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音や映像を工夫すればオンライン授業全体の質も向上! 配信環境や機材のテクニックを紹介

実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】第3回

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 本連載では、筆者が所属する九州大学ビジネス・スクール(以下、QBS)および九州大学経済学研究院でのオンライン授業の実践をもとに、遠隔授業のポイントやコツを紹介します。第3回の今回は、学生が学びやすくなるオススメの配信環境の紹介と、それぞれの機材のセットアップについて解説します。

はじめに

筆者の配信環境
筆者の配信環境

 上の画像が、僕が現在自宅からオンライン授業や講演、学会発表などをするときに使用している機材一式のセットアップです。こちらについて、1つずつ説明していきます。

まずは使用するパソコンに投資すべし!

 オンライン授業を行う場合、何はなくともまずは十分な性能のパソコンが不可欠です。

 Zoomは独自の高データ圧縮技術を採用しており、ほかのWeb会議システムと比較すると(特に数十人以上が同時にアクセスする場合)映像や音声の品質を保ちながら通信量を抑えられるため、ネット接続環境やパソコンの性能にやや難がある場合でも比較的安定します。とは言え、それでも数年前に発売された普及品レベルのパソコンだと音声が途切れたり、映像が乱れたりしやすくなりますし、最悪の場合アプリが強制終了されてしまうこともあります。

 パソコンのスペックに関する専門的な記事はネット上を探すとたくさん見つかるので、詳細はそちらに譲りたいと思いますが、僕が同僚からオススメを聞かれたときは、「CPUはインテルのCore i5、できればi7の第10世代以上」「メモリは8GBでギリギリ、16GB以上を推奨」「ストレージは最低512GB。ただし万が一のときの再起動のスピードを考えて、HDDではなくSSDのもの」という3つの基準を伝えるようにしています。これらの条件を満たし、かつ価格が10万円台で済むものとして、本記事執筆時点ではDellの「Inspiron 13 7000 2-in-1 プラチナ」、HPの「ENVY 15-ep0000 パフォーマンスモデル」、Huaweiの「Matebook 14 2020 AMD」などがあります。

オンライン授業のクオリティを上げる第1の鍵は音響機材

 非同期型のオンデマンド授業にせよ、リアルタイム型のオンライン授業にせよ、学習に集中できる環境としては、まず何よりも「音」が重要な要素となります。教員が顔出しなしでパワーポイントのスライドに音声を重ねる形で動画をつくったり、リアルタイムで講義をしたりしても十分授業は成立しますが、ひたすら無音の授業というのはほとんどのケースにおいて成立しがたいものだと思います。

 本記事では、学生側に聴覚上の障害がないケースを念頭に置いています。聴覚障害がある学生がクラスにいる場合には、東京大学バリアフリー支援室の公開資料を参照し、そこで紹介されている「UDトーク」という音声認識・字幕生成アプリを活用すると、基本的に本記事で紹介しているものと同じ機材セットアップで、より包括的な学習環境を整えることができます。

 学生からすると、教員の説明や指示、質問の内容がストレスなく聞き取れるかどうかは、学習体験の質を大きく左右します。できる限りクリアな音声を届けられるよう、僕はRØDEの「NT-USB」という外付けマイクを使用しています。NT-USBには、ポップガードと呼ばれるメッシュ状の風防が付属していて、しゃべったときに吐き出される息が直接マイクにかからないようになっています。これによって、呼気がマイクにかかったときに生じる「ボボボーッ」という雑音をなくすことができます。

 また、NT-USBはコンデンサーマイクと呼ばれる指向性マイクで、正面にいる僕の声をクリアに拾ってくれる一方で、別の方向からの音はある程度カットしてくれます。オンライン授業のとき、僕は自宅のリビングの一角にあるスペースを仕切って使用していて、引き戸一枚隔てた向こうでは3歳の息子が教育番組をテレビで見て歌っていることもあります(笑)。そんな僕と同様、家族の生活音がある中でオンライン授業を行わざるを得ない先生方にとって、指向性マイクは頼もしい味方になってくれると思います。

オンライン授業だけならWebカメラでも十分、ではあるけれど……

 オンライン授業を行うとき、音に加えてもう1つ重要な要素が映像です。僕は、2020年春のオンライン授業が始まったばかりのころはLogicoolの「HD Pro Webcam C920s」というWebカメラを使っていました。付属のUSBケーブルをパソコンに挿すだけですぐに使えるし、解像度もオンライン授業を行うには十分すぎるほどです。

 パソコンの内蔵カメラではなく外付けカメラを使用するメリットの1つは、より自然な画角で自分を映せることです。ノートパソコンを机に置いて、その内蔵カメラで撮影すると、自分よりも物理的に下にあるカメラを見下ろす形になります。すると、文字通りの「上から目線」で授業をすることになり、自分としてはそんなつもりはまったくなくても気難しい印象を与えてしまうことがあります。

 また、内蔵カメラの場合、距離や画角の問題で首から上しか映らず、俗に「生首画像」と呼ばれる状態になってしまうこともあります。実際に対面で相手の首から上しか見えないというのは、対人距離がほぼゼロになるくらいにまで接近した状態であるため、「生首画像」は見る側に相当な圧迫感を与えてしまいます。パソコン内蔵のカメラの代わりに外付けカメラを使用し、カメラのレンズが自分の目線よりも少し上になるくらいの高さにセッティングすると、より自然な姿で授業ができるようになります。

 さらに、現在では僕は「ATEM mini」という機材を使って、ソニーのデジタルコンパクトカメラ「ZV-1」をWebカメラの代わりにしています。ATEM miniはスイッチャーと呼ばれる機材で、これにデジタルカメラやハンディカムビデオカメラなどを接続し、さらにATEM miniをパソコンに接続すると、4K画像をはじめとする高画質な映像でオンライン授業を行うことができます。このとき、明るさ補正機能にすぐれたZV-1のようなデジカメを使うと、部屋の蛍光灯以外に照明を使わなくても表情が明るく映るというメリットもあります。WebカメラとZV-1で条件を変えて撮影したスクリーンショットをお見せしますので、見比べてみてください。

ソニー「ZV-1」と、Logicool「HD Pro Webcam C920s」の比較
ソニー「ZV-1」と、Logicool「HD Pro Webcam C920s」の比較

 加えて、スイッチャーがあると、複数のカメラやiPadなどのデバイスを同時に接続して、手元のボタン操作ひとつでZoom上に表示される映像を切り替えることもできます。この機能を使うと、オンライン授業でスライドを使って講義をしつつ、瞬時に画面を切り替えて手描きの「板書」を見せることも可能です。


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