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必修化決定前からプログラミング教育をスタート…墨田区立隅田小の先生が、NPOや企業と連携した5年間で得たこと

小学校での「プログラミング教育」どうするの? 先生の悩みをトップランナーたちとひも解く 第2回

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2020/01/15 07:00

 2020年の小学校でのプログラミング教育スタートまであと数か月となる一方で、現場の先生からは「どうしたらいいか分からない」といった不安な声も聞こえてくる。EdTechZineではプログラミング教育支援などのトップランナーにお話を聞き、小学校でのプログラミング教育導入のヒントを探っていく。今回は、2015年から外部の団体・企業と協力してプログラミング教育に取り組んできた墨田区立隅田小学校の例を紹介。当初はほとんど情報がなかったにもかかわらず、NPOや企業との協力と授業での試行錯誤を重ねたことによって、先生自身がプログラミング教育のノウハウを蓄え、同区におけるモデルとしても注目されている。授業をけん引してきた西中克之先生と、その取り組みを支えるNPO法人CANVAS、株式会社セールスフォース・ドットコムの各担当者に話を聞いた。

プログラミング教育が話題になる前から始めていた

 ――西中先生がプログラミングに取り組むようになったきっかけを教えてください。

 隅田小学校 西中克之先生(以下、隅/西中):プログラミングに取り組み始めたきっかけは、2014年に区の研修でCANVASさんと出会ったことです。初めて学校でプログラミングを行ったのは2015年のクラブ活動でした。その後、2016年には6年生で、2017年からは5、6年生でプログラミングに取り組んでいます。当初からCANVASの寺田さんと二人三脚で取り組んでいます。

隅田小学校教員 西中克之先生
隅田小学校教員 西中克之先生

 CANVAS 寺田篤生氏(以下、C/寺田):2014年当時、CANVASの事務所が墨田区にありご縁ができました。2015年からはSalesforceさんと共にサポートを始め現在に至っています。

NPO法人CANVAS

 子どもたちの創造的な学びの場を、学校・教育関係者、行政、企業等と協力しながら支援・提供する団体。プログラミング教育の支援にも取り組み、全国の教育委員会や学校と連携しながら指導者育成や出張授業、カリキュラム提供などを行っている。

CANVAS ディレクター 寺田篤生氏
CANVAS ディレクター 寺田篤生氏

 ――2015年というと、まだ、公教育でのプログラミングが話題になっていない頃ですね。西中先生はもともとプログラミングのご経験があったのですか?

 隅/西中:いえ、プログラミングの経験は全くありません。ただ、iPadの活用などICTには興味がありました。墨田区に異動してきたら区がICT活用に熱心で、研修でたまたまプログラミングを知ったことがきっかけになりました。

 ――もともとプログラミングに取り組んでこられたCANVASさんとの出会いがあってこそのスタートだったのですね。具体的には何を教材にしたのですか?

 隅/西中:Hour of Codeでビジュアルプログラミングに慣れてから、Scratchで見本のプログラムに沿った制作や、自由制作に取り組んでいます。学校の作品展でパソコンを並べてScratchの作品を展示したこともありました。

通信やPCのトラブル、ひとりでは解決できなかった――Salesforceスタッフの支援

 ――実際に授業で取り組んできた中で大変だったことはなんですか?

 隅/西中:通信とパソコンのトラブルですね。通信環境が非常に悪いため、例えば最新のScratchのWeb版を使いたいと思っても、クラス全員のアクセスが集中すると通信が滞り苦労しました。オフライン版も使いましたが、現在は通信設備が少し増強されたこともあり、最初のアクセス時にクラス内で時間差をつけるなどの工夫をしてWeb版を利用しています。

 小学校の教室ではパソコンやアプリケーションの反応が悪いだけで子どもたちの集中力が失われるのが現実です。通信の問題や、授業中の個別のパソコンのトラブルなどには、とても私ひとりでは対応できなかったと感じています。

 C/寺田:授業にはCANVASから私が入っていただけでなく、Salesforceさんからのサポートスタッフが毎回4~5人参加していました。Salesforceさんのサポート力は大きかったです。

 セールスフォース・ドットコム 丸野遥香氏(以下、S/丸野):Salesforceでは、有給休暇を使わずに就業時間に行えるボランティア活動時間の制度があります。社内でボランティアを募って、サポートスタッフを確保しています。

 ――それは素晴らしい制度ですね。多くの学校では人手が足りず、人を雇うお金はなく、保護者は仕事を持っていて忙しいという現実があります。

 S/丸野:Salesforceには、1-1-1モデルという社会貢献活動の理念があり、社員の就業時間の1%、株式の1%、製品の1%を社会に還元しようという取り組みをしています。現在「Future Readyプログラム」という枠組みでNPOの支援をしていますが、そのなかの「Tech Ready」というSTEM教育分野の支援としてCANVASさんを助成しています。

Salesforce.org プログラムマネージャー 丸野遥香氏
セールスフォース・ドットコム プログラムマネージャー 丸野遥香氏

 ――なるほど。社会貢献をする常識がカルチャーだけでなく制度上も根付いていて、人、物、お金が動いているわけですね。

 S/丸野:ボランティアに参加したことをきっかけに、子どもを持つ社員が、自分の子の学校でも何かできたらと、プログラミングの体験イベントを開催する事例もあります。その際は、隅田小学校の取り組みが良いモデルとなっています。

 CANVAS 土橋遊氏:CANVASではプログラミング教育に関して学校や自治体からよく相談をいただきます。いきなり教科科目から導入するのではなく、クラブ活動→総合的な学習の時間と順を追ってプログラミング教育を導入してきました。隅田小学校の事例は、他の学校や自治体にも参考になることが多いです。


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著者プロフィール

  • 狩野 さやか(カノウ サヤカ)

     株式会社Studio947のデザイナー、ライター。ウェブサイトやアプリのデザイン・制作、技術書籍の執筆に携わる。自社で「知りたい!プログラミングツール図鑑」「ICT toolbox」を運営し、子ども向けプログラミングやICT教育について情報発信している。著書に『見た目にこだわる Jimdo入門』(...

  • 阿部 崇(アベ タカシ)

     外資系IT企業で、コンピュータシステムのアーキテクチャをデザインする仕事に従事。2017年度より区立中学校のPTA会長に就任。教育委員会や教師の方々と接する機会も多く、これまでの経験を活かして、プログラミング教育を広げていく活動をすすめている。

  • 岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

    2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

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