1人1台端末は子どもたちの変化をキャッチするために有効
──文部科学省は、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を活用し、子どもたちの変化を早期に発見するよう呼び掛けています。
1人1台端末を活用し、子どもたちの変化をキャッチする仕組みは有効だと思います。私が代表を務めるNPO法人OVAでも「SOSフィルター」という1人1台端末向けのブラウザ拡張機能を、2024年7月より無償で提供しています。この機能は自殺や虐待、性暴力などの深刻なキーワードを検索した際に相談できる窓口を案内したり、周囲の人や相談窓口へ助けを求めるコツを表示したりするもので、検索した個人を特定するような情報は収集せず、学校や自治体にも通知は届きません。あくまで子どもたち自身がSOSを出し、セルフケアができる能力を高めるための仕組みです。三重県伊賀市をはじめとした7つの教育委員会と1つの私立学校で導入いただいており、2025年3月現在で約14万台の1人1台端末にインストールされています。これまでもこうしたサービスは有償で提供されていましたが、私たちは「子どもたちへの生きる支援の格差」を問題と捉えており、無償提供にこだわっています。

話を聞き、寄り添うことで「孤独感」が和らいでいく
──子どもたちがSOSを出すためのサポートをするツールなのですね。ではSOSを受け止める、先生をはじめとした周囲の大人はどのように対応すればよいでしょうか。
自殺のリスクがある人は「孤独感」を抱えていることが多いので、話を否定せずに聞き、問題を整理しながら、必要に応じて支援につなぐことが重要です。例えば、急に遅刻が増える子どもがいたとします。「どうしたの?」と聞いてみると「最近眠れなくて」「受験のこととかを考えて不安になる」と話してくれます。場合によっては医療につなぐ必要があります。
このように、子どもの話を聞いてみると学校だけでは解決できない問題であることも多いのです。心身の健康状態が悪化していたり、SNS上のトラブルに巻き込まれていて法的なサポートが必要だったりします。このような場合は専門家や社会資源と連携しながら先生も関わっていく必要があるでしょう。
──SNS上でのトラブルのように、時代の流れとともに悩みの形も多様化しているように感じます。「自分の学生時代とは様変わりしていて悩みがなかなか理解できない」といった大人からの声を聞くこともあります。どのように寄り添えばよいのでしょうか。
どのような悩みであっても、共通しているのは孤独感です。話を聞き、理解を示してくれる人の存在によって孤独感や死にたい気持ちは和らいでいきます。まずはそこから始めることが重要です。また、話を聞く中で性被害や金銭トラブルなどが明らかになった場合は、先ほどお伝えしたように外部の相談機関や専門家につなぐことも考える必要があります。