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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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教育ICT先進国フィンランドの教育動向~現場からの声

フィンランドなどヨーロッパ各国が注目する「アントレプレナーシップ教育」、その実態とは?

教育ICT先進国フィンランドの教育動向~現場からの声 第5回

 本連載では、フィンランドの中部、オウル大学大学院でフィンランドのアントレプレナーシップ教育を研究する筆者が、教育ICT先進国とされるフィンランドの教育動向を現地の生の声をもとにレポートします。今回は「アントレプレナーシップ教育」について。フィンランドの学習指導要領に明記され、総合学校(小中学校)で育むべきとされている7つの能力「Transversal Competences」にも含まれています。日本では「アントレプレナーシップ教育」=「起業家的な、ビジネスを立ち上げる能力を育む教育」として高校生向けのプログラムなどが出てきていますが、ヨーロッパでの捉え方は少し異なるようです。この考え方と実際の学校での取り組みについて解説します。

アントレプレナーシップの概念

 アントレプレナーシップという言葉を聞いたことがあるでしょうか? 始まりとなったアメリカ、そして私の住むフィンランドはもちろん、昨今ヨーロッパ全体で注目度が上がっている、21世紀の子どもたちに必要となる力のひとつです。フィンランドではNational Core Curriculum(国の決めた学習指導要領)で注力すべき7つのTransversal Competenceの中のひとつとして位置づけられ(注:前回記事)、盛んに取り組みが行われています。

 とはいえ、なかなかイメージのつかないアントレプレナーシップ。それはいったい何なのか。今回の記事では、概念から具体的な取り組みに至るまで、解像度を少しずつ高めながら解説していきたいと思います。

アントレプレナーシップが着目されるようになった背景

 技術の進歩や経済のグローバル化の推進などの結果として、働く環境、職業、仕事の性質が変化しています。仕事の要件(必要なスキルや特性、資格など)を予測することは以前よりも困難です。そのため、学校教育では、仕事とワーキングライフへの関心と前向きな姿勢を促進する一般的な能力を磨かなくてはなりません。そこに登場したのが、アントレプレナーシップです。

 このアントレプレナーシップ、日本でも一時期注目された言葉なので、聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。直訳すると、起業家精神。広義では、自分ならではのアイデアを形にする力。狭義では、ビジネスを興すための力とされます。文字面から日本では、起業やビジネスに関連付けて捉えている方が多い印象ですが、実は先ほども述べたように、仕事や生活に関する前向きな姿勢を育むための「誰にでも関係する」概念です。

フィンランドでのアントレプレナーシップの扱い

 フィンランドの教育シーンでは、このアントレプレナーシップがどのように扱われているのでしょうか。フィンランドでこの言葉が登場するのは、National Core Curriculum for Basic Education(小中学校向けの学習指導要領)です(参考:前回記事)。国が注力する7つのテーマ「Transversal Competence」があり、そのひとつに「ワークライフスキルとアントレプレナーシップ(働く力と起業家精神)」という項目が含まれています。ここでは、アントレプレナーシップを広義の意味合いで捉え、仕事や社会で仲間と協働する力や、アイデアを形にする重要性を説明しています。

育む力から、アントレプレナーシップを考察

 さて概念的な説明をしてきたものの、まだまだピンとこない方も多いと思います。そこで、少し角度を変えて、アントレプレナーシップにおいて育む「力」に焦点を合わせて説明します。2016年のEU Commissionが定義している図が分かりやすいので、こちらを引用します。

★引用元をこちらに記載できればと思います★
EntreComp: The Entrepreneurship Competence Frameworkより(出典元

アントレプレナーシップに3つのステップ

 上記の図では、広義のアントレプレナーシップ(アイデアを形にする力を身に着ける)実現に必要なのは、3つのステップだと紹介しています。まずはアイデアや機会を生み出す(Ideas & opportunities)。次に、そのアイデアや機会を自分の持っているリソースと結びつけること(Resources)。そして最後に、具体的な行動に移すこと(Into action)。そして、この3つのステップを踏むために必要な力が以下に説明するコンピテンシーです。

各ステップを支える5つのコンピテンシー

 それぞれのステップの配下に、5つのコンピテンシーがあります。例えば、「アイデアや機会を生み出す」の配下には、「クリエイティビティを磨く」「ビジョンを描く」「機会をつかみとる」「アイデアを評価する」「エシカル・サステナブルな思考」が並んでいます。この力を身に付けることで、アイデアや機会を生み出すステップが踏めるようになるという考え方です。ひとつずつ分解して紹介されているため、とても分かりやすいです。

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フィンランドの取り組みの現在

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この記事の著者

田中 潤子(タナカ ジュンコ)

 オウル大学大学院教育学部Education and Globalisation在籍、フィンランドのアントレプレナーシップ教育について研究中。たなか家教育研究所主宰。フィンランド教育サロン「教育秘密基地」運営。新卒で求人広告会社に就職。営業、新人育成などを担当したのち、特非)放課後NPOアフタースク...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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