と語る。

 また、プログラミングをやり込んでいる児童からは、より具体的な質問が上がり、スーパークリエータという存在がいることを知って触発されたエピソードも紹介された。

 前原小学校の授業では、蓑手教諭がスーパークリエータとつながりがあったため、これらの感想や質問を実際に届けた。「子どもたちにとって大切なことは、自分たちが書いた感想を実際に読んでもらうこと」として、授業でも重視しているという。

絵を描くのが好きな児童からの質問に対し、スーパークリエータからは「何でもできるよ。コラボレーションすることが大事」と返事があった。そして「伝えることで、また夢を感じられるのでは」と蓑手教諭は話した。
絵を描くのが好きな児童からの質問に対し、スーパークリエータからは「何でもできるよ。コラボレーションすることが大事」と返事があった。そして「伝えることで、また夢を感じられるのでは」と蓑手教諭は話した。

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身近な目標によって触発されるビジョナリー・ラーニング

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

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