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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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イベントレポート(オンライン教育)

魅力的なオンライン授業をつくる「7つのコツ」とは? 慶應義塾大学の井庭崇教授が実践をもとに解説

「魅力的なオンライン授業づくりの工夫・コツを語るオンラインセミナー」レポート【授業実施編】


 学校や学習塾などでオンライン授業を取り入れることがスタンダードになりつつある現在、オンラインの環境づくりの次に考えるべきなのは、「いかに魅力的なオンライン授業を行うか」ということだ。ほぼ前例のない取り組みのため、全国の学校や先生が試行錯誤を重ねて進めている段階と言える。そんな中、意欲的にオンライン教育へ取り組む、慶應義塾大学 総合政策学部の井庭崇教授が9月6日、「魅力的なオンライン授業づくりの工夫・コツを語る」をテーマにオンラインセミナーを開催。授業やゼミでの実践と学生へのアンケート結果をもとに、豊富なアイデアを披露した。本レポートでは【授業実施編】【ふりかえり編】の2回にわたり、オンライン授業で取り入れたいコツを、それぞれ紹介していく。この【授業実施編】では、オンライン授業の設計・運営から、ツールの有効的な使い方、効果的なアンケート回収方法まで、7つのコツを解説する。

慶應義塾大学 総合政策学部の井庭崇教授。慶應義塾大学クリエイティブ・ラーニング・ラボ代表のほか、クリエイティブシフトの代表取締役社長も務め、「アクティブ・ラーニング支援パターン・カード」「探究パターン・カード」なども手掛けている。 慶應義塾大学 総合政策学部の井庭崇教授。慶應義塾大学クリエイティブ・ラーニング・ラボ代表のほか、クリエイティブシフトの代表取締役社長も務め、「アクティブ・ラーニング支援パターン・カード」「探究パターン・カード」なども手掛けている。
慶應義塾大学 総合政策学部の井庭崇教授。慶應義塾大学クリエイティブ・ラーニング・ラボ代表のほか、クリエイティブシフトの代表取締役社長も務め、「アクティブ・ラーニング支援パターン・カード」「探究パターン・カード」なども手掛けている。

【コツ その1】オンライン会議ツールを使い分ける

 まず、オンライン授業のツールとして、井庭教授は「Zoom」の「ミーティング」と「ウェビナー」それぞれの特徴を解説した。

 講演会などで使われているウェビナーは「登壇者(パネリスト)だけが画面に表示されるため、大規模イベントに適している。参加者のビデオは表示も記録もされず、プライバシーに配慮できるので、録画を公開しやすい」と、井庭教授はメリットを話す。

 一方、通常の授業に適しているのは、参加者の顔が見えるミーティングだ。井庭教授は、学生に「嫌な人や環境的に難しい人を除いて、良かったらビデオをオンにして」と呼びかけている。ミーティングのメリットとしては、参加者全員が同じ大きさで画面に表示されるので、みんなで参加している気持ちになり、インタラクティブな場づくりができることにある。学生からも井庭教授の授業は「ビデオをオンにしている人が多いので、授業をみんなで一緒に受けていると感じられていい」といった声が上がったという。さらにZoomであれば、「ブレイクアウトルーム」を活用して、小グループに分かれて話し合いができることも大きい。

 授業の規模や内容、目的によって、こうしたツールや機能を使い分けることで、オンラインならではの効果をねらうことができる。

Zoomを使ったオンライン授業のメリット。ミーティングであれば、参加者全員の顔を表示できる。
Zoomを使ったオンライン授業のメリット。ミーティングであれば、参加者全員の顔を表示できる。

【コツ その2】「ラジオ番組スタイル」で授業をする

 井庭教授は、「リアルでやっていた授業をオンラインで『再現』するのではなく、オンラインならではの授業を『再発明』するつもりで、オンライン授業をつくることが大事」だと話す。多くの教員が実際にやってみて感じる、オンライン授業とリアルの授業との最も大きな違いは、学生・生徒の反応が感じられないことにある。そのためリアルの授業に慣れている人ほど、やりにくいと感じる。そこで、オンライン授業への臨み方を工夫する必要がある。井庭教授がおすすめするのは、オンライン授業を「ラジオ・パーソナリティの気持ちになって行う」ということだ。

 「ラジオ番組では、パーソナリティはずっとリスナーに語りかけている。リスナーはその場で反応しないけれど、確かに向こう側にいて、反応もあとで返ってくる。リアルな教室と同じ感覚でオンライン授業をするのではなく、ラジオ番組をやっているような気持ちでいると、かなりやりやすくなる」(井庭教授)

 井庭教授の場合は、最初の授業で学生に「この授業はラジオ番組スタイルで行う」と宣言したという。

 「『みなさんのお便り、つまり宿題やチャットの書き込み、メールなどによって成り立っている』と話して、授業中はチャットに書き込んでもらい、それも適宜パーソナリティ(教員)が取り上げていくスタイルにした。リアルタイムに拾える場合はどんどん拾うが、次回に持ち越す場合もある」(井庭教授)

学生からの「お便り」を募り、チャットの書き込みも取り上げつつ授業を進める。
学生からの「お便り」を募り、チャットの書き込みも取り上げつつ授業を進める。

 可能であれば、副担当の教員やTA(Teaching Assistant)との複数人体制で行うと、サブパーソナリティや番組スタッフのような存在として、チャットに書き込まれた中から質問をピックアップしてもらうことができるので、より進めやすいという。口頭で発言することにハードルの高さを感じている学生も、チャットだと感想や意見を伝えやすくなる。

学生からメールで届いた「お便り」の1つ。
学生からメールで届いた「お便り」の1つ。

 学生からは「親しみやすく、とても楽しい」「新鮮」「リアルタイムで拾ってくれるのがいい」「みんなで授業をつくっている感じがした」「コメントするのが楽しい」といった肯定的な意見が多く寄せられた。一方では、「ラジオにしては早口で聞くのが大変」「お便りはメールだと送りづらい」といった意見もあった。ラジオ番組スタイルの授業も、まだまだ進化の余地がありそうだ。

次のページ
【コツ その3】参加者同士の交流の機会を設ける

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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