どんな職業でも「伝える力」は求められる
6月19日、西脇氏の著書『プレゼンドリル 伝えかた・話しかた(以下、プレゼンドリル)』が発売。それを記念したイベント「親子でプレゼン!西脇資哲×リンダ・リウカスと一緒にプレゼンテーションを学んでみよう!」が、発売の10日前となる6月9日に開催された。
エバンジェリスト活動で身につけたプレゼンテーション能力を生かし、これまで企業や官公庁など、さまざまな場所で社会人向けにプレゼンテーション講座を行ってきた西脇氏。2010年に「エバンジェリスト養成講座」を開始し、2015年にはそれをまとめた『新エバンジェリスト養成講座』を翔泳社から出版。こうした活動をする中で、「小中学生にも教えてほしい」といった要望があり、5年前より、立命館小学校で「上手に伝えること=プレゼンテーション」を学ぶ授業を行っている。今回出版した『プレゼンドリル』は実際に立命館小学校で西脇氏が行っている授業を書籍化したものだ。子どもにもわかりやすい言葉が使われているが、仕立ては大人向けの『新エバンジェリスト養成講座』と同様の章立てになっており、親子で一緒にプレゼンテーションが学ぶことができる。イベント当日は35組の家族が参加。会場はほぼ満席となった。
まずは西脇氏が登壇。セッション冒頭で、「AIが人間の能力を完全に上回るようになると、多くの職業・作業をAIが担うことになります。今の子どもたちの65%は、大学卒業時に現在ない職業に就く。しかし、どの職業のどの立場でも求められる能力があります。それが伝える力です」と熱く語る。
例えばYouTuberは、現在小中学生の中で人気の職業である。YouTuberに欠かせないのが、インプットではなくアウトプット、つまり考え発信する力である。その能力を身につけないと、YouTuberとして世界に羽ばたくことはできない。だが小学校や中学校で行っているのはインプットの教育である。
「例えば『リンゴの重さは250グラム』とファクトを教えるインプットの教育はもちろん大事です。ですが、これからはリンゴの重さを『ミカンより重い』といったように、自分の視点や考えをプラスして相手に伝える能力を身につけることがより重要となります。人生はプレゼンテーションの連続だからです」(西脇氏)
成長と共に伝える能力は衰える
だが、私たちは成長と共に伝える能力が衰えていくという。
「小学生は本当にプレゼンテーション能力が高い。棚のものを取ってもらうときでも『あれ取って』で通じます。これは相手の顔を見て、ちゃんと表現して伝えているからです。しかし中学生になって思春期を迎えると、急に表現力が減ってしまう。プレゼンテーション力が減ったまま大人になって引き上げようと思っても大変。だから子どものうちに身につけておくことが大切なんです」(西脇氏)
2016年より京都大学iPS細胞研究所のコミュニケーションアドバイザーに就任した西脇氏。ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授も、当初は手や指を動かすことなくプレゼンテーションを行っており、「あまりうまくなかった」と西脇氏は振り返る。それが今では手や指を大きく動かすようになり、プレゼンテーション上手とも言われている。
さらにプレゼンテーション上手と言われるもうひとつのコツがある。それは「事実(ファクト)と意見(オピニオン)を意識し、順序を設定すること」だという。
「こうした伝える力が身につくよう、ドリル形式で提供しています。伝える力を身につけることで仲間を増やすことができるのです。ぜひ、子どものうちに伝えかたを学んでください」(西脇氏)