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オランダ教育が見据える未来の教員像 オランダのコーチング型教育(教員養成大学編)(3)

日本教育にイノベーションを ~AI時代に本当に必要な教育とは~ 第6回

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 本連載では、教員を目指す大学生の2人が感じた「画一的な内容を一斉授業で教える」旧来の公教育に対する疑問と、今後求められる「学びの大転換」の参考として、日本の教育の形が当たり前ではない世界各国の教育トレンドを実地調査した内容をお伝えしていきます。第6回では、オランダの教員養成大学を視察して得られた気づきをご紹介します。

オランダが目指す未来の教員像とは?

 第6回の本稿では、オランダの教員養成大学が見据える未来の教員像をテーマにお伝えしていきたいと思います。オランダの教員養成大学の視察の際に、大学内の様子を案内してもらうだけでなく、日本の大学との関わりを持つMeike先生(写真1 右から2番目)から私たちに講義をしていただける時間がありました。そのお話の際にオランダ教育が見据える未来の教員のビジョンに関するお話がありました。

写真1 オランダの教員養成大学での写真
写真1 オランダの教員養成大学での写真

 まずオランダでは、未来の教員の役割として主に5つの役割が掲げられていました(図1)。その中でも私たちが注目したのは、(1)デザイナーと(2)コーチの役割です。(3)~(5)は比較的日本でも言及されていると思いますが、デザイナーとコーチの役割というのはまだまだ日本では広まっていない考え方だと思います。

図1 未来の教師の役割(Marnix AcademieのMeike先生 作成資料 筆者一部修正)
図1 未来の教師の役割(Marnix AcademieのMeike先生 作成資料 筆者一部修正)

 まず(1)のデザイナーは、学びをデザインする者という意味です。学習者中心の学びを目指すオランダでは、授業の主役はあくまでも子どもたちです。授業の時間は、子どもたちが考えたり、話し合ったりすることで、試行錯誤する時間であり、教員が長々と話をする時間ではありません。子どもたちの学びを促進し、より理解を促すには、どのようなプロセスで、どのような環境をデザインすればいいのかが大切になります。そこで重要になるのが、デザイナーとしての役割です。オランダの教員養成では、「子どもが主体となった学びの環境」をいかにデザインするのかについて学びます。

 次に(2)のコーチは、子どもの学びを支える者という意味です。連載の第2回で述べたようにオランダの教育は、個に合わせた教育を目指しています。そのため、一人ひとりのモチベーションを引き出し、学びを支えることが非常に大切になります。そこで求められるのがコーチとしての役割です。子どもたちの主体的な学びを忍耐強く見守るコーチ的な存在が、教員としての望ましい在り方となります。「上からの目線」で教えるのではなく、「横からの目線」で寄り添う姿勢で接することによって、子どもたちが自ら考え、自ら理解し、自己成長していく過程を支えていくのです。

 現在、文部科学省は、「Society5.0に向けた人材育成」の中で、取り組むべき政策の方向性の一つとして、「公正に個別最適化された学びの実現」を掲げています。今後、日本の教育もEdTechの活用による教育の個別化は避けられないだろうと考えています。やはりこれまでの一斉授業には限界があるからです。成績上位層の子どもたちは退屈になり、成績下位層の子どもたちはついていけず、いわゆる「落ちこぼれ」という扱いを受けてしまいます。「落ちこぼれ」という言葉は、語弊を招く言い方かもしれませんが、そのような子どもたちが学級内にいるのも事実です。しかしそれは、その子に問題があるわけではありません。その子には、その子の学びのぺースがあるからです。ある子は半年で理解できる内容でも、ある子には2年かかる内容だったというだけのことです。そのため、オランダでは留年がマイナスのイメージとして捉えられていません。またオランダの教育が個に合わせた教育にシフトをしたきっかけは、「落ちこぼれ」と呼ばれる層を減らそうとしたことでした。

 では、EdTechによって個に合わせた教育が実現された時に、教員は必要なくなるのでしょうか。私たちはそうは考えていません。なぜなら、「一人ひとりが自分のペースに合わせて好きなように学習を進めてください」では、当然ながらうまくはいかないからです。自分1人でも学習を進めていくことのできる子どももいるとは思いますが、ほとんどの子どもたちはそうではないと思います。そのため、子どもたちに寄り添い、モチベートしていく大人の存在は必要不可欠です。また個に合わせた教育がどんなに進められたとしても、学校において協働する学びの場は非常に大切になります。Meike先生からは、これからの教員に必要な能力として、「connected」と「inspired」という2つのキーワードを教えてくれました(図2)。どのようにして子どもたち同士の学びをつなげていくのか。また、どのようにして子どもたちの心に火を灯すのか。未来の教員には、まさにこの2つが求められてくることになるでしょう。

図2 未来の教員に必要な能力(Marnix AcademieのMeike先生 作成資料 筆者一部修正)

図2 未来の教員に必要な能力(Marnix AcademieのMeike先生 作成資料 筆者一部修正)

 オランダの教育からは少し話が逸れますが、アメリカ出身の教育者である、ウィリアム・アーサー・ウォードは以下の言葉を残しています。

The mediocre teacher tells. 
(平凡な教師は、ただしゃべる)

The good teacher explains.
(よい教師は、説明する)

The superior teacher demonstrates.
(すぐれた教師は、自分でやってみせる)

The great teacher inspires.
(偉大な教師は、やってみようという気にさせる)

 現在では、EdTechによって学びのツールが増え、学びの在り方が多様化しています。今後は、これらがさらに増え、発展していくことになります。彼の言葉を借りるのであれば、まさに「偉大な教師」が求められる時代になっていくのではないでしょうか。


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著者プロフィール

  • 長澤 瑞木(東京学芸大学大学院 修士課程) (ナガサワ ミズキ)

    1995年生まれ。北海道教育大学 札幌校 教育学部卒。学部生4年次に石川尚子コーチとの出会いから「コーチング」を学ぶ。6月にコーチングが学校教育の基盤にあるオランダに行き教育視察を行う。10月には教育×テクノロジーの最先端を学ぶべく、アメリカ・カナダに教育視察を行う。どちらの視察もクラウドファンディ...

  • 越智 達也(北海道教育大学 札幌校 4年)(オチ タツヤ)

    1996年生まれ。北海道教育大学札幌校教育学部。学部生4年次に、これからの教育の在り方として、「コーチング」という考え方が学校教育の基盤にあるオランダ教育に注目。クラウドファンティングサイト「Ready for」でプロジェクトを立ち上げ、約78万円の資金を集め、オランダ教育視察を実現。その後、札幌・...

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