フィンランドの学校への影響
既にご存じの方も多いとは思いますが、フィンランドは教育ICT活用の先進国。1990年代のICT活用改革により、コロナウイルスの影響前からすでに、すべての学校において生徒1人1台のノートパソコンかタブレットのデバイスが普及していて、学校内のWi-Fiも完備されていました。授業では電子黒板が使用され(小学校の電子黒板導入率は100%)、先生はパソコンで教材を投影したり、YouTubeの映像などを活用したりしています。
生徒も電子黒板やタブレットに触れながら学びを進めていました。学校と家庭の情報やり取りには「Wilma」というシステムを利用しています。
Wilmaとは?
出欠状況、成績確認、教科登録、宿題連絡、スケジュール確認などができるオンライン上のシステムです。学校に関する諸連絡が届き、先生への質問が可能な連絡機能もついています。
そんなフィンランドの学校ですが、今回の新型コロナウイルスの影響により、今までとは全く異なるレベルでのICT活用が求められました。
ICT先進国フィンランドの先生たちは、この未知の状況に対してどのような対応を行ったのでしょうか? この記事では、新型コロナ影響下におけるフィンランドの総合学校(小学校、中学校)の先生たちがどのようにICTを活用していったのか、インタビューした内容を紹介していきます。
まず始めに、フィンランドの学校現場への影響を簡単に説明します。
フィンランドでも、新型コロナウイルスの感染の拡大を受け、緊急事態宣言が発令されました(3月16日)。この発令を受け、学校機関は学校を一時閉鎖。その2日後の3月18日から、授業をすべて遠隔に切り替えることとなります。
地方自治体は遠隔授業(distance learning)に関するガイドラインを作成し、各学校に配布。各学校は、対応方針を決め、順次切り替えていきます。
ガイドラインの主なポイント
- 3月18日から遠隔授業に切り替える
- 遠隔授業で毎日の学習環境を継続させること
- 無理ない方法で授業を実施してほしい
- 授業方法は、各学校に任せるということ
自由な発想でICT活用を求められた先生たち
現場の先生の話によると、遠隔授業の導入ガイドラインを受け、各先生が自由に授業の組み立て(それに伴うICTの活用)を検討していったとのこと。そのため、先生によってはICTの活用を課題の指示出しと提出確認から始めたり、早々に授業のLIVE配信をしたり、その内容はさまざまだったようです。
先述のように普通の教室の中でICT活用はしていましたが、小中学校における遠隔での授業は、従来はほぼなかったため、先生たちも試行錯誤した様子でした。
5月14日からガイドラインに従って登校を再開するなど、執筆時から現況が変わっているフィンランドですが、日本の教育現場でも参考になる部分があればと思い、3月からのオンラインでのICT活用の事例を紹介します。
註:遠隔授業(distance learning)とオンライン授業
遠隔授業というと、ライブ配信の授業=オンライン授業を思い浮かべるかもしれませんが、フィンランド政府からの発表は、「なんらかの方法で授業を対面でない形、遠隔で続けてください」というもの。必ずしもZoomなどを使ったライブ授業ではなく、児童生徒が通学しない形で授業を続けることを指していました。
日本では「オンライン授業」という表現が多く使われていますが、主にリアルタイムの、ライブ配信型の授業を指すことが多いため、それと区別するために本連載では現地の“distance learning”という通称を「遠隔授業」と訳して使用しています。