2023/01/13 14:21 記事公開時、生駒市長 小紫雅史氏のお名前の表記に一部誤りがございました。お詫びして訂正いたします。(編集部)
【東京都渋谷区】教育データの「ダッシュボード」で個別最適な学びを目指す
「日常的・自律的なICT 活用と教育ダッシュボードを利活用した『Well Being』を目指して」と題した東京都渋谷区は、区長の長谷部健氏が登壇し、発表を行った。
東京都渋谷区は、ファッションや文化の発信地として海外にも広く知られているが、ICT活用においては、2017年から全国に先駆けて1人1台端末を導入し、取り組みを進めてきた。
文部科学大臣賞受賞の理由として、アワードの審査員長を務めた日本視聴覚教育協会 会長の大久保昇氏は「GIGAスクール構想以前から自治体独自でICT活用を進め、その後も着実に推進し、日本のひとつのモデルケースとなった」ことを挙げている。
渋谷区立の小学校は18校、中学校8校あり、児童生徒数は約9000人。1人1台端末導入の3年目にあたる2020年、長谷部氏は「タブレット端末に蓄積される多種多様なデータは教員の働き方改革や指導改革、子どもの学び方改革につながるもの」として、大きな可能性を感じており、子ども一人ひとりの幸せ、Well Beingの実現に向けたデータ利活用に取り組んだ(編集部注:正式運用は2022年にスタート)。
渋谷区が構築した教育用ダッシュボードでは、これまで紙ベースやデータでバラバラに把握していた情報を集約して可視化することで、情報の把握・整理・分析を容易にし、校務の効率化を図ることができるという。
「クラス状況シート」では、その日の気分を表す「心の検知」や、学級集団の状態等をアンケートにより把握するhyper-QUテストの結果、欠席・遅刻、保健室来室の記録、区独自で実施している学校生活アンケートの結果、タブレット利用情報などのデータを複合的に見ることができる。「個人状況シート」では、一人ひとりの過去のアンケートの結果からの推移、サイトアクセスや危険キーワード検索の状況などの把握が可能だ。
例えば、7月と10月にそれぞれ実施したアンケートで回答が大きく変化した児童生徒に着目し、検索キーワードから、当該児童生徒の興味関心を読み取ったり、体力テストのアンケート結果から生活習慣を読み取って指導に生かしたりすることができる。
長谷部氏は「学校にアナリストを置く必要はなく、これらのデータを学校の先生が『いかに簡単に使えるようにするか』ということが大切。授業や子どもたちに接する際にサポートするツールとして、ダッシュボードを活用してほしい」と、開発の経緯を話した。
また、現在の状況は「スモールスタート」だとして、今後も「スモールサクセス」を積み重ねて改善を図りながら、行政系データとの連携も視野に入れているという。
さらに、長谷部氏は今後の計画として、渋谷区内の小中学校の老朽化対策である「渋谷区『新しい学校づくり』整備方針~学校施設の未来像と建て替えロードマップ~」を、2022年5月に策定したことを伝えた。2022年からの20年計画で、区内の小中学校全校の建て替えや整備を行っていくという。紹介されたイメージビデオでは、フューチャールームをはじめとした、協働的な学びや個別最適な学び、多様な学びを実現できる未来の学校のイメージが映し出された。長谷部氏は「土地の限られた渋谷区では、学校を合併しながらつくり変えていく。区民の皆さんとビジョンを共有したいという思いで、未来の学校を提示している」と話した。