数学Iの空間図形問題にトライ
今回、秋田県立秋田南高等学校で実施されたのは、「数学I」の「正四面体の内接球の半径を求める」という空間図形問題。この問題には、「断面図を利用した解法」と「体積を利用した解法」の2つがあり、それぞれの解法のメリット・デメリットを理解する、というのが目標だ。
まず、クラスは3~4名の8つの班に分けられ、さらに各班は「断面図グループ」「体積グループ」の2つに振り分けられる。各班のテーブルの上には、参考書とホワイトボードのほか、「ClassiNOTE」がインストールされたタブレット(iPad)が置かれた。
授業の流れは、以下の通りだ。
まず、各班は15分間、自分たちが割り当てられた解法で問題を解く。次に「断面図グループ」から「体積グループ」へ、続いて「体積グループ」から「断面図グループ」へと、それぞれの解法を教え合う。その後、2つの解法のメリット・デメリットをクラス全員で話し合い、最後に中村先生が総括を行うというものだ。
今回は生徒たちが授業の前に同様の問題を学んでおく、「反転授業」の形式が取られている。使用されている教材は、中村先生オリジナルの動画教材だ。この動画は、「Classi」の「コンテンツボックス(共有フォルダ機能)」を経由して生徒に共有されている。
空間図形を自在に操れるiPadアプリを使用し、生徒の理解を促進
授業では、さまざまなアプリが効果的に活用されている。そのうちの1つが、空間図形などの作図が簡単に行える、オープンソースの動的数学ツール「GeoGebra」だ。
空間図形問題の難しさは、問題文に登場する図形を、脳内で3次元の立体的なイメージに変換しなければいけない点にある。例えば「体積グループ」の解法は、「正四面体を四分割してできた三角錐の高さと内接球の半径は等しい。よって、三角錐の高さを求めれば内接球の半径がわかる」というアプローチを取る。「GeoGebra」を使えばこうした内容を3次元イメージとして視覚化できるので、理解の手助けになる。
「GeoGebra」はオープンソースの無料ツールのため、以下のような3次元モデルが有志によって数多く一般公開されている。
「GeoGebra」アプリのタイムラインをスワイプすると、空間図形はゆっくりと開閉をくり返す。次に、空間図形自体をスワイプすると、図形は360度あらゆる方向に回転する。空間図形をまるで自分の手で動かしているように扱える点は、iPadならではの良さと言えるだろう。生徒たちは思い思いに3次元モデルを操作し、問題に取り組んでいた。
中村先生は、これらのアプリを授業で利用するメリットを、このように語る。
「ある時、卒業生と話をしていたら、『先生、あの正四面体が“パカッ”って広がるやつ、面白かったよ』って、授業のことをよく覚えていたんです。イメージの難しい空間図形を3次元で見せてあげると、圧倒的にインパクトがあって、強く印象に残るようですね。
定期試験や受験では、もちろんこういったアプリを使うことはできません。ただ、これを一度見ているのと見ていないのとでは、いざ問題にあたった時、空間図形のイメージの仕方がかなり変わってくるのではないかと考えています」
問題を解き終えると、「断面図グループ」と「体積グループ」はそれぞれの解法をお互いに教え合う。