【解説】思考を「声に出す」:授業での見せ方
授業で生成AIを扱う際に大切なのは、教師が「どのように考えているのか」を、子どもにわかる形で示すことです。Think-Aloud(思考発話)やCoping Modelで述べたように、判断や迷いのプロセスをあえて声に出すことで、子どもは「生成AIの出力をそのまま受け取らず、確かめながら使う姿勢」を自然に身につけていきます。これは、生成AIに限らず、通常の授業で行われる行為であり、先生方が得意とすることでしょう。
ですから、実際の授業では、特別な技法は必要ありません。生成AIの回答を見ながら、次のような短いつぶやきを意図的に挟むだけで十分だと言えます。
「どこが根拠なのかな?」
「ここは少し怪しいですね。教科書と照らし合わせてみましょう」
「この表現は偏っていないでしょうか?」
「別の視点も聞いてみたほうがよさそうですね」
これらの声かけには、文科省ガイドラインで示されている「人間中心・情報活用能力・公平性」といった観点が自然に含まれています。
出典を示すという視点について
また、授業で生成AIを使う際には、著作権や出典の扱いも重要なポイントになります。例えば、生成AIが作った説明文や資料をそのまま用いる場合には、次のような配慮を教師自身がやってみせる必要があります。
- この説明は生成AIが作成したものであることを明記する
- 元となる資料がある場合は、出典を必ず示す
- 引用部分がある場合は、どこが引用なのかをはっきりさせる
教師が生成AIの出力をそのまま使わず、「引用部分はここですね」「この説明は生成AIが作ったものです」と丁寧に扱う姿勢を示すことで、子どもたちは「情報の出どころを明確にする習慣」を自然に身につけていきます。
著作権や出典の観点で押さえておきたいのは、生成AIの出力をそのまま利用する場合には、その旨を明記させることです。ただし、その前提として「本当にこの出力を使ってよいのか」を批判的に検討し、内容を評価する工程を必ず挟む必要があります。
これはガイドラインの「人間中心の視点」とも一致しており、生成AIが出した案を無条件に採用するのではなく、人間が判断し、責任をもって扱う姿勢を育てることにつながります。
つまずきや確認のプロセスを見せる意味
さらに、教師があえて立ち止まり、迷い、確認する姿は、Coping Modelの効果として述べたように、子どもに安心感を与え、自己調整学習を促します。完璧な回答を提示するより、試行錯誤のプロセスを見せるほうが、生成AIとの適切な距離感を理解しやすくなります。
こうした「思考の実況中継」は特別な準備を必要とせず、日常の授業の中で無理なく取り入れることができます。生成AIを扱う授業では、教師が先にその思考過程を外化してみせることが、子どもにとって安全で主体的な学びにつながる大切なステップとなります。
