生徒とつくり上げたマインクラフトの世界
不登校の原因はさまざまですが、「集団が苦手、自信が持てず不安になりやすい」という理由で不登校になってしまった生徒と関わる機会が多くありました。2019年度に私が担任した生徒も、不安感が強くなりやすく、学校での活動が難しい実態がありました。私は生徒に「信頼できる相手との関わりを中心に自信を持って取り組めることを増やし、自分の可能性に気づいてほしい」と考えて指導を行ってきました。
年度当初の4月、生徒とマインクラフトを活かした学習を始めました。マインクラフトは、さまざまな形・性能のブロックを組み合わせて建物をつくったり、洞窟を探検したりできるゲームで、ストーリーはあるものの明確なゴールがない自由度の高いゲームです。最初は一緒に建造物をつくったり冒険したりしつつ、生徒が得意なことや自信を持ってできることを見定めていきました。そして生徒と一緒にプレイしながら、年度内の目標を「(1)巨大な建物を最後までつくり上げる」「(2)文化祭のステージ発表に参加し、マインクラフトでつくった映像を上映する」と決めました。
目標(1)の巨大建造物については身近な大型商業施設をつくることに決まりました。実際に中の店舗を決めていく段階で、「どのような店をつくってほしいか、いろいろな先生にアンケートをとりたい」という意見が出ました。多くの先生方と自主的に関わるきっかけが生まれ、その中で人が多く集まる体育祭への参加にもつながりました。「○○先生も喜ぶから、絶対完成させたい」の気持ちで取り組むことができ、最後までつくり上げた達成感と、感謝される経験を味わうことができたのです。
また、完成した大型商業施設はYouTubeでも公開し、日々再生数が増えていくことやコメントをもらえたことも「多くの人に認められている」という自信につながりました。
続く文化祭でのステージ発表への参加では、参加するグループのお題「オリンピック」にのっとって、マインクラフトの世界でオリンピックの競技にチャレンジする様子を映像にすることにしました。生徒がキャラクターを操作し、教員が撮影する形で映像づくりを行いました。目標(1)の達成で自信を持てたことで、文化祭のステージに上がって完成した動画を見事発表することができました。