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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】

今こそ、教育が進化するチャンス――ハイフレックス型授業の定着には何が必要か?

実践してわかった! オンライン授業のポイント【九州大学ビジネス・スクールでの事例】第7回

 本連載では、筆者が所属する九州大学ビジネス・スクール(以下、QBS)および九州大学経済学研究院でのオンライン授業の実践をもとに、遠隔授業のポイントやコツを紹介します。最終回となる今回は、教室での対面参加と遠隔オンライン参加を同時進行させるハイフレックス型の授業がなぜ重要なのか、改めて考えていきます。

ハイフレックスを定着させるには「手順」の見える化・文書化が必須

 メディアには、派手な実践が躍りがちです。

 Webや書籍で紹介される手法や実践事例は、他から抜きんでた面白さ、革新性があるからこそスポットライトがあてられるわけですし、これはある意味当然のことです。同様に、YouTubeで「オンライン授業」「ハイブリッド授業」と検索すれば、多くの注目=再生回数を集めた最新の機材セットアップの紹介や非常に高度な取り組みに関する動画が次から次にレコメンドされます。

 しかし、去年そして今年とハイフレックス型の授業を推進する中で痛感しているのは、実際に「ニューノーマル」を定着させるためには、実に地味な「手順」の見える化・文書化、そして細かな確認と管理の繰り返しが不可欠だということです。

 オンラインで映像と音声を発信するために必要なカメラやマイクはどこにどう保管されているのか。それらの機材を教室のどこに配置し、どのケーブルを使って接続したらいいのか。授業が終わったときには、各機材をどこにどのようにしまうのか。そして、映像が映らない、音声が聞こえないといったトラブルが発生したら、あるいは、あるはずの機材が収納場所に見当たらない場合には、誰に連絡をしたらいいのか……こうした細かい手順について、マニュアルを整備しなければなりません。でなければ、必ず時間とともに教員間、授業間でズレが生じます。そのズレは、最終的に学生の学びに対する集中力を妨げることになってしまいます。

 お恥ずかしい話ですが、九州大学ビジネススクールでは、こうした手順を周知徹底することの重要性を、4月から始まった新学期の授業で痛感することになりました。

 事前にリハーサルも行って準備を整えたはずだったのですが、昨年ハイフレックスを実施したときとは機材を一部入れ替えたこともあり、授業当日になってみると「機材を接続するためのケーブルが見当たらない」「カメラの切り替えや録画の設定を、教員が行うのか、それともティーチング・アシスタント(TA)が行うのか分からず、混乱した」「そもそも、事前に配布されたハイフレックス授業実施要領の内容を把握しきれていなかった」など、トラブルが多発したのです。

 そこで我々がとった対応策は、実に地味で、当たり前のことでした。

 必要な機材がそろっていることを再確認し、どの機材をどこに収納するか写真にとってマニュアルに反映させる。各機材を接続するケーブル類に百円均一ショップで買ってきたカラーテープを貼って、どの機材のどの接続ポートにどのケーブルをつなげばいいか一目で分かるようにする(HDMIポートとHDMIケーブルには赤のテープ、USBポートとUSBケーブルには青のテープ……など)。教員とTAに、各自が行う作業についてマニュアルをもう一度見ておくようにお願いし、実際の授業でそれができているかを別の教員が現地サポートに赴いて確認する、といった具合です。

 これらの作業の多くは、一部のITリテラシーに長けた(やろうと思えば自分1人で機材を持参してセットアップまでできてしまう)教員には不要です。一方で、それ以外の教員にとっては大きな負担となります。不慣れなデジタル機材を使って、去年までやったこともなかったハイフレックス授業を行うだけでも大変なのに、マニュアルで細かい作業手順まで管理されるのは窮屈に感じますし、正直なところプライドが傷つくように感じている教員もいるだろうと思います。

 しかし、だからといって「各々の先生方、基本的にはお好きなように……」と妥協してしまうと、結局授業によって映像や音声のとり方がバラバラで、学生は学びに集中しづらくなってしまいます。そうならないよう、今こそハイフレックス型授業を基軸においた「新しい学びの形」を定着させられるかどうかの正念場だと認識して、手順の見える化・文書化に全力で取り組んでいるという次第です。

次のページ
「あのときの危機感」を忘れていないか

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この記事の著者

松永 正樹(九州大学ビジネス・スクール准教授)(マツナガ マサキ)

 Ph.D. in Communication Arts & sciences(Pennsylvania State University, U.S.A.)。早稲田大学、立教大学で助教を務めた後、Institution for a Global Society株式会社シニアコンサルタント、九州大学ロ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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