「教育の明星大学」として、プログラミング教育を考えた――プログラミング教育連携研究ユニット、COPERU PROJECT
小学校でのプログラミング教育必修化を見据え、各所で授業内容のあり方について検討が進められているものの、教育現場では混乱が続いているのが実情だ。今回の特別トラックはそんな現状を踏まえて、教育現場での実践事例を紹介し、教育現場や地域、教員養成機関といった多様な視点から「プログラミング教育」についての展望を考える目的で設置されたという。
最初のセッションに登壇した明星大学 情報学部 情報学科山中脩也准教授は、プログラミング教育プロジェクト「COPERU Project」を発足し、明星大学と周辺地域で取り組んでいる。その活動を通じて、現場に積もる課題を肌で感じてきた。セッションでは、プロジェクト発足の背景について紹介するところからスタートした。
山中准教授は現在、明星大学において、初心者レベルの学部1年生を対象としたプログラミング入門の授業を受け持っているほか、早稲田大学の学力向上研究所において、招聘研究員として小学校・中学校の学力向上に取り組んでいる。
そして2017年、明星大学の中で、プログラミング教育連携研究ユニット、COPERU Projectを発足。立ち上げの背景として、複数の要素を挙げた。
「明星大学は、『教育の明星大学』のキャッチフレーズで教育系に強い大学と認知されており、実際に毎年200名程度小中校の教員を輩出しています。また、一般的に理工学部の中にあることが多い『情報学部』が、独立して存在するといった特徴もあります」(山中氏)
また、日野市・八王子市と教育を含めさまざまな面で包括協定を結んでいることを挙げ、地域と協力したスムーズな取り組みが行える環境を強調した。
さらに、2017年度になって、自治体からプログラミング教育の問い合わせが増えたこともプロジェクト発足の後押しになった。どういったことに困っているのか聞いてみると、「プログラミングに詳しい人がいない」との課題がほとんどだったという。
山中氏は、もともと早稲田大学の学力向上研究所においてプログラミング教育に関する取り組みに携わっていたこともあり、「この教育の明星大学で行うべきプログラミング教育」を真剣に考えてきた。その結果、情報学部と教育学部、どちらの専門性も失わないよう協力しながら、その他学内のセンターとも連携することで、横断型のプロジェクトを発足させることができたという。
現場からの「3つの問い」に向き合う場に――取り組みの概要とその目的
発足の背景を語った山中氏は、続いてCOPERU Projectが一体何に取り組んでいるのか、そしてその取り組みの目的について説明した。
一言でいえば、このプロジェクトは「3つの問いに答えるための、地域共創の場」であるとまとめられるという。そしてその3つの問いとは以下の通りだ。
1.なぜプログラミングを学ぶのか
2.何をプログラミングするのか
3.どのようにプログラミングを教えるのか
これは、山中氏自身がプログラミング教育を小学校などで実施した際に、現場の先生から出てきた質問を3つに分類したものだという。この3つにしっかりと答えたいというのが、このプロジェクト発足の原点だ。
山中氏は、「この問いを考え始めると、結構難しい」と感じたという。例えば、1つ目の「なぜプログラミングを学ぶのか」に対しての答えでありがちなのは、AIの世界市場の予測グラフを持ち出して、「これだけAIが伸びていくのだから、今後はプログラミングが必要になるだろう」といったものだ。しかし、こういった未来予測的な回答はあまり説得力がない。将来的にIT人材が不足するといったデータも同様だ。もちろん、「楽しいから」「面白いから」という理由も、プログラミングを勧める1つのエンカレッジとしてはありだが、小中学校での公教育にしっかりと組み込まれることを考えると、答えとしては足りない。
そこで山中氏は、「そもそもプログラミングとは何か」を一から捉えなおしていったという。