これからを生きる子どもたちに必要な「デジタル・シティズンシップ教育」とは?
前回お伝えした通り、日本の教育現場ではこれまで「情報モラル」という考え方として「抑制・禁止・制限」を促す方針が多く存在してきました。端末が教育現場に広く導入されてきた現在においては、情報モラル教育だけでは十分とは言えない状況となっています。そこで、近年注目されているのが「デジタル・シティズンシップ教育」です。
日本の教育現場ではまだ認知度が高くない「デジタル・シティズンシップ教育」は、これからの社会を担っていく子どもたちが「デジタル社会における『善き市民』とは何か」を学ぶ教育です。子どもたちがこれから大人になる中で、デジタルが必要不可欠な世界で主体的に生きていくために、「情報リテラシーや情報モラルを身につけ問題解決能力を養おう」という考え方で、欧米を中心に2010年代から普及し始めました。
2020年に開催された欧州評議会では、デジタル・シティズンシップ教育を「優れたデジタル市民になるために、必要な能力を身につけることを目的とした教育」と定義しています。また、デジタル・シティズンシップ教育の目的として「新しいテクノロジーがもたらす機会を考慮し、情報に基づいた選択ができるようになること」と説明しています。
GIGAスクール構想の推進だけでなく、新型コロナウイルス感染拡大による集団教育の機会が減少したこともあいまって、端末を使ったオンライン授業など、インターネットを活用した学びの機会が増えています。
教育現場における環境の変化にともない、日本でもインターネットに対する利用抑制・禁止・制限を中心としたこれまでの教育から、子どもたちのインターネット活用を前提としたポジティブな教育の在り方として、「デジタル・シティズンシップ教育」は注目されています。
では、子どもたちは「デジタル・シティズンシップ教育」で具体的にどのようなことを学んでいくべきなのでしょうか?
まず「シティズンシップ教育」とは「他人を尊重しながら市民として社会に参加し、その役割を果たせるように、どのような資質・能力が必要か、どのように振る舞うことが『善い』ことなのかを考えること」とされています。
善き市民として、さまざまなデジタルツールを用いて社会に参加するための知識や考え方が「デジタル・シティズンシップ」であり、それを学ぶのがデジタル・シティズンシップ教育と言えます。