内田洋行は、ルクセンブルクのOpen Assessment Technologies(OAT)と共同で開発している次世代版CBTプラットフォーム「TAO(タオ)」のフルラインアップを、世界に先がけて日本において12月5日に発表した。
「TAO」は、オープンスタンダードな技術を採用し、CBTシステムをネットワーク上で実現することを目指して、2002年から研究と活用が続けられてきたシステム。日本では、内田洋行がOATと2016年から連携して国内でのCBT環境整備を進め、2020年には文部科学省CBTシステム「MEXCBT(メクビット)」に「TAO」が採用された。
次世代版「TAO」は、これまで世界中で培ってきた「TAO」の理念と信頼性を継承している。あらゆる国や地域の学習者が、場所や言語、環境を越えて同じ基準で学びを評価できるプラットフォームとして構築されている。
一方で、近年のクラウドの発展とIT端末の高機能化にともない、CBTプラットフォームにもより開かれた高度な機能が求められるようになってきた。具体的には、より大規模なテストを安定して実施できる性能や、柔軟にデータがつながり合う教育デジタルエコシステム、多様な受検者に対応できるアクセシビリティ機能などが挙げられる。これらの背景から、共同で次世代版の開発を推進する体制を整えるべく、OATは2023年に内田洋行グループに合流した。

次世代版「TAO」では、教育現場の多様化に対応して、誰もが公平に同じテストを受検できるようアクセシビリティの強化を行った。具体的には、国際的なWebアクセシビリティ基準「WCAG 2.1 AA」に準拠するとともに、各国政府のWebアクセシビリティ規格にも対応する。また、視覚・聴覚・肢体・認知・言語など、さまざまな特性を持つ受検者に配慮したユーザーインターフェースを取り入れている。タブレット端末やモバイル端末など画面に応じたレスポンシブデザインによってレイアウトが最適化されるほか、タッチ操作にも対応している。

加えて、世界的なCBT受検者数の増加を見据えて、大規模・高負荷に耐えるシステム構造の全面的な見直しを実施している。システムをクラウドネイティブ構造に刷新し、アクセス集中時でも自動的にリソースを拡張して、100万人規模の受験でも安定した稼働を実現する。さらに、オープンスタンダード準拠で最新の国際技術標準に対応した設計を採用。学習管理システム(LMS)や教育ツールとの柔軟な連携が可能なほか、APIも利用できる。
また、これまで単一のアプリケーションにまとまっていたモノリシックアーキテクチャーから、機能ごとに独立して動作するモジュール型プラットフォームへと刷新している。具体的なモジュール構成は、「TAO Portal(ポータルサイト兼テスト管理)」「TAO Advance(テスト受検)」「TAO Studio(新・問題作成環境)」「TAO Grader(採点)」「TAO Insights(結果分析)」となっている。これらはSaaSによって提供され、モジュール構成とライセンス体系により、あらゆる国・教育機関・試験組織に適用可能なグローバルスケールの教育インフラに柔軟に対応する。
そのほか、視覚的なUIから問題タイプを選んで、テキスト・画像・動画などのパーツをドラッグ&ドロップするだけで直感的に問題を作れるオーサリング機能を備える。次世代版の問題作成環境「TAO Studio」では、問題・テストを体系的に蓄積して、タグ付け・検索といったライブラリ機能を強化しているので、過去問題の再利用や改訂が容易になった。
今後は、国家資格試験など高いセキュリティが求められるオンライン試験にも対応できるよう、試験の不正監視機能の拡張を予定している。受検者の画面や状況のモニタリングでは、外部監視・認証サービスとの連携や自社機能の開発を組み合わせることで、より厳格な試験運営の実現を目指す。また、問題の分類やキーワードといった必要な情報(メタデータ)をAIが補完して、問題文の構成を自動で提案し、よりわかりやすい問題作成をサポートする。この中で、ジェンダーバイアスをチェックするといった問題文の表現を補正する機能なども計画しているという。
なお、2026年1月5日には、オープンソース版の「TAO Community Edition」を公開。世界中の開発者や研究者が参加するオープンソースコミュニティとともに進化を続ける。「TAO Community Edition」は、GitHubでのソースコード公開のほか、Docker版でも提供される。
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