「学び」のプロセスを妨げない使い勝手を実現した「Adobe Spark」
セミナー後半には、「Adobe Spark」の具体的な機能と活用事例の紹介が行われた。
「Adobe Spark」は、ブラウザアプリケーションとしてインターネット上で提供されている。ポスターやグラフィックを作成できる「Spark Post」、プレゼンテーションビデオを作成できる「Spark Video」、Webページを作成できる「Spark Page」の3種類の制作形式をもつ。
作成したデータは自動的にクラウドへ保存され、画像・動画ファイルとしてダウンロードしたり、共有用リンクを生成したりできるので、複数の作品を組み合わせて1つのコンテンツを作成することもできる。授業の中で使われることを前提に、機能は必要十分な範囲でまとめられており、デザインやPC操作に不慣れな教員や児童生徒であっても、シンプルなUIで使いこなせるものになっている。
「Spark Post」では、発表ポスターやチラシのようなグラフィックを作成する。割り付けのテンプレートや素材が豊富に用意されており、子どもたちは授業の中で集めた情報をまとめながら、その上に配置していくことができる。配色についても、あらかじめさまざまなイメージに合わせたカラーパレットが用意されており、その中からの選択も可能だ。
「Spark Video」は、静止画や動画、テキストや音声などの素材を組み合わせて「動くスライドショー」を作ることができる動画作成ツール。Spark Postで作成したグラフィックをスライドとして挿入できるほか、用意されているフリーの音楽素材でBGMを付けたり、児童生徒が自分の声でナレーションを入れたりすることも可能になっている。
「Spark Page」は、Webページの作成ツール。Spark PostやSpark Videoで作った素材を張り込めるようになっており、Webページ用の見出しやリンクボタンなども自由に設定できる。授業での学習の成果をWebページとしてまとめ、学内外に発信といった用途に使える。
Adobe Sparkを実際の授業で活用した成果物の例として、京都府・亀岡市立東別院小学校による「Our SDGs」というWebページが紹介された。授業での成果を、世界に対して容易に発信できるというのは、旧来のアナログなスタイルの授業では難しく、デジタルな授業ならではの利点と言えるだろう(詳細は別稿を参照)。
デモの様子を見た平井氏は「Sparkを使うと、デザインのスキルがなくても、非常に見栄えの良いポスターやWebページが簡単に作ることができる。ツールの使い方の説明に授業時間をとられ、実際の制作やディスカッション、プレゼンテーションなどに時間が割けないという状況は避けられる。一方で、先生には見た目ではなく、内容を十分に吟味して出来映えを評価する必要がありそうだ」とコメントした。
また、「Spark Page」については、調べ物学習のような授業だけではなく、学校の先生が、校外や保護者向けに情報を発信するような使われ方もされているという。セミナーでは、奈良県がGIGAスクール端末とAdobe Sparkを使った授業の様子を、自らSpark上で情報発信しているページが紹介された。
「これからは、学校から積極的に情報発信していくことが必要。特にGIGAスクール以降は、学校で行われている教育の内容に対する保護者からの関心も高い。このようなツールを通じて、学校での様子を保護者に伝えることができれば、教育への信頼を得ることにもつながるのではないか」(平井氏)
なお、Adobe Sparkを利用する場合、Googleの「Google Workspace for Education」や、マイクロソフトの「Microsoftアカウント」とのID連携が可能になっている。GIGAスクール端末の配布にあたって、すでにこれらのIDを取得し、教員や児童生徒に配布している学校であれば、別途「Adobe Spark」用のIDを取得、管理する手間は不要だ。
米国ではGoogleのサービスである「Google Slide」と「Adobe Spark」を組み合わせて「課題をそれぞれにPostで作成し、先生が共有したGoogle Slideにページとして提出。クラスメートの成果物を見たり、それにフィードバックを付けたりする」といった形での活用もされているという(画像は、米国での事例をもとにアドビで作成したイメージ)。
平井氏は「Adobe Sparkの中だけでなく、Googleを含めた他のサービスとも組み合わせて使い方を工夫できるのは良い。他のツールやサービスとの相乗効果で、素晴らしい授業が生みだされそうな期待を感じる」と評価した。
「Adobe Spark」の申し込みは3ステップで可能――研修プランも用意
Adobe Sparkを教育機関が無料で利用したい場合、「申請」「ID連携の設定」「ユーザーの割り当て」の3ステップで導入が可能だ。導入にあたって参考になるユーザーガイドも整備されているほか、活用方法を学びたい組織向けの「Adobe Spark研修プラン」も用意されている。いずれも、学校に導入したGIGAスクール端末とツールを、新たな「学び」の実現に向けて最大限に活用したいと考えている教育関係者にとっては、心強いリソースとなるはずだ。
これらの詳細については、教育関係者向けの情報が集約された「Adobe Spark」ページで参照してほしい。