『ビスケット』開発者・原田康徳氏が語る現在のプログラミング
今後需要が高まるプログラミング教育の一例として行われたセッションが、合同会社デジタルポケット代表の原田康徳氏による、『え?プログラミングってこんなに簡単でいいの? プログラミング教育の決定版!ビスケットとその教え方』だ。
『ビスケット』は、2003年に原田氏が開発したビジュアルプログラミングの言語。パソコンのブラウザ上で利用できるほか、スマホ/タブレット用のアプリも無料で公開されている。ビジュアルプログラミングの中でも特に使いやすく、幼児からできるプログラミング教材として注目を集め、学校の授業のほか、ファシリテーターによるワークショップが全国で開催中だ。
この講座では原田氏自ら、ビスケット開発の経緯からビスケットの楽しみ方、教育現場での活用方法までを解説した。参加者には1人1台のタブレットが用意され、壇上の原田氏とともに、実際にビスケットにふれるワークショップも行われた。
「今の時代に合ったプログラミングを教えたい」
プログラムの最初に、原田氏は「キーボードだけでパソコンを使っていた昔と比べて、現在は画面にタッチして操作できるようになった。パソコンは進化しているのだから、プログラミングも進化していかなければ」と語った。2003年に最初のバージョンが完成したビスケットは、「パソコンが簡単になったように、プログラミングも多くの人が学べるようにもっと簡単に」という趣旨のもと、改良を重ね、現在はVer.5になっている。
未就学児を対象にした多くのプログラミング教室でビスケットが採用されており、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業においては11校でビスケットを使った授業が実施された。今夏に、全国でビスケットを学んだ子どもは、のべ2700人以上にものぼる。
文字が一切ない「ビスケット」の画面
次に行われたワークショップでは、原田氏の解説を聞きながら、参加者も一緒にタブレットを操作し、ビスケットの楽しさを体験した。
ビスケットの最大の特徴は、操作では一切数字や文字が使われていないことだ。『Scratch』に代表されるブロックプログラミングよりさらに直感的な操作を目指しており、操作はいたってシンプルだ。自分で絵や文字を描き、それを動かす。すると、画面の中で自分の絵が指示どおりに動く。
ビスケットの中で重要な役割を果たすのが、ツールにあるメガネ型のフレームだ。左と右の円に同じ絵を入れることで、簡単に絵を動かすことができる。これまでのプログラミングでは、オブジェクトを動かすために数値を設定したり、コマンドを打ち込んだりしなければいけなかったが、ビスケットには「数字や文字を打ち込む」操作はない。左右の絵の位置をずらして配置するだけで、その差分だけ絵が動くのだ。独特のインターフェイスのため最初はとまどうかもしれないが、「絵をずらせばずらすほど、たくさん動く」という仕組みを理解すれば、幼児でもどんどん動きを作っていくことができる。
また、メガネの数は自由に増やすことができ、ひとつでは単純な動きしかできなかったものが、複数組み合わせることで複雑なものを作り出していける。原田氏は、段階を踏んでいくことで、最初は用意された絵を左右に動かすだけだったものが、次第に複雑な動きができるようになる過程を紹介した。