数学が分からなくても、AIの本質は体験できる
「未来の学びプログラミング教育推進月間」は、民間企業の協力のもと、文部科学省、総務省、経済産業省が実施する、プログラミング教育の準備推進のための取り組み。今回の町田第三小学校での実証授業も、その活動の1つとして行われた。
この授業の教材と、指導案の作成に協力したのはGoogle。具体的には、「AIとプログラミングで、身近な課題を解決しよう」というテーマで、プログラミングを体験し、社会でAIがどのように生かせるのか探究する授業カリキュラムを、協力して作成した。また、AIを組み込むプログラミングの教材には、ビジュアルプログラミングのScratch3.0を用い、その拡張機能でTensorFlow(Googleが開発した機械学習の仕組み)を動かせるようにした。
カリキュラムの開発に関わったGoogleのデベロッパー アドボケイト 佐藤一憲氏は「数式や数学が分からなくても、AIの本質は体験できると思った」と話し、AIプログラミングの仕方を学んでほしいのではなく、その仕組みを肌で実感してほしいといった意図を明らかにした。
もともと35コマ(総合の時間の1年間のコマ数)の想定で作られたこのカリキュラムを、町田第三小学校では7時間に短縮して行う。今回はその授業の3回目を取材した。
1回目は、きゅうり農家がきゅうりの選別にAIを導入した事例や、クリーニング店の自動レジにAIが組み込まれているといった事例の紹介動画を見て、身近にAIが活用されていることを学んだ。2回目の授業では、実際に画像認識を体験。まずは認識しやすい、りんごやいちごの絵を読み込んで学習させ、Scratchを使ってプログラムを組むところまで取り組んだ。
3回目となった今回は、自分で持ってきたアイテムを画像認識させてプログラムに組み込み、実行するところまでを体験。どんなアイデアや発見があったのだろうか。
つまづきやすい作業はみんなで確認、児童のアイデアも生かす
教室ではすでに生徒たちがChromebookを机上に置いて待機。まずは先生が今回の授業の「めあて」と「注意点」を、児童たちに呼びかけながら説明した。
今回の目的は、「自分で決めたものを画像認識させて、言葉をつけよう」だ。注意点は「全角半角の切り替えをどのようにやるか覚えておく」などの3つ。間違いやすい作業については、最初にみんなで共有しておくことで、都度の対応が最小限で済む。
前回は、紙に描いたりんごやいちごの絵など、認識しやすいものだったが、今回は自分たちが持ってきたものを撮影し読み込む。撮影の際、余計なものが写り込んでしまう可能性も考えて、全員が白い画用紙を準備していた。これは、前回までの授業の中で、児童たちから出たアイデアだというから驚きだ。
AIトレーニングのために、まずは持ってきたアイテムを撮影する児童たち。ぬいぐるみやフィギュア、自分で描いた絵、三角定規など、アイテムはさまざまだ。みんな、角度や位置を調整しながら数枚の写真を撮影していた。
続いて、撮影した複数枚の写真をアップロードする。すると、「カギ」が出てくる。その番号をコピーして、プログラムに組み込む。これによって、画像認識を組み込んだプログラミングが可能になる。
コピーがうまくいかない場合は、打ち間違いに気をつけながら手入力する方法をすすめていた。
ブロックを並べるプログラミングは、前回作成したものを読み込むだけで済むよう準備してあった。カギや返す言葉、見る秒数を変更して自分のアイテムを認識するプログラムに書き換えていた。