「Excedo」は、スマートフォン上で全て完結するオンラインプログラムだが、単に手軽さだけが魅力の、オンライン英会話やeラーニングのサービスではない。「グローバルで活躍するビジネスマンに必要なキー・コンピテンシー(主要能力)」を身に付けることを目的にした、コミュニケーションや異文化対応のスキルアップを含んだ独自のプログラムになっている。
このゴール設定にはどんな背景があるのか、また、その学習アプローチとしてどんな手法がとられているのか。今回、Excedo CEO タス・ヴィグラットシス氏とExcedoの学習デザインおよび講師管理担当ディレクター デブラ・マーシュ氏、そしてExcedo 日本代表の坂東治忠氏にお話を伺った。
多くの人に不足している、関係性を築くためのコミュニケーションスキルを磨く
――まずは簡単に自己紹介をお願いします。
ヴィグラットシス氏:私はExcedoのCEOを務めています。以前は、ピアソンPLC社(世界最大規模の教育サービス会社)にいました。それ以前にはメディアでの経験も何社かあります。フィナンシャル・タイムズでは、デジタルの分野に主に注力していました。生まれはギリシャで、5カ国語を話し、語学に関心をずっと持ってきました。
マーシュ氏:私はExcedoで学習デザイン、講師管理のディレクターをしています。これまで、専門の資格を持って、ヨーロッパなどさまざまな国の大人向けに英語を教えてきました。中国や南米などで、教師のトレーナーとしての経験もあります。長年、テクノロジーやオンラインを活用した教育にも携わってきました。
私は言語学者でもあります。現在フランス在住で、フランス語とドイツ語も話し、常に「人がどのように言語を学ぶか」といった点に大きな関心を注いできました。また、テクノロジーがそれをどうサポートすることができるか、といった観点からこの仕事に関わっています。私自身はテクノロジーの専門家ではありませんが、教育の専門家としてExcedoに携わっています。
――Excedoのプログラムは、独自の「スキル・フレームワーク」で構成されていますが(下図参照)、これらはなぜ必要で、どういった経緯で生まれたのでしょうか。
ヴィグラットシス氏:まず私たちは「人々と企業が国際ビジネスにおいて成功してほしい」と考え、その観点から、コミュニケーションスキルに注目するに至りました。(社内の)議論の中で意見が一致したのは、大半の人が、役に立つ形で言語を使いこなす能力に欠けている部分があるということ。「読む力」「書く力」はあっても、関係性を築くためのコミュニケーションスキルが不足しているということでした。
そこから生まれたのがExcedo独自のスキル・フレームワークです。私たちは調査を行い、ビジネスパーソンが自信を持ったコミュニケーションができるようになるために、鍵となる能力を特定しました。例えば「交渉力」「チームマネジメント」「自分の信じる価値観を相手に訴える力」などがそれにあたります。さまざまなパーツを組み合わせることで、実際のビジネスのシーンで求められるスキルを向上できるように構成されています。
マーシュ氏:Excedoのスキル・フレームワークは、「今必要とされるスキル」と「将来必要になるスキル」は何であるか、といった調査に基づいています。今、テクノロジーの進化によって仕事が奪われるのではないかといった懸念が叫ばれていますが、私たちの調査は、将来「チームマネジメント」や「交渉力」といったスキルが必要になることを示唆しています。
つまり、将来重要になってくるのはコミュニケーションに関連するスキルであると言えます。Excedoのプログラムはこの考えを基に構築され、「今必要とされるスキル」と「将来必要になるスキル」両方をカバーしていきます。
――そうしたスキルを身に付けるために、「アクティブラーニング」「マイクロラーニング」「実践的なビジネスのシチュエーション演習」などを採用しているわけですね。
ヴィグラットシス氏:スキル・フレームワークを設定した後、最も効果的な教育法を模索する段になって「アクティブラーニング」を導入することを決定したのです。「アクティブラーニング」の効果の高さは、多くのエビデンスが示していますが、特にコミュニケーションとスピーキングにおいては、他の教育法より優れていることが証明されています。多くの実践によって、学習者が自信を持ち違和感なく言語を使えるようになっていくからです。
また、ビジネスパーソンにこういった学習で成功してもらうためには、「教室の中での学習ではなく、外に出なくてはいけない」といった認識を持ちました。現実のビジネスライフで学習を進められるよう、モバイル対応やマイクロラーニングを採用しました。
こういったやり方によって、利便性が上がるだけでなく、実際に学んだことを吸収維持するリテンションもよくなります。さらに関与度(エンゲージメント)や修了率も向上します。
マーシュ氏:言語学習の観点から追加で申し上げますと、どんな言語学習においても、「コンテキスト(文脈)」が最も大事になります。なのでExcedoのプログラムでも、ビジネスパーソンにとって重要なコンテキストを常にベースにしています。
さらに「効果を発揮する言語学習者になってもらうために、私たちに何ができるか?」と考えました。私は長年教師をしてきた中で、学習の効果が出なかった人をたくさん見てきました。ですので、もっと能動的に学んでいただくことが、壁を乗り越えるためにより効果が高いと考えて、アクティブラーニングを取り入れています。
アクティブラーニングによって、学習者自身が学びにエンゲージし、何を学んでいるのか理解し、徐々に自信がついてきます。それによって、能動的に言語を使うことができるようになる。Excedoが最終的に目指しているのは、一人一人がアクティブに言語を使えるようになることですが、そのためにまずは「アクティブな学習者」になってもらう、ということです。
坂東氏:付け加えますと、Excedoではチームメンバーが10カ国以上にまたがって製品開発をしています。これは完璧なリモートワークで、SNSのプラットフォームで議論するなど、デジタルの環境を通してリアルな会社を運営しているのです。日本の会社では働き方改革などで、こういったデジタルなワーキングスタイルをこれから取り入れていくところが多いでしょう。
SNSを使って学習者同士が協業するレッスン「Collaborate」を用意している(上図参照)のは、学習方法としてのアクティブラーニングを推進する目的に加えて、スマートワークを取り入れる意味もあります。デジタルを取り入れた働き方に慣れてもらえることは、教材がもたらす利点の1つです。