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EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

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GIGAスクール構想時代における学級担任のススメ

「生成AI」を学校の授業に取り入れる際に必ず注意すべきこととは? 思考を「見せる」ところから始める

GIGAスクール構想時代における学級担任のススメ 第15回

認知オフローディングを「ジャンプ台」に変える

さっき出てきた認知オフローディングって、最近よく危険だと言われますよね。実際、研究でも「批判的思考が下がる」という話を見かけました
一郎
うん。その話、ちゃんと元の論文まで見た?
……正直、タイトルと要約だけで判断していたかもしれません
一郎
じゃあ、少しだけ中身を整理しよう。怖いのは「研究結果そのものじゃなくて、誤読だからね

認知オフローディングは「どう測られた」のか

一郎
2025年にMichael Gerlichが出した研究が、最近よく引用されているよ。参加者は約600人以上で、学生から社会人まで幅広い層だった
かなり大規模ですね
一郎
批判的思考力の測定に使われたのは、ハルパーン批判的思考評価(Halpern Critical Thinking Assessment:HCTA)。世界的にも信頼されている評価方法だよ
どんなテストなんですか?
一郎
単なる知識問題じゃない。例えば、
  • 文章の論理の飛躍や矛盾を見抜く
  • 主張に含まれるバイアスを指摘する
  • データから妥当な結論を導く
  • 不確実な情報をもとに判断する
  • 複雑な状況で、より良い選択肢を選ぶ
一郎
つまり、「考え抜かないと解けない課題」ばかりだ
なるほど……それで、AIを使っている人ほど点数が低かった、と

では「何が」オフロードされていたのか

一郎
ここが大事なところ。論文をよく読むと、認知オフローディングが起きていた場面は、かなりはっきりしている
具体的には?
一郎
大きく3つだね。 1つ目。情報の要約や抽出を、AIに任せきりにしていたケース
さっき話していた要約ですね
一郎
そう。文章構造を自分で追わず、AIの「3行まとめ」をそのまま受け取って終わる。 2つ目。意思決定の根拠を、AIに丸投げしていたケース
「AとB、どっちがいい?」と聞いて、返ってきた理由をそのまま採用する、といったことですか
一郎
まさにそれだよ。そして3つ目。論理の組み立てそのものを、AIに代行させていたケース
最初から「論理的な文章を書いて」と頼むことですね
一郎
うん。しかも、その出力をほとんど修正せずに使っていたんだ

「AIが悪い」のではなく、「設計が弱かった」

……それって、AIが能力を奪った、って言えるんでしょうか
一郎
そこがミソなんだ。この研究を読むと、「AIが能力を下げた」というより、「AIに任せきりでも成立してしまう課題設計だった」と読むほうが自然だ
設計、ですか
一郎
参加者がAIを使った動機の多くは「効率化」。もし、課題の評価基準が、
  • 早く
  • それっぽい
  • 形の整ったアウトプット
一郎
これだけを求めていたら、人は自然と「楽な道」を選ぶ
それって……子どもだけじゃなくて、大人も同じですね
一郎
さらに興味深い結果も出ている。教育レベルが高い参加者ほど、AIを使っても批判的思考が下がりにくかったんだ
え……それって「もともとできる人だけが使いこなせる」ってことですか?
一郎
いや、そこは誤解しやすいところだね。論文を読む限り、差を生んでいたのは「能力」というよりAIへの向き合い方だった
向き合い方?
一郎
彼らはAIを「正解を出す箱」として扱っていなかった。むしろ、自分の考えをぶつけて、揺さぶってもらう「壁打ちの相手」として使っていたんだ
なるほど……AIの答えを、そのまま信じる前提にしていなかったんですね
一郎
そう。疑う、確かめる、言い換える。その習慣が、オフローディングを「丸投げ」にしなかった

論文が示している、教師へのメッセージ

一郎
だから、この研究が突きつけているのは、禁止論じゃない
……設計論、ですね
一郎
そう。AIに丸投げしたら、そのままでは達成できない課題設計だよ
例えば?
一郎
AIに結論を出させたら、必ずこう聞く。「その結論に対して、反対意見を3つ出してみよう」とか、「この答えが間違っているとしたら、どこが一番怪しい?」とかね
……それ、AIを使っても「考えないと進めない」ですね
一郎
そう。それがジャンプ台の角度をつけるということ。跳ぶ力は子ども自身に残したまま、遠くへ行けるようにする
でも一郎先生。こういう話って、「理屈はわかるけど、研究的にはどうなの?」って言われそうです
一郎
いい視点だね。実は最近、その問いに真正面から答えようとした研究が出てきている。2025年に発表された、「Forum for Linguistic Studies」掲載の論文だ。大学生を対象に、12週間、生成AIを使った授業と使わない授業を比べている
結果はどうだったんですか?
一郎
ポイントは1つ。AIを「どう使わせたか」で、結果が真逆になった
真逆、ですか
一郎
AIに下書きやアイデア出しを任せつつ、その後に必ず「根拠は妥当か」「ほかの解釈はないか」「自分ならどう書き直すか」といった検証や省察を組み込んだ授業では、批判的思考力が有意に伸びたんだ
それって……
一郎
さっき話した「ジャンプ台」そのものだね
じゃあ、AIを使うと考える力が下がる、って話は……
一郎
丸投げを許す設計なら、下がる。でも、丸投げできない設計なら、むしろ伸びる。研究が示しているのは、その当たり前で、でも忘れられがちな事実だよ
禁止するかどうかじゃなくて……
一郎
どんな課題なら、AIに任せきりでは通用しないか。そこを考えるのが、これからの教師の仕事だね。じゃあ次は、その「プロセス」を、どうやって子どもに見せるか。いよいよ、先生自身の出番だよ

次のページ
まず教師が「AIとのやり取り」を見せる:Think-Aloud Modeling

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この記事の著者

鈴谷 大輔(スズヤ ダイスケ)

 公立小学校教諭。プログラミング教育の教員コミュニティ「Type_T」代表。みんなのコード プログラミング教育 養成塾(2019夏期集中コース)修了。プログラミング教育関連のイベント運営に複数携わる。放送大学「Scratchプログラミング指導法」ゲスト出演。Maker Faire Tokyo 201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


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