EdTechに限らない、ベンチャー企業が育つ環境にあるイスラエル
――まず、EduLabで和田さんが携われている事業について教えていただけますか。
EduLabの前身となる教育測定研究所は2001年から、教育分野において個人の能力を正確に測定するための理論・技術を研究開発し、それに基づく各種オンラインテスト等を個人や学校法人、企業向けなどに提供してきました。また、文部科学省など、大規模な学力調査を実施する国や地方公共団体に対して、テストの問題作成から実施、採点などの受託事業も展開してきました。その後、世界的に教育を取り巻く状況がダイナミックに変化していく中で、新規事業の開発や他企業との戦略的事業提携の拡大、海外事業の本格化などを受け、企業体をホールディングス体制に移行することとなり、2015年にグループ全体の持株会社として誕生したのがEduLabです。おかげさまで2018年12月には東京証券取引所マザーズへ上場いたしました。
EduLabの事業は幅広く、教育ITソリューション・プラットフォームの提供や、次世代教育支援、EdTech分野における新規事業開発・投資などを行っています。その中でも私は、国内外における新規事業開発や大手企業とのアライアンス、海外でのEdTech投資や知見の収集を統括するともに、日本のEdTech企業の海外進出も支援しています。
――和田さんは日本におけるEdTechのキーパーソンとして、海外でも数多く講演されていらっしゃいます。今回は2018年に登壇されたイスラエルのEdTechイベント、「Israel EdTech Summit」について詳しくお話を伺えればと思います。
本イベントはEdTech Israelという団体が運営しており、昨年は3回目の開催でした。私は初回から登壇しています。イスラエルは面積が狭く、資源が少ないだけでなく、周囲を対立する国々に囲まれていることもあり、「自分たちでゼロからものを生み出さなければいけない」といった考えを持つ国です。そのため教育、特にテクノロジー分野の教育に注力しています。結果、800万人の人口に対して、およそ8000ものベンチャー企業が存在するといわれています。経営者は皆、グローバルな視点を持っており、イノベーションに貪欲で失敗を恐れません。それは失敗しても責められない土壌があるからです。具体的には、仮に失敗しても、また起業すれば今度は成功率が上がるということ。みんなポジティブに失敗から学ぼうという発想があるので、自ずと企業が育っていく環境なのです。その背景もあり、本イベントのようなイノベーションを創出するエコシステムが整っていて、EdTechが非常に盛り上がっています。
日本のEdTechマーケットを世界に向けてアピール
――昨年の「Israel EdTech Summit」では経済産業省の商務サービスグループ 教育産業室長 浅野大介さんと一緒に登壇されました。どのようなきっかけがあったのでしょうか。
私たちはEdTech企業に対する海外投資を2年以上前から行ってきました。2018年の1月に、経済産業省が「『未来の教室』とEdTech研究会」を立ち上げたときから、いよいよ日本も次のフェーズ、EdTechを成長させる段階に入ったと感じました。しかも、国がかかわるとなると制度面も変わる可能性があります。ぜひ一緒に何かできないかと思い、私たちからコンタクトを取りました。経済産業省も、海外の有望なEdTech企業を日本に誘致したい、さらには日本のEdTechを積極的に海外に紹介したいといったビジョンを持っていました。私はさまざまな海外イベントで講演の機会を頂いていたので、「一緒に話してみませんか」とお誘いすることになったのです。
――登壇されたセッションについて詳しく教えてください。
私が登壇したのは「Asia’s Future Drivers of Growth & Innovation」という、クロスボーダーで教育イノベーションを考えるスペシャルトラックです。アジアで最も大きなマーケットである中国と、次に続くインド、そして日本の3カ国が取り上げられました。
私は、現在の日本におけるEdTechのトレンドや動きについてお話ししました。具体的には、経済産業省が予算を確保し、実証実験の場も提供して海外のEdTech企業も参加できる扉を開いたことについてです。また、2020年に向けて面白いことがたくさん起きますよ、と話しました。主に入試改革やプログラミング教育、英語教育に関する話題です。
浅野さんは経済産業省を代表して、「『未来の教室』とEdTech研究会」を立ち上げたきっかけを話されました。また、イノベーションによって日本が世界をリードしていくため必要な教育は何か、そしてそのために海外からも積極的にEdTech企業を誘致する用意があるとアピールされました。特にSTEAMや課題解決型の教育、アダプティブラーニングの関連企業の誘致には注力したいとおっしゃっていました。