同志社中学校・高等学校のICT環境
同志社中学校・高等学校では、現在全生徒がiPadを1人1台利用し、授業やさまざまな活動で使用している。iPad活用のスタートは2012年にさかのぼり、1人1台の環境は2014年の新中学1年生よりスタートし、3年がかりで全中学生に整えた。2017年には高校でもiPadの活用を始め、翌年の2018に生徒用のPC貸出機としてMacBook Air40台を整備、状況に応じて併用している。いまでこそ全校で活用しているとは言え、段階的に導入してきた軌跡が見える。
全教室にWi-Fiとプロジェクターを整備し、どこでも手軽に使える。データはクラウドで管理しているが、当初大手のソリューションは存在しなかったため、独自に学習ポータルサイトを構築して運用してきた。生徒の端末はMDMで一括管理し、本年度からは「Apple School Manager」を導入したためさらに利便性が高まった。
「こうしたハード・ソフト両面での環境作りは、パソコンやiPadに苦手意識のある先生のハードルを下げ『普段使い』ができるようにするために大切です」と反田教諭は振り返る。
また、ICTの導入はハードありきではなく、まず「どのような教育(授業)を行うか?」というビジョンを持つことが重要だと指摘した。その上で「ICTはどのように活用するか?」その実現には「どのようなICT環境が必要か?」とステップを踏んで考えるのだ。
例えば、同校ではiPad活用のビジョンとして「学びの基礎・基本」の「ABC」をキーワードとして共有している。
- Active Learning(アクティブラーニング)
- Blended Learning(オンライン・eラーニングの要素を取り入れたブレンド型学習)
- Co-Creative Learning(共創する学び)
GIGAスクール構想においてもハード面に目が行きがちだが、機器やネットワークが整っても、活用の必要性を感じていない現場では生かされない。このようなビジョンを共有することで、ICT機器の使いどころをすべての先生がイメージできるようにするのは大切だろう。こうした意識の地盤作りは、これからハードの整備にとりかかる自治体や学校には大いに参考になるはずだ。
ICTの普段使いが生きた英語の授業
校内のICT推進役を務める反田教諭は、中学校の英語を担当している。自身の英語の授業におけるICT活用が紹介された。
英語学習用ロボット
英語の授業において、生徒の発話量を増やすことはひとつの課題だ。そこで「Musio X(ミュージオ エックス)」というAI搭載の英語学習用ロボットを活用し、会話や復唱などの練習に使っている。管理機能では生徒の発音間違いの確認ができるので、教師は傾向を把握して指導に生かすことができる。
オンラインサービス
フィリピンを拠点にする「レアジョブ英会話」のオンライン英会話システムを活用し、生徒3人対先生1人のグループレッスンを授業時間内に行う。また、動画で英語表現を学び発話判定ができる「English Central」のサービスを、自主学習を中心に活用している。レッスン内容や教材の選定は反田教諭自身が行いサービス側に任せているわけではない。また、Appleの「iTunes U」を活用し教材を配信しているので生徒は教材にアクセスしやすい。
4技能の連携
年に数回、テーマに沿ったフリーライティングの課題を出すが、この採点もアウトソーシングしている。採点を依頼するため、ていねいにルーブリック(評価基準)を定め、生徒にもその基準を開示するという。添削を受けた文章は、生徒が各自「iTextSpeaker」というアプリで読み上げ音声を確認しながら、スピーキングの練習をする。さらに、内容に即したインタビューテストをオンライン英会話を通じて行う。ライティングに始まるひとつの流れで4技能の連携をしているわけだ。
ロボットやアプリを使ったりアウトソーシングしたりすると聞くと「丸投げ」するイメージを持ちがちだが、決してそうではないことががわかる。先生が1人で290名もの個別指導をすることは物理的な限界があっても、テクノロジーを活用することで、できることの分量や可能性はがらりと変わる。ここで紹介した手段の中には、公立の学校では高価で手の出せないものもあるだろうが、無料や安価なアプリ、サービスなど、通信環境さえあればすぐにでも利用できるものもあり、参考になる。