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テクノロジーが全世界の教育に与える影響とは? STEM教育に力を入れるレノボ、識者に現状の課題と対応策を聞く

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2019/12/17 07:00

 全世界で100万人がSTEM教育をはじめITを使った環境で教育を受けられることを目標に財団を設立するなど、EdTech領域に力を入れているパソコン世界大手の中国・レノボ。近年、スマートテクノロジーの普及により、開発途上国でも先進国と同等の教育コンテンツ活用が可能になるなど、グローバルに教育の「機会均等」が進む中、レノボが感じる各国の課題と対応策は何なのか。また、日本の保護者や教育関係者は、今後どのような教育の機会を子どもたちに与えれば良いのだろうか? 同社で行った教育分野における国際的な意識調査をもとに、レノボでPC製品やスマートデバイス製品のマーケティングおよびユーザー体験向上を担うディリップ・バティア副社長に話を伺った。

教育においてテクノロジーが重要と考える人の割合は国ごとに差が、日本は10カ国中最下位に

 中国・レノボは、世界10カ国(日本、アメリカ、メキシコ、ブラジル、中国、インド、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア)のべ1万5226人を対象に、テクノロジーが日常生活と社会に与えるインパクトについての国際調査を実施し、その中から教育分野における調査結果を今年8月に発表した。

 同調査では、75%の保護者が、子どもたちは学校の宿題を保護者に手伝ってもらわずにネットで調べていると答えたことが明らかになり、この傾向が最も顕著に見られたのはインド(89%)と中国(85%)だった。いずれの国でも近年子どもの学習を支援するためにテクノロジーを利用する保護者が増加している一方、この傾向が最も低かったのはドイツ(54%)で、日本は10カ国中5番目(70%)だった。

 また、日本では「教育における将来の課題を解決するためにテクノロジーが『非常に重要』と考える回答者が(29%)と各国中最低」であり、かつ「子どもの宿題の手伝いにスマートデバイスやネットを使ったことはない」と回答した保護者が調査国中最多といった結果になった。この結果を受け、現状見えている各国の課題について、レノボではどのように考えているのだろうか?

テクノロジーが各国の教育に与える影響とは? 西洋諸国では懸念の声

 ――今回、どういった目的や経緯で、教育分野における意識調査を各国で実施されたのかを教えてください。

 レノボでは「Smarter technology for all(皆が使えるよりスマートなテクノロジー)」をビジョンに掲げ、教育の世界においてエンドツーエンドでソリューションを提供しています。具体的には、パソコンだけでなくスマートデバイスやバーチャルリアリティー(以下、VR)が体験できるヘッドセットなどのテクノロジーを学校に提供し、子どもたちが個別に学習できるようにするほか、先生たちのプラットフォームになるようなモニターの提供など双方的なサポートを行っています。今回は、教育分野においてテクノロジーがどういったインパクトを全世界の人々の生活に与えているのかを知るため、調査を行いました。

Lenovo Corporation, Vice President of Global Marketing, User and Customer Experience, PC&SD, Dilip Bhatia(ディリップ・バティア)氏
Lenovo Corporation, Vice President of Global Marketing, User and Customer Experience, PC&SD, Dilip Bhatia(ディリップ・バティア)氏

 ――同調査において、インドと中国では最も「子どもの学習を支援するためにテクノロジーを利用している」と回答した人が多い結果となりました。一方で、ドイツやアメリカからの賛同が低い結果になった根本的な理由は何だと思いますか?

 全世界において、子どもたちの約4分の3はテクノロジーを日常の中で使ってさまざまなことを自分で調べていますし、加えて約4分の3の保護者も生活と仕事のバランスがテクノロジーを通して良くなっていると感じています。しかし、過剰なテクノロジーへの依存は、子どもたちの社会的なスキルを育むことを阻害するという懸念もされています。

 中国やインド、ブラジルといった新興諸国では、テクノロジーへの有益性を認める一方で、西洋諸国においては心配の声が上がっているのも事実です。インドやブラジルなどは比較的近年になってからテクノロジーの進歩が見られるなど、まだ目新しい期待感を持たれていますが、ドイツやアメリカなどの西洋諸国に関しては、以前から技術が広まっており、テクノロジーに触れている期間が長いため、社会的なスキルの育みに懸念があると感じる人が多いことが主な理由だと考えています。

 ――教育現場でテクノロジーを使う最大のメリットは何でしょうか? また、同調査では85%の保護者が「スマートデバイスやネットの使い過ぎが子どもを依存状態にする」と考えるなど、デメリットと捉えているケースも多いようです。これに対してはどのようにお考えでしょうか。

 まず、教育におけるテクノロジーの最大のメリットは、学びの機会を均一に同一に提供できることだと考えています。私が子どもの頃、何かを知りたい、学びたいときは辞典を開くほか、両親や叔父・叔母に尋ねることでしか得られませんでした。しかし、今の子どもたちは、テクノロジーがあれば、いつでもどこでも情報にアクセスすることができる。これはインドやブラジルに限らず、日本やドイツ、その他の国でも共通のことで、大人に頼らなくても学べる時代になりました。

 具体的なメリットとしては、例えばマチュピチュの遺跡について学校の授業で学んでいるときに、それを教科書で読むだけでなく、VRのヘッドセットを使って、実際にそこへ行く「没入的な体験」をすることで、子どもたちの学習効果をより底上げすることができます。

 一方、このようなテクノロジーを利用した学びの体験は、良くも悪くも、子どもたちの記憶に残りやすく、そして過剰なテクノロジーへの依存は、社会的なスキルを育むことを阻害する可能性があります。これに対し、保護者や先生は上手にバランスを取っていくことが必要です。子どもたちの社会的なスキル向上のため、積極的にチームやグループを組んでプロジェクトに取り組ませるなど、そういったことが重要になってきます。

 ――具体的に、どのように「バランス」を取っていけば良いのでしょうか? また、日本の場合、VRは「子どもたちの目に良くない」といった保護者からの心配の声も少なくありません。これに対してはどうお考えですか?

 これは私自身の個人的な例ですが、11歳の息子が「パソコンでゲームをしたい」ということで、週末に1時間だけ許しています。ただし、友だちと外でバスケットボールやフットボールなどで遊ぶことに関しては、制限をもうけていません。

 また、VRが「子どもたちの目に良くない」といった意見ですが、まだ新しい製品なのでさまざまなチャンスや機会はあるものの、こちらもパソコンと同様、バランスを取っていく必要があります。使用する場合は、15分や30分などのように、時間を決めることも大事です。


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