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イベントレポート(プログラミング教育)

「プログラミングをもっと簡単に」――幼児から楽しめるプログラミング言語『ビスケット』が示す、プログラミング教育の課題解決【未来の先生展2017レポート】


 8月26~27日の2日間、武蔵野大学有明キャンパスを貸し切り、教育イベント『未来の先生展2017』が開催された。「体験型“未来の教育ショーケース”」として、国内外から多様なジャンルの教育実践家が、これからの教育の在り方を模索し、実践する講義やワークショップを行った当イベント。今年が1回目の開催ながら、2日間で計2400人の教育関係者や一般の親子連れなどが訪れた。2日間で開催されたプログラムは130以上。21世紀型の教育、国際系教育、ICT、教科横断型授業など、多岐にわたった内容が特徴だが、その中から興味深いプログラムを紹介する。

『ビスケット』開発者・原田康徳氏が語る現在のプログラミング

 今後需要が高まるプログラミング教育の一例として行われたセッションが、合同会社デジタルポケット代表の原田康徳氏による、『え?プログラミングってこんなに簡単でいいの? プログラミング教育の決定版!ビスケットとその教え方』だ。

「パソコンと同様に、プログラミングも簡単になっている」と話す、原田康徳氏
「パソコンと同様に、プログラミングも簡単になっている」と話す、原田康徳氏

 『ビスケット』は、2003年に原田氏が開発したビジュアルプログラミングの言語。パソコンのブラウザ上で利用できるほか、スマホ/タブレット用のアプリも無料で公開されている。ビジュアルプログラミングの中でも特に使いやすく、幼児からできるプログラミング教材として注目を集め、学校の授業のほか、ファシリテーターによるワークショップが全国で開催中だ。

 この講座では原田氏自ら、ビスケット開発の経緯からビスケットの楽しみ方、教育現場での活用方法までを解説した。参加者には1人1台のタブレットが用意され、壇上の原田氏とともに、実際にビスケットにふれるワークショップも行われた。

「今の時代に合ったプログラミングを教えたい」

 プログラムの最初に、原田氏は「キーボードだけでパソコンを使っていた昔と比べて、現在は画面にタッチして操作できるようになった。パソコンは進化しているのだから、プログラミングも進化していかなければ」と語った。2003年に最初のバージョンが完成したビスケットは、「パソコンが簡単になったように、プログラミングも多くの人が学べるようにもっと簡単に」という趣旨のもと、改良を重ね、現在はVer.5になっている。

 未就学児を対象にした多くのプログラミング教室でビスケットが採用されており、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業においては11校でビスケットを使った授業が実施された。今夏に、全国でビスケットを学んだ子どもは、のべ2700人以上にものぼる。

文字が一切ない「ビスケット」の画面

 次に行われたワークショップでは、原田氏の解説を聞きながら、参加者も一緒にタブレットを操作し、ビスケットの楽しさを体験した。

 ビスケットの最大の特徴は、操作では一切数字や文字が使われていないことだ。『Scratch』に代表されるブロックプログラミングよりさらに直感的な操作を目指しており、操作はいたってシンプルだ。自分で絵や文字を描き、それを動かす。すると、画面の中で自分の絵が指示どおりに動く。

ビスケットの操作画面。右側にツールが集まっていて、左側のプレビュー画面で動きが確認できる
ビスケットの操作画面。右側にツールが集まっていて、左側のプレビュー画面で動きが確認できる

 ビスケットの中で重要な役割を果たすのが、ツールにあるメガネ型のフレームだ。左と右の円に同じ絵を入れることで、簡単に絵を動かすことができる。これまでのプログラミングでは、オブジェクトを動かすために数値を設定したり、コマンドを打ち込んだりしなければいけなかったが、ビスケットには「数字や文字を打ち込む」操作はない。左右の絵の位置をずらして配置するだけで、その差分だけ絵が動くのだ。独特のインターフェイスのため最初はとまどうかもしれないが、「絵をずらせばずらすほど、たくさん動く」という仕組みを理解すれば、幼児でもどんどん動きを作っていくことができる。

 また、メガネの数は自由に増やすことができ、ひとつでは単純な動きしかできなかったものが、複数組み合わせることで複雑なものを作り出していける。原田氏は、段階を踏んでいくことで、最初は用意された絵を左右に動かすだけだったものが、次第に複雑な動きができるようになる過程を紹介した。

ビスケットの応用例。3つの絵を組み合わせてみると、「卵が割れると、ロケットが飛び出し、空に飛んでいく」という仕掛けのある動きも表現できるようになる
ビスケットの応用例。3つの絵を組み合わせてみると、「卵が割れると、ロケットが飛び出し、空に飛んでいく」という仕掛けのある動きも表現できるようになる

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動きを組み合わせることで複雑なゲーム作品まで制作

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この記事の著者

相川 いずみ(アイカワ イズミ)

 教育ライター/編集者。パソコン週刊誌の編集を経て、現在はフリーランスとして、教育におけるデジタル活用を中心に、全国の学校を取材・執筆を行っている。渋谷区こどもテーブル「みらい区」を発足しプログラミング体験教室などを開催したほか、シニア向けサポートを行う渋谷区デジタル活用支援員としても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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