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AI時代に本当に必要な教育とは? 世界のトレンドから学ぶ「未来の教育」の形

日本教育にイノベーションを ~AI時代に本当に必要な教育とは~ 第1回

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 本連載では、教員を目指す大学生の二人が感じた「画一的な内容を一斉授業で教える」旧来の公教育に対する疑問と、今後求められる「学びの大転換」の参考として、日本の教育の形が当たり前ではない世界各国の教育トレンドを実地調査した内容をお伝えしていきます。

「画一的な内容を一斉授業で教えていく」今の公教育に対する疑問と、ロールモデルとなりうる海外動向

 はじめまして。北海道教育大学札幌校4年生の長澤瑞木・越智達也と申します。私たちは現在教員養成大学に通っており、教員を目指して、理論と実践を大学で学んできました。大学3年生の夏休みには5週間の教育実習を経験し、そこでは勉強不足を痛感しました。

 そこで、教員としての力を付けるため、私たちは大学内だけでなく、大学の外にも学びのアンテナを広げていきました。しかし、学びを続けていく中で感じたことがあります。それは「今の日本の教育は時代にそぐわなくなっているのではないか」「AI時代と言われるこれからの時代に、本当に必要な教育とは何なのか」という疑問です。もちろん日本の教育には数多くの優れた点があると思っています。特に戦後の日本の高度経済成長には、教育が大きな役割を果たしました。大量生産・大量消費の産業主義時代に、上質かつ均質な労働者を育てるためには、合理的な仕組みであったと思います。しかしその時代は終わり、社会は大きく変化し、社会が求める人材像も変わってきています。それにも関わらず、教育だけが置き去りになってはいないでしょうか。明治以降150年間、画一的な内容を一斉授業で教えていくという教育の形はほとんど変わっていません

 現在では、質の高い授業動画を無料または格安で見ることのできる時代となっています。極端な話、私たちのような経験も実力もないような若い先生の授業を受けているよりも、経験と実力のあるベテランの先生方の授業動画を見ている方が子ども達のためになるのではないかと思ってしまったのです(年齢によって実力差があるとは思っていませんが、やはり経験差はあると思います)。実際にそのようなサービスは実現されており、世界では「カーンアカデミー」や「MOOC(大規模オープンオンライン講座)」、日本では「スタディサプリ」や「NHK for School」などがあります。また革新的な学校も次々と現れており、世界では「ミネルバ大学」、日本では「N高等学校」や「ゼロ高等学院」などがあり、授業はオンラインで受けることが可能です。さらには、AIによって、個人の習熟度に合わせることのできる「アダプティブ・ラーニング」の研究・開発も進められています。これらの革新的なサービスや学校は、今後さらに増えていくことが予想されます。これは未来の話ではなく、現実に起こっている話なのです。

 つまり「知識の伝達」の部分では、インターネットさえあれば、一人ひとりが自分のペースで、自分に合った学び方で学ぶことができるようになっているのです。もちろん、生身の先生から教わりたいという需要はまだまだあるとは思います。しかし、これだけ学び方が多様化し、学びのツールが揃っている時代に、画一的な内容を一斉授業で教えていくという形しか選べない今の公教育の形には疑問を感じざるを得ませんでした。そこで私たちは、AIによってあらゆる産業が再定義されていく中、教育の在り方そのものも根本から考え直さなければならない時代になったと考えています。

 では、日本の教育は一体どこに向かおうとしているのか。今日本の学校教育は、150年ぶりの地殻変動が起きようとしています。文部科学省が2020年に向けて推進している教育制度改革は、日本人の「学び」の古い常識を大きく塗り替え、21世紀の社会を生き抜く"新しい人材"を育成するための試みです。新学習指導要領で「アクティブ・ラーニング」が提唱されたことは、今後日本の教育が20年かけて向かうべき、学びの大転換へ舵を切ったことを示していると考えています。では、なぜ"新しい人材"や"学びの大転換"が求められているのでしょうか。それは、子どもたちの65%は将来、今は存在していない職業に就くとの予測や、今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高いなどの予測があるからです(※1)。もちろん予測の数値に誤差はあると思います。しかし、かつてのような、偏差値の高い大学に入り、公務員や大企業に就職をすれば、終身雇用で生涯安泰、老後は年金生活というロールモデルは崩れ始めています。つまり、これまでの常識がまったく通用しない時代がやってくるのです。社会は凄まじいスピードで変化しており、今後はさらにそのスピードは増していきます。子どもの頃に教わった知識や技術、身に付けた力が社会に出てから通用しないということが起こってくる可能性があるのです。そのギャップはこれからさらに増していくことが考えられます。

 そこで、私たちは日本の教育の形が当たり前ではない世界各国の教育トレンドから、学べる点が数多くあると考えました。もちろん、社会の仕組みや文化の違う他国での取り組みを、そのまま同じように日本で取り入れれば良いと安易に考えているわけではありません。取り入れていく際には、日本の社会や国民性に合わせて取り入れていく必要があると思っています。しかし、日本の学びの大転換に向けて、世界各国の教育トレンドから得られる新たな視点は大きなヒントになると私たちは考えています。そしてその第一歩として、後述するオランダ教育に着目し、教育視察を行いました。なぜ、オランダなのかは、ぜひこの後のページを読んでいただければと思います。

オランダの教育視察先の学校での写真(左が長澤、右が越智)
オランダの教育視察先の学校での写真(左が長澤、右が越智)

 この不定期連載「日本教育にイノベーションを ~AI時代に本当に必要な教育とは~」では、オランダ教育視察を終えた筆者2人の視点から、各国の教育事情を踏まえて、AI時代に向けた教育・子育てに関して、少しでもためになる情報をお届けできればと思っています。

※1 参考文献


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著者プロフィール

  • 長澤 瑞木(北海道教育大学 札幌校 4年) (ナガサワ ミズキ)

    1995年生まれ。北海道教育大学札幌校教育学部。学部生4年次に石川尚子コーチとの出会いから「コーチング」を学ぶ。6月にコーチングが学校教育の基盤にあるオランダに行き教育視察を行う。10月には教育×テクノロジーの最先端を学ぶべく、アメリカ・カナダに教育視察を行う。どちらの視察もクラウドファンディングペ...

  • 越智 達也(北海道教育大学 札幌校 4年)(オチ タツヤ)

    1996年生まれ。北海道教育大学札幌校教育学部。学部生4年次に、これからの教育の在り方として、「コーチング」という考え方が学校教育の基盤にあるオランダ教育に注目。クラウドファンティングサイト「Ready for」でプロジェクトを立ち上げ、約78万円の資金を集め、オランダ教育視察を実現。その後、札幌・...

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