総務省、障がいのある児童生徒を対象にプログラミング教育事業を実施
特別支援学校に通う子どもたちにとって、プログラミングを学ぶことにはどのようなメリットがあるのだろうか。例えば、タブレットなどのIT機器は、映像で理解したり、書くことの負担を軽減したりと、障がいのある子どもたちの「できることを増やすツール」になり得るが、プログラミングとなるとどのような学習効果をもたらすのか、未知数である。とは言え、プログラミングの学習は試行錯誤の場面が多いことや多様な表現が可能であることから、子どもたちの可能性を広げる手段になるとし、特別支援学校においても先駆的な教育者らを中心に取り組みが始まっている。
こうした動きをさらに普及させようと、総務省では2017年度の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業において、障がいのある児童生徒を対象とした実証モデルを10件採択した。
その中の一校に選ばれたのが、知的障がいのある子どもたちが通う東京都立石神井特別支援学校だ。同校では2016年度に、日本マイクロソフトとNPO法人CANVASが協同で実施するプログラミング学習普及プロジェクト「YouthSpark: Programming for all」の協力校にも選ばれるなど、積極的にプログラミングの授業実践に取り組んできた。そして、2017年度には総務省の同事業にも採択され、今度は株式会社エンベックスエデュケーションと協力し、運動と組み合わせて視覚的・体感的にプログラミングを学ぶ教育モデルの開発に挑戦。2017年12月12日には、同モデルを活用した授業を公開し、多くの関係者らが集まった。
色ごとに指示が異なるカラーボールを並べてプログラミング
公開授業の冒頭では、山本和彦校長が登壇し、本事業の取り組みについて紹介。同氏は「特別支援学校においても、プログラミングで学べる順次性などの考え方は活かされるが、知的障がいのある子どもたちにどのように理解させるのかが全体を通した課題である」と述べた。
続いて、エンベックスエデュケーションの荒木泰晴氏より、本事業のために同社が独自開発したプログラミングツール「カメレオン」について説明があった。
同ツールは、知的障がいのある子どもたちも簡単にプログラミングの概念が学べるよう、キーボードやマウスを使わず、代わりにレジャー施設などのボールプールで使用されるカラーボールを使用してプログラムを組み立てるのが特徴だ。あらかじめカラーボールの色ごとに何パターンかコマンドが組み込まれており、ボールをカラーセンサーが搭載されたケースに順番に並べることでプログラムを実行する。
例えば、「緑のボール=手を叩く」「ピンクのボール=ジャンプ」「紫のボール=まわる」とプログラムされている場合、「緑」→「ピンク」→「紫」の順番でカラーボールを並べると、スクリーンの中のキャラクターが、手を叩いたり、ジャンプをしたりする仕組みだ。
知的障がいのある子どもたちにとって、タブレットやコンピューターを使ったプログラミングはハードルが高い。そのため、カラーボールを入力装置にし、それらを順番に並べることで、プログラミングの特徴である順次性の概念を体得できるようにした。カメレオンは、全国どこの特別支援学校でも安価で実施できるようにと、小型コンピューター「RaspberryPi」とカラーセンサー、ビジュアルプログラミング言語「Scratch」など、既存のツールを組み合わせて作られていることも特徴だ。