参加したパネリストは全部で3名。micro:bitを理科の授業などに取り入れて、プログラミング教育を実践している川越市立新宿小学校の鈴谷大輔教諭、ソニーでMESHプロジェクトを担当する萩原丈博氏、アーテックでアーテックロボの開発、教材企画を行う濵田大地氏らが、それぞれの教材としての活用事例や特徴を紹介した。モデレーターは、青山学院大学大学院特任教授 阿部和広氏が担当した。
micro:bit:コストパフォーマンスの高さと世界規模のリソースコミュニティを持つ
ディスカッションに入る前、モデレーターに促され、パネリスト3名が授業で使っている教材、授業で作られた作品など「自慢の一品」を紹介する。この過程で、micro:bit、MESH、アーテックロボそれぞれの特徴的な機能が説明された。
新宿小学校の鈴谷氏は、micro:bitを理科の電気回路の授業で使っており、電気回路の基本に加え、LEDを点灯、点滅させるといったプログラミングにつながるカリキュラムを実践している。
鈴谷氏の自慢の一品は、11個のmicro:bitを使った投票システムだ。といっても遊び要素をふんだんに取り入れたもの。10個のmicro:bitのスイッチを押すと、通信機能によって集計用micro:bitがその数をカウントする。カウントが10個以上(投票が10票以上)になるとファンファーレが鳴るというもの。「仮装大賞の合格ボタン」と言えばわかる人にはわかるだろう。
micro:bitの特徴は「コストパフォーマンス」だと鈴谷氏は言う。単価が安いので今回紹介したシステムのように多数のmicro:bitを使った授業も実現できる。小さい本体にLEDマトリックスによる文字ディスプレイを持ち、スイッチやセンサーなどを取り付けることができ、応用範囲が広いことも特徴だ。音も出せるので音楽の授業にも展開可能。世界中で使われているため、多言語対応も進んでいる。公立小学校でも帰国子女や海外の児童が増えており、日本語が苦手な児童も積極的に参加できるといったメリットもある。
MESH:直観的なプログラミングで身近なものをIoT化
MESHは萩原氏らが開発した、通信機能を持ったセンサーブロック。クラウドファンディングによって製品化を実現した。
持ち寄った自慢の一品は、ギター型の板にセンサーを取り付け、演奏のような動きをするとエレキギターの音が鳴るというもの。
ブロックは光センサー、加速度センサー(モーションセンサー)、温度センサー、ボタン、LEDなど機能によって色分けされている。プログラムはタブレットのアプリから行い、ビジュアルプログラミングが可能。好きなセンサーやスイッチアイコンを画面上のタッチ操作やドラッグ操作によってつなぎ、処理を記述する。
MESHの使いやすさを示すため、萩原氏は、光センサーを箱に入れてふたをあけたら音(魔女の笑い声)がでるというびっくり箱をその場でプログラミングしてみせた。
MESHを使った授業の例として、児童に学校生活でのリスク(危険・困ったこと)を考えさせ、それをMESHで解決させていく動画が紹介された。動画では、子どもたちはMESHを使って、掃除をしないで振り回していると光と声で警告するほうきを開発していた。
アーテックロボ:アナログ・アートの要素を取り込んだ授業が可能
アーテックロボは、4種類のブロックパーツにモーター、スイッチ、センサーなど電子パーツを組み合わせて、さまざまなロボットや機械を作れるという教材だ。ロボットのコントローラーはArduinoを利用し、プログラムはScratchを利用する。新しいモデルでは、Wi-Fi接続、Bluetoothにも対応し、ちょっとしたIoT的なロボットやシステムを作れるという。
アーテックロボは「ロボ」という名前が付いているが、いわゆる動くロボットだけでなく、自動ドアのような機械も作ることができる。そのため、濵田氏は、自慢の一品ではなく、4つのロボットを持ってきた。
1つはピアノロボ。鍵盤はボタンやスイッチではなく赤外線センサーが指の位置を捉えて音階とするもの。また、ブロックを剣の形に組み、センサーやコントローラーを内蔵させゲームコントローラーとしたものと、インターネット接続機能を利用して温度を調べて表示するもの。それから、信号を守るロボットカー。ロボットカーは通信機能を利用して信号機からの情報を読み取り、信号が赤(の情報を発信)だったら停止する。
特徴は、本格的なプログラミングまで学べること。ブロックを使うことで空間認識やメカニカルな知識も得られることだ。ブロックで造形をする点は、サイエンスに寄りがちなSTEM教育に、アナログな機械の動きやアートの要素を盛り込んだSTEAM教育にも役立つことだと濵田氏は言う。