SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

次回のオンラインセミナーは鋭意企画中です。準備が整い次第、お知らせいたします。

EdTechZineオンラインセミナー

EdTechZineオンラインセミナー

EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

イベントレポート(先端技術)

子どものデータやAIの利活用で法規制のない日本──EUの状況や子ども自身の声から今後のあり方を考える

【東京財団政策研究所「AI時代の先生」×内田洋行教育総合研究所】「AI時代の先生を考える」~子どものデータは誰のもの?~第3回イベントレポート


教育データを適切に利活用するには体制づくりが必要

 そのほか、データの取得同意についてもまだ議論の途中で、現状は書面での許諾がメインとなっており、今後についてはメールやフォームなどでの許諾となる可能性が高いという。これは行政機関の情報保護と同等となり、取得した情報を許諾なしに外部・内部のほかの情報とリンクさせてはならないという原則に則っている。つまり、学校もさまざまな情報が集められるが、基本的には自由にアクセスできないことが必須となる。

 後藤氏は、情報の利活用について「まずはルールづくり、そして先生の使いこなすためのスキルが重要」と語り、その一例として統計分析の概念や手法などに関する基本的な理解、子どもたちが主体的に学ぶようになるような臨床研究能力などを挙げ、それがまだ十分ではないことを指摘した。その上で、学部の4年間だけではなく、教師となってからも積み上げていく必要があると語り、大学・大学院でも現場とコラボレーションして、データサイエンスなどを活用した臨床研究能力の体験などの経験提供が必要であることを強調した。

 堀口氏も「AIと人間に共通して求められるのは、データを分析してプロファイリングや判断をする部分。同じところで期待されるため悩みが生じるが、より細分化すればAIに限界が出るはず」と述べ、「AIができるのはゴールへのルートの個別化であるが、教育という営みの中でより重要なのは、ゴールを子ども自身が決められるようにサポートすること」と語った。また、AIは常に限られたデータから判断しているということへの注意を喚起し、「例えば成績が下がったとき、AIは問題と解答のデータから、次にどの問題を出すべきかを判断するくらいしかできない。しかし、その子どもは実際には人間関係で悩んでいるのかもしれない。人間の教師であれば、AIがデータ収集できない子どもの言動や表情などから、そうした人間関係の悩みに気づき、より根本的なサポートにつなげられる可能性がある」と指摘した。

 井出氏は「教師が子どもたちと共感し、理解を深める教育の本質は、人間同士の関わりによる『人は人によって人間になる』という理念にある。AIが学びの一部を補完する可能性はあるものの、曖昧さや揺らぎ、悩みなど、生身の人間から発される感情や共感は機械には再現できない」と語り、「子どもたちは教師の不完全さや弱みさえも受け入れ、その人間性に触れることで成長する。このような教育の核となる部分は、AIでは補えず、人間の教師が果たすべき重要な役割である」と強調した。

 薩摩氏も「教師には、子どもたちと真摯に向き合い、寄り添う力が強く求められている。この力は経験年数に関係なく、日々の関わりを通じて培われるべきもの。若い教師たちが休み時間に子どもと共に遊び、学習時間とは異なる様子に気づくことは教育の一環として重要である。教育現場において、この日々の対話と触れ合いが、教師と子どもの関係を豊かにする」と同調した。

 そのほか、教職員の採用の問題から、教育を受ける権利、子どもたちの主体的な学びを支援し、豊かな人生を送るための学校のあり方として「令和の日本型学校教育」へと議論が発展。そして改めて「子どものデータは誰のもの」という当初のテーマに戻り、堀口氏が次のようにまとめた。

 「データは無体物であり、所有権の対象にはならない。だからこそ、プライバシー権の観点から、子どものデータを『子どものもの』とみなすことが必要であり、子どものデータを預かる側はその責任を果たす必要がある。そして、そうした責任を果たすためには、国や自治体全体におけるガバナンスが重要であり、各学校や各教師だけに責任を負わせるようなことがあってはならない」(堀口氏)

 子どものデータの取り扱いは極めて重要であり、未解決の問題が多く、教育現場での影響は子どもの人生を大きく左右する可能性がある。誰がそのデータに触れるのか明確にされておらず、教師の役割も問われている。今回のシンポジウムは結論を出す場ではなく、参加者がこの課題について考え続けるきっかけを作るためのものとなるだろう。会の最後には登壇者への感謝と共に、今後も議論の場を設けることの重要性が強調された。

この記事は参考になりましたか?

イベントレポート(先端技術)連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


この記事をシェア

EdTechZine(エドテックジン)
https://edtechzine.jp/article/detail/12342 2025/05/21 10:58

おすすめ

記事アクセスランキング

記事アクセスランキング

イベント

EdTechZineオンラインセミナーは、ICTで変わりつつある教育のさまざまな課題や動向にフォーカスし、最新情報をお届けしているWebメディア「EdTechZine(エドテックジン)」が主催する読者向けイベントです。現場の最前線で活躍されているゲストの方をお招きし、日々の教育実践のヒントとなるような内容を、講演とディスカッションを通してお伝えしていきます。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

記事アクセスランキング

記事アクセスランキング