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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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EdTechZine読者イベントレポート

学ぶ時間が大好きになる! 実践者の蓑手章吾氏に聞く、授業で「自由進度学習」を実施するコツとは

第19回 EdTezhZineオンラインセミナー「令和の日本型学校教育! 自由進度学習って何?」

 子どもたちが自ら「めあて」を考え、自分なりの方法で勉強を進めて振り返りまでを行い、次の学びにつなげていく。そんな自由進度学習に着目し、取り入れようとしている学校が増えている。2022年9月に開催された第19回 EdTechZineオンラインセミナーでは、HILLOCK初等部のスクールディレクターである蓑手章吾氏が登壇。これまで、公立小学校や2022年に開校したオルタナティブスクールにおいて自由進度学習を実践してきた経験をもとに、「令和の日本型学校教育! 自由進度学習って何?」と題して、自由進度学習についての解説から実際の授業の進め方、子どもたちへの声がけのコツまでをわかりやすく語った。

勉強で「しんどい思い」をしている子をなくしたい

 教員歴14年の蓑手章吾氏は、公立小学校のほか、特別支援学校での勤務経験を持つ。現在は、2022年4月に東京都世田谷区に開校したオルタナティブスクール「HILLOCK初等部(以下、ヒロック)」の校長にあたるスクールディレクターを務め、自ら指導にもあたっている。また、同時に教育コンサルタントとして、全国の学校で自由進度学習やICT活用などをテーマにした講演や書籍執筆なども行っている。

ヒロック初等部 スクールディレクター 蓑手章吾氏
ヒロック初等部 スクールディレクター 蓑手章吾氏

 最初に蓑手氏は「自由進度学習は『令和型』と言われているが、日本では大正時代から行われており、海外でも活用されている。特別支援学校でインクルーシブ教育を実践した際に『すべての子たちが学びを楽しめる授業の方法』を考えて行きついた先が、この自由進度学習だった」というエピソードを紹介。自身が実践を始めた経緯を語った。

 もともと一斉授業派だった蓑手氏は、これまでの学校現場での経験を振り返り「なかなか一斉授業を手放すことができなかった」と話す。しかし、現在の学校教育における学力が本来目指している平均化ではなく、フタコブラクダのコブのように二極化していることを知り、「これは誰のためにもならない」と考えたという。

フタコブラクダ化する学力 ※ダイヤモンド・オンライン「「700個のケーキ」を「800人の避難民」に届ける方法を考える」P.5より引用

フタコブラクダ化する学力 ※ダイヤモンド・オンライン「「700個のケーキ」を「800人の避難民」に届ける方法を考える」P.5より引用

 その上で「『自由進度学習は学力の格差を拡大する』と誤解されがちだが、そもそも格差を広げないことが最上位目標ではない」とし、「本来、苦手を持っていたり、勉強の楽しさがわからなかったり、しんどい思いしていたりする子どもたちを1人でも減らすことが最上位だと思っている」と述べた。

 だからこそ「もっと自由でいいんじゃないか」と蓑手氏は語る。「難しければ、前の単元や学年に戻ってみてもいい。逆に、次の単元やもっと先までやるのもいい」として、自分が考える次の一歩を歩んでいれば、それが「学びの楽しさ」であることを伝えた。

「85%の安定」と「15%の挑戦」

 次に、蓑手氏は発達心理学に基づいて行っている「自由進度学習」について解説した。「ゴルディロックスの原理」にある「人間は、簡単過ぎず難し過ぎないものに、もっとも高いモチベーションを持つ」ことを引用し、「教育的効果においては、85%理解できているものがもっとも効果的である」と説明。「一番よいのは『85%』の安定」とし、心理的安全と習慣を形作り、より早くアウトプットできるようにすることの重要性を述べた。

85%の安定があるからこそ、15%の挑戦が可能になる
85%の安定があるからこそ、15%の挑戦が可能になる

 その上で蓑手氏は「15%の挑戦」を、未知に挑んで自分の幅を広げていく部分と定義する。発達心理学者ヴィゴツキーの「発達の最近接領域(ZPD)」を例に挙げ、「友だちや先生の力を借りて、一歩先へ挑戦できるというのが学校であり、学びの楽しみでもある。自分で次の階段を作ることによって自己調整力が身につき、自分で学びを進めていける」と話した。

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1単元時間の内容を凝縮した10分の「ミニレッスン」

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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