品質ガイドラインで通信の「見える化」を推進
続いて登壇した総務省 総合通信基盤局の津村仁氏は、2024年に固定ブロードバンドの品質測定ガイドラインを策定した経緯と内容を解説した。測定地点・測定期間・公表様式などを明確に定め、各通信事業者に対し、実効速度の「見える化」を促しているという。

これを受けて登壇した、電気通信サービス向上推進協議会の明神浩氏は、ガイドラインの運用支援とともに、固定回線事業者が測定値を適切に公表するための委員会の設置や、自主的な広告表現の見直しを進めていると説明。今後、学校現場でも品質情報に基づく回線選定が可能になるとして期待を示した。

デジタル庁の支援策──教育DXサービスマップと共創コミュニティの活用
続いて登壇したデジタル庁の久芳全晴氏は、教育分野における自治体支援として3つの施策を紹介した。

1つ目は「教育DXサービスマップ」。地域別・通信タイプ別にサービスを一覧・比較できるよう整備されており、通信帯域や価格の目安、提供エリアなどを確認できる。
2つ目は「イベント開催によるマッチング支援」で、今回の自治体ピッチのような取り組みがその一例である。
3つ目は「デジタル改革共創プラットフォーム(通称:共創PF)」で、Slack上で自治体職員同士が自由に情報共有・質疑応答を行える場を提供している。
久芳氏は「単に回線を導入するのではなく、何のためにネットワークを整えるのかを明確にする必要がある」と述べ、段階的な整備と活用が重要であると訴えた。
実効速度重視の考え方と『学校ネットワーク改善ガイドブック』の活用
最後に登壇した文部科学省 初等中等教育局学校情報基盤・教材課のデジタル教材基盤係長の新井亮裕氏は、「『教育DXサービスマップ』の使い方」と『学校のネットワーク改善ガイドブック』について説明。寺島氏が述べたとおり、2月17日にデジタル庁の「教育DXサービスマップ」へ「通信回線(ネットワーク)」のカテゴリーが新たに追加されたことにより、回線種別から絞り込み検索ができるようになったことと、その手順を示した。また、提供エリア・価格・推奨学校規模・ISP有無などを一覧化し、比較ボタンで複数候補を並べて検討可能といった機能も紹介された。

また回線の種別について以下のような説明もなされた。
ベストエフォート型
通信回線を複数のユーザーで共用するため、例えば1Gbpsの契約でもそれは全体のユーザーでの合計の最大帯域(理論値)が1Gbpsであり、実測値は混雑具合で変動するタイプの回線。専用回線ではないので、その分安価になることが多い。
ギャランティ型
突発的な状況を除き、1Gbpsの契約であればその帯域を専有することが可能であるため、実測値と契約帯域がほぼイコールとなるタイプの回線。ただし、専用回線なので価格がやや高い。
バースト型
ベストエフォート側とギャランティ型の特徴を併せ持つ回線。最低限「ここまでの帯域は保証する」一方で、帯域に余裕がある場合はそれよりも多くの帯域を利用できる方式。

『学校のネットワーク改善ガイドブック』については、第1章でネットワークの基礎知識(校内LAN・回線・ISPなどの仕組み)を解説し、第2章で課題把握から対応策に至るプロセス、速度測定方法やユーザー体感調査の具体例を示していると整理。トラフィックが大きくなる原因や同時接続数の増加に対応するには、セッション数やルーター性能、Wi-Fi干渉など、さまざまな視点が必要だという。そして通信速度が低下する原因としては「校内におけるアクセスポイントの周波数帯や設置場所」「回線契約のセッション上限不足」「ルーター処理性能不足」など多岐にわたるため、「原因特定のためのアセスメントが重要」だと述べた。
なお文科省が定める「当面の推奨帯域」は、あくまでも校内LANの入り口での実効速度であり、「ベストエフォート型回線の理論値ではなく、実測で満たす必要がある点に注意してほしい」と強調。さらに「政府が提供する補助や地方財政措置を活用し、自治体担当者は専門知識を身につけながら早期に改善してほしい」と呼びかけ、前半の講演を締めくくった。