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イベントレポート(EdTech動向)

「10人に1台」の環境からオンライン教育を実践――あきらめない気持ちが新しい学びにつながった尼崎市の事例

「尼崎市教育長に聞く~尼崎市のオンライン教育の取組」レポート

 超教育協会は、5月から自治体や民間教育におけるオンライン教育の取り組みを紹介する「オンラインセミナー」を行っている。6月3日に開催された第3回では、「尼崎市教育長に聞く~尼崎市のオンライン教育の取組」と題し、兵庫県尼崎市教育委員会教育長の松本眞氏が、尼崎市の休校時における市教委と学校との奮闘を語った。

セミナーのファシリテーターを務める超教育協会理事長の石戸奈々子氏(左)、兵庫県尼崎市教育長の松本眞氏(右)。
セミナーのファシリテーターを務める超教育協会理事長の石戸奈々子氏(左)、兵庫県尼崎市教育長の松本眞氏(右)。

「10人に1台」のICT環境からスタート

 兵庫県尼崎市は人口45万人の中核都市で、兵庫県の中では最も大阪寄りに位置し多くの工場がある。「工業都市として発展してきたこともあり、地方から働きに出てきた勤労青年も多く、働きながら学ぶという環境を大事にしてきた」と、松本氏は話す。

松本氏は2017年度まで文部科学省に勤め、尼崎市教育委員会教育長の任務は3年目となる。
松本氏は2017年度まで文部科学省に勤め、尼崎市教育委員会教育長の任務は3年目となる。
幼稚園から高校まで計71校園を有している尼崎市。
幼稚園から高校まで計71校園を有している尼崎市。

 松本氏によると、尼崎市内の学校のICT環境は兵庫県内で下から数えて5~6番目と、あまり整備されていない状況だという。沿岸部の工業都市のため地盤沈下対策などに経費がかかり、なかなかICT環境の整備にまで手が回らない。結果としては、教育用コンピューターの1人あたりの台数は約10人に1台で、兵庫県の平均である6.1人に1台(全国41位)と比較しても低い水準となっている。

尼崎市のICT環境の課題。市内の中学校では、教室までの有線LAN環境や大型テレビもなく、パソコン室の40台のコンピューターを使用している。 尼崎市のICT環境の課題。市内の中学校では、教室までの有線LAN環境や大型テレビもなく、パソコン室の40台のコンピューターを使用している。
尼崎市のICT環境の課題。市内の中学校では、教室までの有線LAN環境や大型テレビもなく、パソコン室の40台のコンピューターを使用している。
松本氏は2018年の就任直後より、予算や人員確保を開始。ICT環境整備をスタートさせた。
松本氏は2018年の就任直後より、予算や人員確保を開始。ICT環境整備をスタートさせた。

休校中の危機感の中、ICT活用のメリットとデメリットを整理

 そんな中、臨時休校の要請があり「休校期間をどうするかが大きな問題だった」と松本氏は振り返り、5月までの3カ月間の取り組みについて、悩みながら試行錯誤した経緯を共有した。

 「まず、3月はほとんどの学校が学習面で『復習』の段階に入っており、少し早い春休みという認識の人が多かった。この時期の学校で主な焦点となっていたのは、間近に控えた卒業式や成績処理、学校預かりや感染者が出た場合の対応などだった」と松本氏は話す。

 そして4月7日、全国へ「緊急事態宣言」が発動される。「4月の半ばには『5月の再開も難しいとなった際、学習支援を本格的に考えなければまずい』という『危機感』が出てきた。どの自治体も学習補助を本気で考えていたが、横浜市など4月初頭かいち早く動いている教育委員会もあり、内心は焦っていた」と松本氏は当時の心境を語った。

4月の学校再開はぎりぎりまで議論したが、休校を決めた直後に緊急事態宣言が出た。
4月の学校再開はぎりぎりまで議論したが、休校を決めた直後に緊急事態宣言が出た。

 そこで、松本氏はICT活用のデメリットとメリットを整理した。

 「動画作成は魅力的だが、コンテンツと質の確保をするためには多大な労力がかかる上、果たして現場が使ってくれるかわからない」という懸念のもと、「民間のコンテンツを集めたほうが良いと判断した」と話す。そして、4月前半は既存のコンテンツを使い、いわゆる「動画のまとめサイト」を作成し、教育委員会のWebサイト内で公開した。

尼崎市教育委員会が4月に用意した動画コンテンツの一部。ほかの自治体の動画をはじめ、すでにあるコンテンツをまとめることで、迅速に準備することができた。 尼崎市教育委員会が4月に用意した動画コンテンツの一部。ほかの自治体の動画をはじめ、すでにあるコンテンツをまとめることで、迅速に準備することができた。
尼崎市教育委員会が4月に用意した動画コンテンツの一部。ほかの自治体の動画をはじめ、すでにあるコンテンツをまとめることで、迅速に準備することができた。

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あきらめない思いが、オンライン授業への展開につながった

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、プログラミング教育やICT教育、中学受験、スマートトイ、育児などの分野を中心に、取材・執筆を行っている。また、渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足し、地域の子ども達に向けたプログラミング体験教室などを開催している。一児の...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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