「板書時のロスをなくしたい」から始まったICT
――EdTechZineでの連載「ゼロから始めてここまでできる! 公立高校でのICT教育実践」が大変好調です。浅見さんは早くから高校でICTを活用した授業を実践してこられたのですね。
はい。現在は行政に出向しておりますが、昨年度まで公立高校の国語の教員として、10年近くプロジェクターなどのICT機器を使いながら、授業を行ってきました。
――どのようなきっかけでICT機器を授業で活用することになったのですか?
教員として駆け出しのころは、かつて自分が受けた授業をトレースして行っていました。すると、自分が生徒のときには意識していなかった「先生は何度も同じ内容を板書している」ことに気付いたのです。
そして「板書中に何を考えているのか」、その視点や思考について生徒に直接聞いてみました。すると、「先生に隠れて見えないから板書が終わるまで待っている」「指示がなければ何もしてない」といったことがわかったのです。そこで、生徒が死角なしにずっと黒板を見ることができ、ロスがない授業の方法は何かないか……と考えて、ICTが持つ力の必要性にたどり着いたのです。
プロジェクター導入で授業がスピードアップ!
――プロジェクターを使って大きく変わったことはありますか?
まず、圧倒的に授業スピードが変わりましたね。ボタン1つを押すだけですぐ説明に入れます。私が黒板に書く時間がなくなり、生徒を見ている時間が圧倒的に多くなりました。結果として、生徒が寝たり内職したりしなくなりました(笑)。
――先生がずっと見ていることで、生徒も受け身にならず、主体性を持つようになりそうですね。
そうですね、その部分はすごく変わりました。生徒からも「先生に隠れて板書が見えないということがなくなった」と、好評でした。
――国語の授業では、具体的にはどのように活用されているのでしょうか。
1つは、本文や解説をPowerPointで作るスタイルです。解説をアニメーションで作っておくと、「ここは四角で囲むんだよ」と話しながらボタンを押すと文章が四角で囲まれる。資料はすべてPowerPointでも作成できますが、私は少し手書きの部分も入れないと熱量が伝わりにくいと思っています。ですので、プロジェクターで映す部分と、手で書きこむ部分を分けています。
――授業中、生徒がプロジェクターを使って発表することもあるとお聞きしました。
はい。たとえば「この作品についてどう考えるか」といったテーマを考えてもらい、教室の前に出て発表します。生徒がGoogle Classroomに自分のデータをアップロードし、私がパソコンでそのデータをプロジェクターで映します。ページ送りは生徒のタイミングでできるように操作を教えて、生徒が自ら行っていました。