一人でも学びを深められる「プログラミング」の教材に必要な要素は?
では、スマイルゼミにおける「プログラミング」教材とは、どのようなものなのだろうか。
ILS事業部教材部の片桐牧子氏は「新しい科目向けの教材ということで、普段教材作成を行っている教材部だけではなく、システム開発を担当している開発部の担当者とも議論を重ねて、開発に取り組みました」と話す。
「プログラミング」学習の教材例として示されているのは、「水のかさ」問題だ。この教材では、画面に登場するキャラクターに指示を出し、水槽に必要な量の水を入れる手順を考える。キャラクターに命令を出すには、タブレット画面の右端に、命令の書かれた「ブロック」を順に並べていけばよい。この例では、個々の「ブロック」を組み合わせて、試行錯誤しながら、キャラクターに意図した動きをさせていく。この過程で、「プログラミング的な思考」を養いつつ、「算数」で登場する「mL」「dL」「L」といった水かさの単位を変換しながらの計算問題に対する理解を深める構成となっている。
「エンジニアが関わって開発するプログラミング教材ということで、当初は具体的な言語などを学べる『プログラマー養成講座』的なものを作ってはどうかという議論もありました。しかし、プログラミングというのは、技術の移り変わりがとても早い分野でもあります。ならば、小学生の段階から特定の言語や作法を覚えるのではなく、与えられた課題を、コンピュータが理解できる形に分解して命令を与えるという、より本質的な『プログラミング的思考』を鍛えることのほうが重要ではないかという結論に至りました」(広庭氏)
アプリケーションとしてのユーザー体験にも、初めてプログラミングをする児童に対する配慮を取り入れていると言う。開発に携わった、ILS事業部開発部の山崎広毅氏は、ボランティアで子どもにプログラミングを教える活動も行っており、その経験から「初めてプログラミングに触れる児童の手が止まらないよう、ビジュアルやチュートリアルには特に力を入れた」と話す。
「デジタルなものに興味があったり、これまでにプログラミングの体験があったりする児童は、教材を与えればどんどん自分がやりたいことをやっていきます。しかし、そうでない児童は、教材を渡されても、どうしていいか分からず、そこで手が止まってしまうんです。今回の教材では、一人で課題に取り組めることが大事だと考え、他の教材にはない、分かりやすいビジュアルを取り入れたり、課題開始前のチュートリアルを細かく作り込んだりといったことを行っています」(山崎氏)
また、プログラミング教材は、他の教科の課題と異なり「正解が一つではない」ことを前提としたヒントやサポートを児童に対して提示できるように作られていると言う。例えば、先ほどの「水くみ問題」の例で言えば、1Lの容器をいっぱいにするのに「500mLのマスを2回」使う指示を出しても「1dLのマスを10回」使う指示を出しても「正解」になるという具合だ。
「プログラミングによる課題解決にはさまざまな方法があります。試行錯誤をしながら、そこへ到達することが学べるような構成を意識しています」(山崎氏)