一気にオンラインに切り替わったが……中国がOMOに行き着くまで
最初に宋暁非氏が中国の経過を振り返りながら、状況を説明した。結論から言うと、「教育でもOMO(Online Merges with Offline)が重要で、オンラインとオフラインのハイブリッドが進んでいる」そうだ。そこに至るまでには、どのような経過を経て、どのような学びがあったのか。
新型コロナが最初に猛威を振るった中国では、1月29日に教育部が休校を発表、同時に「学びは止めない」と宣言した。今年は旧正月が明けるのが1月31日、通常ならそれから1~2週間後に学校が始まるが、一気にオンラインに切り替わったという。アリババが素早く「DingTalk」(Web会議ができるチャットサービス)を教育向けに無料公開することを発表、各自治体はライブ形式で時間割をそのままにオンラインで授業を行うことにした。
ところが、これは混乱を招いたと宋氏。「中国では英会話などでオンライン教育の浸透率はすでに30%程度、塾業界でも16%程度がオンラインを使っていた。ある程度の浸透率があるので、“全部オンラインにすれば良い”と安易に考えすぎていた」と背景を説明する。
「画面の前にずっといなければならない子どもも、子どもがちゃんと勉強しているところを写真に撮ってチャットに投稿しなければならない保護者も疲れる。オンラインに慣れていないので教師も疲れる」と宋氏。もちろん科目、学齢などによりオンラインが向いていない場合もある。
そこで録画コンテンツを組み合わせる動きが始まった。上海では、約1000人の教師が1人10~30のコンテンツを作り、コンテンツの“プール”を作成した。これをクラウドで共有し、学校が自分たちの裁量で自由に使った。「どの映像コンテンツをどのぐらい使うかは学校が判断した。映像だけのところもあれば、ライブ授業を継続したところもある」と宋氏。「休校になると、ライブ授業(A)、録画した映像コンテンツの配信(B)、AとBの組み合わせ、の3つしか選択肢はない。中国は最終的に、(AとBの)ハイブリッド型で落ち着いた」という。
こういったことから、宋氏は「中国のトレンドはOMO。オンラインだけ、オフラインだけ、ではなく、オンラインとオフラインがマージしていく」と述べる。
もう1点、格差についても言及した。「オンラインはもともと教育格差をなくすための意義があるが、絶対の公平さはない。あるいはそこまでに時間がかかる」と宋氏は述べる。端末やネットワーク環境がない家庭に対しては、教育部や学校が支援をするが、それでも全てに行き渡っていないと述べた。