対面のガイダンスでしっかり説明することによりレビュー数も増加
──ブックマラソンの取り組みを推進するために、学生に対しては何か働きかけを行っているのでしょうか?
はい。各ゼミを担当する教員にガイダンスを行い、そのほかの授業でもBOOK MARRYのアプリを使ってもらえるように説明しています。
学生向けには、新入生が4月に受けるガイダンスで「まずはこういった本を読んでレビューを書いてみましょう」と案内しています。読んで終わりではなく、自分の考えを表現する練習を、1年次から推奨しているんです。
──ブックマラソンの取り組みを行ったことで、学生の読書に向かう姿勢に変化は見られますか?
新型コロナウイルス感染症による制限が緩和されたこともあり、昨年度に入学した学生からは、オンラインではなく対面でガイダンスを実施できたんです。正確な読書量の変化は把握できていませんが、現在の1~2年生はレビューの量が着実に増えています。初めにきちんと説明すれば「大学時代にやるべきこと」と認識して取り組んでもらえると感じています。
また、ブックマラソンでは「4年間で100冊読むこと」を目標にしており、それを達成したことを自己申請し、学生の中から1人を表彰しています。中には2年間で400冊以上のレビューを投稿した学生もおり、積極的な活用が増えています。
さらに、教員もブックマラソンの取り組みに前向きで、アプリの導入時から「アカウントがほしい」と言う先生が多かったんです。初めは「ほかの教員は関心がないのでは」懸念していたのでうれしい驚きでした。学生のレビューに「いいね」を押したり、自分も学生に読んでほしい本をレビューしたりできるので、教員にとってもよい環境が整ってきました。
──ブックマラソンの取り組みについて、今後の展望をお聞かせください。
「むすびわざ」という言葉には学生同士のつながりという意味を込めているので、レビューをきっかけにした学生同士の交流もより活発になるように促進していきたいです。
また、学部の学びとのつながりをより強化していくことも目指しています。現在はジャンルとして小説のレビューが多く、それも悪くはないのですが、もう少し専攻に関する本が読まれて、学術的な情報共有ができる場になってほしいと考えています。
そして、この取り組みを文化学部だけでなく全学に広げる構想も考えているところです。私は本学の図書館長も務めており、「図書館を通じてブックマラソンを全学に」という話も出ていました。ただ、ブックマラソンの本来の目的は学問研究と結びついた読書の推進です。各研究領域の専門家である教員からの働きかけがあるからこそ浸透する側面もあります。
どんな企画にあっても図書館からの発信では、教員と学生をいかに巻き込むかが課題です。そのため、まずはほかの学部にブックマラソンの取り組みを展開する形で、全学に拡大していくのがよいのではないかと考えています。