コロナ禍での混乱はどの学校でも共通
Bett Fest 2021の初日に「Leading successful remote and blended learning」と題して開かれた本セッションは、モデレーターを務めたEvelyn Forde氏(北ロンドンにあるコプホール中学校の校長)、そして北アイルランドのサウス・イースタン・リージョナル大学(SERC)でカリキュラムと情報サービス担当ディレクターを務めるMichael Malone博士、イングランド地域で40以上の学校を擁する非営利の学校基金団体オーミストン・アカデミーズ・トラストでティーチングとトレーニング担当ナショナルディレクターを務めるTuesday Humby氏、韓国にあるIB認定校、ブランクサム・ホール・アジアでテクノロジー・リサーチ・イノベーションの担当ディレクターのTerry McAdams博士、米マサチューセッツ州ビーバーカントリー・ディスクールで中学部のディレクターを務めるKader Adjout氏の合計5人が、オンライン授業での学びや意見を交換した。
コロナ禍での混乱は、どの学校にも共通している。例えば米国のビーバーカントリー・ディスクールのAdjout氏は、「それまでは学校に来ている生徒を理解すれば良かったが、(今回のコロナ禍で)どのように生活しているのか、どのような状況にあるのかを短い期間で理解しなければならなくなった」と述べる。米国では中学生にもなると、教員が学校外の生活に関与することは少ない。ところが、自宅にいる生徒にオンラインで授業をするとなると、保護者は在宅勤務なのかどうか、端末やネットワーク環境はどうなっているのかなど、家庭の状況を考えながらスケジュールを作成しなければならなかった。「簡単ではなかった」と振り返る。
これまで通りの対面での授業を望む声がある中で、新しいやり方を平行して導入しなければならなかったため、「新しい教え方を確立するにあたって、このやり方がちゃんと機能していることを示して信頼してもらうことも課題だった」と述べる。
サウス・イースタン・リージョナル大学(SERC)では、情報技術から美容、配管などカリキュラム分野が50以上存在し、働きながら学ぶ学生もいる。「学生のニーズはバラバラで、リアルで実践して評価する実践的な科目もある」とMalone博士。そこで、まずは消毒液や透明スクリーンの設置、通路の整備など、学校で安全に学べる環境を整えたうえで、体調が悪い学生はリモートで通学できる仕組みを用意したという。行動ガイドラインを設けることで、学校が警察のように取り締らずとも感染を防ぎながら学ぶ体制を整えたとMalone博士は説明する。
なお、Malone博士の務めるSERCでは、“離れている”を意味する「リモート」という言葉は意図して使わないと決めているそうだ。「学生に“リモート”になってほしくない。コラボレーションしてほしいので、オンライン、オンキャンパスという言葉を使っている」とMalone博士は説明する。
これらの取り組みと同様にMalone博士が強調するのが、教員など学校職員のストレスへの配慮だ。「1週間程度でオンラインに切り替えを余儀なくされた。スタッフは大きなストレス下にあった」という。