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小学校での「プログラミング教育」どうするの? 先生の悩みをトップランナーたちとひも解く

地域社会と連携したプログラミング教育の在り方とは?――CoderDojo Japanの宮島衣瑛氏に聞く、現場の課題と理想

小学校での「プログラミング教育」どうするの? 先生の悩みをトップランナーたちとひも解く 第4回(後編)

 いよいよ、今年2020年度より小学校でのプログラミング教育必修化がスタートする。しかし、いまだ試行錯誤している学校現場も少なくない。このコーナーでは、プログラミング教育支援を行っているトップランナーにお話を聞き、小学校でのプログラミング教育導入のヒントを探っていく。今回は全国の子どもたちが参加できる無料のプログラミングクラブ「CoderDojo」の日本での運営をサポートする一般社団法人CoderDojo Japan理事の宮島衣瑛氏に話を聞いた。前編ではCoderDojo Kashiwaとして、千葉県市内の小学校でのプログラミング教育のサポートを行った経験を語っていただいた。後編では、柏市のプログラミング教育が成功したポイントと、見えてきた現場の課題について語ってくれた。

柏市のプログラミング教育が成功した3つのポイント

一般社団法人 CoderDojo Japan理事であり、CoderDojo Kashiwaの運営を行う宮島衣瑛(きりえ)氏。現役大学生でありながら、学校へのプログラミング教育支援などを行う株式会社Innovation Powerを起業し、代表取締役を務めている。
一般社団法人 CoderDojo Japan理事であり、CoderDojo Kashiwaの運営を行う宮島衣瑛(きりえ)氏。現役大学生でありながら、学校へのプログラミング教育支援などを行う株式会社Innovation Powerを起業し、代表取締役を務めている。

 ――柏市はCoderDojoとの連携をはじめ、早期からのプログラミング教育が成功した好例だと思いますが、その理由は何だったのでしょうか。

 宮島:最大のポイントは、柏市の教育委員会にパッションがあったことだと思います。

 私が参加した当時、柏市の教育委員会でプログラミング教育を進めていたのが、学校教育部学校教育課の副参事である佐和伸明さん(現在は柏市立手賀東小学校校長)でした。プログラミング教育に対してとても熱意を持っていらして、そのうえ私のような大学生を起用するという柔軟な思想をお持ちの方でした。柏市では、「Scratch」をやることに決定したため、私はアドバイザーとして指導案や、市民の方へアピールする教育イベントなどをサポートしました。

 また、成功した2つめのポイントは、プログラミング教育を支えた研究会の存在です。通常の部会とは別に、先生方が任意で参加できる柏メディア教育研究会というものがあります。

 また3つめの理由として、柏市にはもともとICT支援員の組織があったことです。ICT支援員が学校を巡回し、担任とICTコーディネーターがチームティーチングでプログラミング授業も行っています。プログラミングだけでなく、情報モラルや「Word」などの基本的なアプリの操作などにおいて子どもたちをサポートすることで、先生が異動されても、変わらず同じ授業を行うことができます。

 また、柏市では「すべての担任の先生ができるように、最低限ここまでしよう」というスタンダードカリキュラムを教育委員会が作成し、それをもとに授業を行う予定です。

 こうした3つの要素がそろったことが、柏市のプログラミング教育を支えているのだと思います。

 ――柏市では30年前からプログラミング教育に着手していただけあって、本当に環境が整っていたんですね。他の自治体からの反応などもあるのでしょうか。

 宮島:そうですね。日本全国の自治体や企業、研究者の方が見学に来られています。そういった意味では、柏市のケースが生かされているのかなと思います。現在も、全校でのプログラミング教育を実施した2017年に比べると落ち着いていますが、着々と進んでいます。

 ――まさに、自体と地域が協力した理想的なロールモデルと言えますね。

 宮島:みんな真似すればいいのにと思いますね(笑)。

プログラミングと教育両方のプロがいない現状、歩み寄ることが大事

 ――公教育に関わってみて、プログラミング教育についてどのような課題を、現場の先生は感じていると思われましたか。

 宮島:まだまだ課題以前の問題で、とりあえず明日の授業といった印象です。私は小学校の教員免許を取得する一環で教育実習に行きましたが、理想論を並べてもどうしようもない。限られた時間や予算のなかで準備しているので仕方のないことではありますが、「社会」と「教育」の問題について考えている人は少ないと感じました。

 ――以前、EdTechZineで学校の先生向けにアンケートをとってみたところ、「プログラミング教育をどのように授業を取り入れたらよいかわからない」との意見が多かったこともあり、「プログラミング的思考」をどう考えたらよいのか、どんな授業をしたらよいのかといったところでつまずいている先生が多い印象を受けました。そのあたりは、宮島さんはどうお考えですか。

 宮島:まず、「なぜ、プログラミング教育をやるのか」ということから考えていく必要があります。現在ではそろばんを日常的に使わなくなったように、これからはコンピュータを使っていくのが当たり前の時代になっているのです。

 でも、コンピュータとプログラミングという二段構えのわからなさもありますし、先生方の「どうやったらいいのかわからない」といった現場のとまどいは、何が悪いというわけではないと思っています。

 私は、根本の原因は大学の教職課程にあると思っています。大学でプログラミング教育を教えないというより、教えられる人がいないんです。そのため、プログラミング教育を上っ面でなく、理論ベースで教えられる人をつくっていくことがマストだと考えています。

 私は現在、学習院大学の学生ですが、年に一度2コマほどプログラミング教育を同じ大学の4年生に教えています。これも私ありきでやっていることで、いなかったらどうするのか……と考えると、自分がいなくても恒久的にまわるものをつくっていきたいと思っています。すべて一発で解決するのは不可能ですが、できる範囲でできる人がコツコツとやっていくしかありません。

 ――なるほど。まさに、できることを今実践されているんですね。現在は学校で教える先生は、プログラミング教育のベースの知識がまったくないというわけですね。

 宮島:そうです。でも、そうした「わからない」と思っている先生でも、プログラミングの研修を受けると、「意外にプログラミングは難しくない」といったことがわかっていただける。そして、何よりもプログラミングは楽しいということがわかるんです。それは、研修での先生の表情が変わって、笑顔になっていくことでも実感しています。

 そのうえで、実際に学校の授業でどうやるかについては、教えるプロである先生と一緒に考えていきます。でも、一方で「プログラミングに詳しくない先生が、プログラミングを教えるのか」といった批判もありますが、プログラミングと教育両方のプロがいないのが現状です。だからこそ、お互いが歩み寄っていかなければいけないんです。

 先生がまず「知る努力をする」ことは、プログラミング教育を行っていくうえでマストだと思います。実際に、一度プログラミングをやってみれば、そんなに難しくないとはわかっていただけると思いますので。

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現場のプログラミング教育の課題を打開するには?

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


岡田 果子(編集部)(オカダカコ)

2017年7月よりEdTechZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。最近は英語学習のアプリやオンライン講座に興味がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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