教育サービス「オンラインのメガスタ」を運営するバンザンは、和歌山南稜高等学校と連携し、2026年4月に通信制サポート校「メガスタディ名門高等学院」を新設することを、9月18日に発表した。同校は通信制課程を通じて高校卒業資格を取得しながら、難関大受験に特化した学習指導を提供する。同日、メディア向けの説明会も開催された。

説明会には、バンザンの代表取締役社長である山田博史氏と、和歌山南稜高等学校の理事長である甲斐三樹彦氏が登壇し、両者の連携による新しい教育プログラムについて説明した。山田氏は、同社が2007年からオンライン教育に取り組んできた歴史を振り返り、その根幹にある社会問題、「都会と地方の教育格差」の解消というミッションを強調。地方において学校や塾・予備校において教師が不足している現状を示した。
バンザンは、対面教育の経験とオンライン教育のノウハウを融合させ、個人向けと法人向けの両方で事業を展開している。特に、全国で約4万人の教師を抱えていること、そしてAIを活用して授業の品質を測定する仕組みを構築していることが同社の強みだという。AIは授業中の教師と生徒の会話量や説明の明瞭さなど、約30項目にわたるデータを分析し、客観的な評価を行う。これにより、ブラックボックス化しがちなオンライン授業の質を担保し、保護者や生徒からの信頼を獲得してきた。加えて、対面授業に近づけるため、生徒の顔だけでなく手元も同時に映すシステムを導入している。

一方、和歌山南稜高等学校は、これまでスポーツ教育に注力してきたものの、ここ数年は少子化による定員割れが続いていた。寮の設備の老朽化や給与未払いによる教員のストライキなどの問題も発生し、2022年12月には生徒募集停止措置を受けていた。
そうした中、理事長に就任した甲斐氏はクラウドファンディングやSNSを通じた情報発信などを通じて学校再建に取り組み、2025年春には生徒募集停止措置の解除に至っている。加えて、今後はスポーツだけでなく学習面も強化していくといい、その取り組みの一環として、生徒の基礎学力の学び直しにバンザンのオンライン授業を導入し、10月より英語と数学の補修授業に活用していく。
さらに両者は、2026年4月に通信制サポート校であるメガスタディ名門高等学院を新設。同校は「通信制でありながら進学校」という特徴を掲げており、その背景には通信制高校の生徒数が年々増加している一方で、大学進学率が全日制に比べて低いという現状が存在する。同校では高校卒業資格を和歌山南稜高校が、大学進学のための専門的なカリキュラムをバンザンが提供するといったように役割を分担し、生徒は効率的に学びと進路対策を両立できるという。
同校では旧帝大・早慶上智・医歯薬系といった難関大学から、GMARCHや関関同立などの上位大学、さらには海外大学までを視野に入れた指導を行う。また、近年増加している総合型選抜や学校推薦型選抜にも対応し、生徒一人ひとりに合わせた「進学特化型カリキュラム」を提供。バンザンは「問題発見・課題解決能力」を育成する探究学習プログラムや、志望理由書の添削、面接指導のノウハウも有しており、ルーブリック評価といった採点基準に基づいた指導を実現しているという。
授業には従来バンザンが提供してきたサービスと同様、生徒の顔と手元を同時に映す2画面方式が導入され、授業品質を保つためにAIも活用される。さらに、全国約4万人の教師の中から、生徒の学力や志望校、性格に合わせて最適な教師をマッチングする体制も整っている。
コースは「プレミアム進学コース」「上位進学コース」の2コースが用意され、選んだコースに入試方法を掛け合わせ、一人ひとりに合った指導プランを提供する。
なお、同校では高校向けの就学支援金も利用可能だ。2026年4月からは所得制限が撤廃されるため、生徒は単位取得に必要な学費を実質無料で賄うことができる(入学金や教材費、サポート校への費用などは必要。一部の都道府県ではサポート校への費用について補助制度がある)。
山田氏は今回の新しい取り組みについて、非効率なスパルタ教育ではなく、合理的なAIを活用した授業で結果を出すと語り、これまでの実績を基盤に、生徒の大学進学を本格的に支援する姿勢を示した。
今後、バンザンは全国に提携校を増やし、この新しい教育プログラムを広めていく計画だ。地域や環境による教育格差を越え、全国の生徒が難関大受験に挑戦するチャンスを得る、新しい学びの選択肢を広げていくという。
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